ジョセフ・ケッセル『恋路』

(1954/堀口大学訳、新潮社、1955.8.30)

 

この本を読もうと思ったきっかけは

以下の通りです。

 

 鷲尾いさ子が歌う

 「ギター弾きを見ませんか」が

 久保田早紀のカバーだと知る

  ↓

 久保田早紀がデビュー前に

 ファドの世界が合うと

 ディレクターに言われたことを知る

  ↓

 ファドに興味を持ち

 アマリア・ロドリゲスを知る

  ↓

 アマリア・ロドリゲスの代表作

 (でも、ファドではない)

 「暗いはしけ」が挿入歌である映画

 『過去をもつ愛情』(1954)を知る

  ↓

 『過去をもつ愛情』の原作が

 ケッセルの『恋路』だと知る

  ↓

 『恋路』あるいは

 『過去をもつ愛情』が

 刑事に追い詰められる

 恋人たちの話だと知り

 ミステリっぽい話かと興味を持つ

 

で、日本の古本屋に

安く出ていたので

購入した次第です。

 

ちなみに

映画の方は2016年に

DVD化されてるんですが

Amazon で値引きされてたのを見て

つい購入してしまったことでもあり

せっかくだから読んでおこうと

思ったのでした。(^^;ゞ

 

 

邦訳で170ページほどなので

短い長編小説か中編小説

といったところ。

 

主人公はフランス人のアントワーヌ。

 

妻が住むイギリスのアパートへ

戦地から戻ったところ

妻が愛人とキスしているのを見て

その場で殺してしまいます。

 

裁判にかけられますが無罪となり

ポルトガルへ辿り着いて

タクシーの運転手をしていました。

 

そしてそこで

イギリスからやってきた女

カスリーヌと知り合います。

 

彼女もまた夫殺しで裁判にかけられ

過失死と認められたのですが

世間から身を隠したくなって

ポルトガルへと辿り着いたのでした。

 

裁判で過失死の判決がおりたのに

ロンドン警視庁のレヰィス刑事が

彼女を追ってきており

暗に陽にプレッシャーをかけ始めます。

 

アントワーヌは

カスリーヌと関係を持ち

亡夫への嫉妬に苛まれながらも

彼女をレヰィスの手から

逃れさせる計画を立てる

……というお話です。

 

 

裁判で決着がついているはずなのに

ロンドン警視庁の刑事が

ポルトガルまで追いかけてくる

という設定には違和感を覚えますけど

まあ、それはそれとして

ケッセル自身は

ミステリを意識してないにしても

ミステリとしても読めなくはない

といえる作品ではありました。

 

もっとも

印象に残るのは

教養のないアントワーヌが

自分は亡夫の代わりに

愛されているのではないか

と悩み、嫉妬に苦しみ

カスリーヌを追い詰める場面。

 

もっとも

印象には残りますが

ありがちな話なので

うんざりしないこともなく

もっと素直になればいいのに

と、ついつい突き放して

読んでしまいますけど。

 

映画で観たら

また印象が変わるかも

しれませんけどね。

 

 

アントワーヌとカスリーヌが

カフェでファドを聴く場面があり

そこでアントワーヌがカスリーヌに

知り合いの肺病病みの歌手について

「幸福だったら、あの男は

 あんなに上手に歌えはしませんよ」

(p.46)と言っています。

 

久保田早紀の

「ギター弾きを見ませんか」にも

ファド歌いが言う

似たようなセリフが出てきます。

 

ああ、ファドというのは

日仏問わず、時代の違いを問わず

そういうイメージなのか

と思ったことでした。

 

 

原作を読んだので

これでDVDも

観られるはずですが

今日から仕事始めだったりして

どうも気持ちに余裕がなく

パッケージを開封する気に

なれないでいます。

 

買ってしまうと

いつでも観られる

と思っちゃうのも

すぐに観ようとしない

一因なんですよね。

 

困ったものだ。( ̄▽ ̄)