先週の木曜日に

ゴジラ映画を観た後

ディスクユニオンに寄って

オンラインで購入し

取り置きしておいたレコードを

引き取ってきたことは

以前にも書いたとおりです。

 

ディスクユニオンに寄った時は

書籍コーナーがあれば

必ず見るようにしてるんですが

今回もこんな本が目にとまりました。

 

井上頼豊『回想のカザルス』

(新日本出版社・新日本新書、1996.12.20)

 

著者名は

「いのうえ・よりとよ」

と読みます。

 

Wikipedia によれば

日本チェロ界の代表的先駆者だとか。

 

パブロ・カザルスを敬愛し

1961(昭和36)年に

カザルスが来日した際

公開レッスンを受けた一人で

そのときの経験も盛り込まれた

カザルスの伝記です。

 

カザルスについては以前

『名曲探偵アマデウス』絡みで

書いたことがありますけど

その経歴について

まとまった知識があるわけでは

なかったことでもあり

入門書のつもりで購入した次第。

 

モノクロですが写真も豊富で

カザルスの経歴を簡単に辿るには

ちょうどいい一冊でした。

 

Wikipedia で

カザルスの項目を読めば済む

といえなくもないですけど

辞書的記述からは見えてこない

カザルス像というべきもの

特に平和運動家としての思想が

Wikipedia の記述では

まったく伺えないということもあって

興味深く読み終えました。

 

カザルスがカタルーニャ生まれ

ということもあって

カタルーニャの

近現代史への言及もあり

カザルスの政治的姿勢に

感銘を受けた次第です。

 

 

小著ということもあって

カザルスが母親と共に

故郷を離れている時の父親の思いや

弟のエンリク・カザルスは

どういう経緯で

ヴァイオリニストになったのか

といったことなど

詳しく書かれていないことが

かえって気になったり。

 

ピアニスト原智恵子の夫

ガスパール・カサド

カザルスの弟子だったとは知らず

たまたまバッハの無伴奏を弾いている

CDを持っているので

そして原智恵子の伝記本を通して

人柄の一端を知っていることもあり

おおっ、とか思ったことでした。

 

 

あと、カザルスの活動初期は

シャーロック・ホームズが

ストランド・マガジン誌上で

活躍していた時期に当たることに気づき

ちょっと興味深く思った次第です。

 

ホームズはヴァイオリニストなだけに

チェリストとは接点がないためか

作中でも何の言及もありませんけど

ホームズ=ドイルと同時代人

というだけでも

ワクワクしてくるではありませんか。

 

 

巻末の年譜を見ていて

気づきましたが

今年はカザルス歿後50年

だったようですね。

 

1973年10月22日に

メキシコで逝去したときは

96歳と10カ月だったそうです。

 

遺体が故国の

スペインに帰ったのは

フランコ独裁体制が崩壊した後で

1979年のことでした。

 

歴史に翻弄された人生

といっていいのかどうか

分かりませんけど

いろいろと考えさせられます。

 

 

なお、井上頼豊は

本書が発行される約一カ月前の

11月18日に病歿しています。

 

本の刊行を見ずに逝ったのか

逝く前に見本が

刷り上がっていたのかまでは

分かりませんけど

何がしかの感慨に

耽らずにはいられませんでした。

 

 

ちなみに

『名探偵アマデウス』の

無伴奏チェロ組曲の回は

ネットで簡単に観られるようです。

 

 

前にも書きましたが

カザルスがフランスの修道院で

無伴奏を弾く映像が挿入されており

たいへん貴重かと思いますし

一見に値しますので

未見の方は、時間のある折に

ご覧になってみてください。