『見上げてごらん夜の星を 音楽プロデューサー草野浩二伝』

(シンコーミュージック・エンタテイメント、

 2023年12月10日発行)

 

東京芝浦電気レコード事業部

のちの東芝レコードに就職し

音楽プロデューサーとして活躍した

草野浩二に対する

聞き書きをまとめた一冊です。

(構成・濱口英樹)

 

1960年代前半に

カバーポップスの黄金時代を作り上げ

1960年代後半には

坂本九の「上を向いて歩こう」を

プロデュースし

全米チャート第1位を獲得させた

実績の持ち主ということで

60年代の日本における

音楽シーンに興味がある人間にとって

興味深い話がてんこ盛り

といったところでしょうか。

 

 

これまで当ブログでも

森山加代子、弘田三枝子について

何度か取り上げてきましたが

そうした歌い手が登場した

時代背景を知るのに最適

と思ったのが購入動機です。

 

ただし

本の刊行は把握しておらず

生協のカタログに

本書の音盤によるサブ・テキスト

ともいうべきCD

『草野浩二作品集

 〜昭和歌謡ヒット列伝〜』

 

『草野浩二作品集 昭和歌謡ヒット列伝』

(ユニバーサル ミュージック

 UICZ-4655/6、2023.11.22)

 

というのが載っていて

それを注文した流れで

本書の存在を知ったのでした。

(今日届いたばかり)

 

CDの監修と解説も

濱口英樹が務めています。

 

収録楽曲は

さまざまなオムニバスや

コンピレーション・アルバムに

収録されているものが

ほとんどですけど

(自分も頑張って集めたのでw)

知らない曲、持ってない曲もあり

書籍のサブ・テキストとして

これはこれで持っててもいいか

と納得しております。

 

 

書籍の方には

草野浩二の年譜と共に

制作リストが載っていて

備考欄には洋楽カバー曲の

原曲が記されており

これは資料としてありがたい。

 

ただ

「ゴールデンハーフの

メロンの気持」の原曲が

ローズマリー・クルーニーのカバー

となっているのは

ちょっと気になりました。

 

実際にクルーニー盤を

基にしていた可能性も

あるかもしれませんけど

クルーニー盤の邦題は

「メロンの心」ですし

日本ビクターから

リリースされたものなので

違うんじゃないかなあ。

 

個人的には

グローリア・ラッソ盤

好みであるのと

森山加代子が歌っている以上

「黄色いサクランボ」と同じ伝で

森山版のカバーではないか

とも思われるからです。

 

もっとも制作リストによれば

草野は森山の「メロンの気持」を

プロデュースしていないようなので

何ともいえませんが。

 

ただし

アルバム収録の際に

「メロンの気持」を

聴いているはずですから

オリジナルが邦楽でも

いいものはカバーする

という考え方からすれば

森山版のカバーではないか

推察する次第なんですけど

どうでしょうかねえ。

 

 

森山加代子、弘田三枝子以外では

奥村チヨの発掘秘話と

その後の活動エピソードが

面白く読めました。

 

東芝絡みの話に限るとはいえ

洋楽カバー時代から

ビートルズ旋風によるGSブームがあり

それによってフリーの作家が登場し

さらにはアイドル以前のガールポップと

ベンチャーズ歌謡の時代が来て

その後がシンガーソングライターの時代

という歴史の流れを鳥瞰しているので

これまでバラバラだった知識を

まとめて捉え返すという意味でも

いろいろと啓蒙されました。

 

漣[さざなみ]健児が実兄であることも

どこかで読んでいたかもしれませんが

今回、改めて認識し

感銘を受けた次第です。

 

 

ところで最終章(第10章)に

「10年ほど前から、

 平成生まれの若い方たちの間で

 昭和の歌謡曲が

 人気を集めているようです」

と書かれていますけど

それは知りませんでした。

 

情弱ということもあり

よく分かりませんけど

自分が買ったさまざまなコンピ盤が

単なるノスタルジーだけで

出されていたのではなかったのか

と、ちょっと驚いた次第です。

 

 

こういう本を読むと

またぞろ

60〜70年代の歌謡曲を

聴いてみたくなりますね。

 

とりあえずは

何を持っていて

何を持っていないのか

買い漁ったものを

整理しなくちゃね。( ̄▽ ̄)