昨日は四谷で採点でした。

 

その帰りに

新宿の紀伊國屋書店に寄って

『新潮』2023年1月号を購入。

 

『新潮』2023年1月号

(新潮社、第120巻第1号)

 

坂口安吾の

全集未収録作品にして

「探偵小説」

という角書き付き短編

「盗まれた一萬円」が

掲載されているからです。

 

地元の書店にも

一冊入っていたんですが

表紙の角が折れていたので

スルーしていたのでした。

 

ちょうど昨日

四谷に行く用事があったので

帰りに新宿で買っていこうと

思っていたのでした。

 

 

初出は『東京週報』の

1933(昭和8)年10月15日号

(通巻36号)で

『東京週報』の合本を購入した

大原祐治氏の解説付き。

 

大原氏は解説で

以下のように書いています。

 

(……)などといった事実が次々と提示されるに至って、読者が当初に期待したはずの本作における探偵小説としての結構は破綻してしまう。(……)支離滅裂というほかないこうした物語展開は、もはや「探偵小説」とは似ても似つかぬ代物に成り果てている。(……)本作において安吾は、探偵小説的な枠組みを提示しながら意図的に期待を裏切り、「意味無し[ナンセンス]」の混沌のなかに読者を投げ出すような実験(悪戯?)を行っていたのかもしれない。(p.172)

 

(……)は

引用者(老書生)による

前略・中略を示しています。

 

大カッコ(亀甲カッコ)内は

ルビ(ふりがな)です。

 

「意味無し」は安吾の言葉で

この言葉を引いてきた

エッセイの初出データも

書かれてありましたが

ここでは省略しています。

 

 

巻末の執筆者紹介によれば

大原氏は千葉大の教授で

安吾研究者のようですが

失礼ながら探偵小説については

あまり詳しくないようですね。

 

昭和10年代の『新青年』や

他の出版メディアに載った

探偵小説と称する作品には

「盗まれた一萬円」のようなものが

いくらでもあったかと

記憶しているからです。

 

当時は

ナンセンス小説も

「探偵小説」の眷属として

容認されていました。

 

探偵小説ジャンルというものを

改めて明確にしようとした

甲賀三郎の「探偵小説講話」が

探偵雑誌に連載されたのは

1935(昭和10)年のこと。

 

その2年前に発表された

「盗まれた一萬円」は

ですから充分

「探偵小説」を名乗る資格がある

と個人的には思うんですけれど。

 

そもそも安吾が

「探偵小説」と角書きをつけて

原稿を渡したのかどうかも

はっきりしないわけですし。

 

 

ちなみに

本文では旧字を

新字に改めている一方で

タイトルの「一萬圓」が

「一万円」ではなく

「一萬円」になってるのは

なぜなんでしょう。

 

こういう中途半端が

いちばん気になります。

 

『新潮』の読者なら

ぜんぶ旧字・旧かなでも

構わなかったでしょうに。

 

 

それはともかく

いわゆる純文芸誌『新潮』を

久しぶりに買いましたけど

巻末の広告ページ抜きで

全300ページ

税込価格1200円とは……。

 

全集未収録とはいえ

短編ひとつのために買うのは

(解説もついてますけど)

あまりにもコスパがよろしくない。

 

それでも買うあたり

もはや業[ごう]ですね。( ̄▽ ̄)