ヘンデル作品番号(HWV)では
357から379までの28曲が
ソロ・ソナタ、すなわち
独奏楽器と通奏低音のためのソナタに
あてられています。
357から379までなら
23曲じゃないのか
といわれそうですけど
出版譜のオリジナル稿や
別ヴァージョン稿なども
363a、363b というふうにして
含まれているので
28曲になるというわけ。
中には
オリジナル稿(ヴァイオリン)と
出版譜(オーボエ)が共に364aで
さらにヴィオラ・ダ・ガンバに変えた稿が
364bとされている場合もあり
どうして364a、364b、364cというふうに
しなかったのか、できないのか
不思議でなりませんけど
いずれにせよ
そういうのも別カウントして
全部で28曲というわけです。
先に紹介した
ブリュッヘン他の
『木管のためのソナタ全集』も
そうですけど
多くのディスクでは
ソロ楽器ごとにまとめて
録音されています。
ブリリアント盤『室内楽曲全集』もまた
CD1がフルート・ソナタ集
CD2がヴァイオリン・ソナタ
およびオーボエ・ソナタ集
CD5が2つのヴァイオリンと
通奏低音のためのトリオ・ソナタ集
CD6がリコーダー・ソナタ集
と、まとめられています。
(CD3と4は、それぞれ
トリオ・ソナタ集 作品2と5)
したがって
作品1と呼ばれる作品集を
まとめて聴こうとするなら
(少なくとも古楽演奏では)
木管のためのソナタ集と
ヴァイオリン・ソナタ集の
2セット、用意しなければ
なりませんでした。
で、上記ブリリアント盤なら
1BOXで揃うかといえば
そうでもなく。
ヴァイオリン・ソナタ
作品1の10、12、14、15
HWV だと368、370、372、373 が
未収録となっています。
これらはすべて今日では
真作性が疑われている作品なので
収録されなかったものでしょう。
あと、ブリリアント盤は
番号順に聴こうとすると
ディスクをとっかえひっかえ
入れ替える手間がありました。
そんな中、最近
ソロ・ソナタをすべて収録する
セットがリリースされました。
それが
イタリアの古楽器ユニット
イル・ロッシニョーロの
『ヘンデル:ソロ・ソナタ全集』です。
(独 Sony Music Entertainment
19075943662、2019.8.30)
レーベルはドイツ・ハルモニア・ムンディ。
CD4枚組で輸入盤しかありませんが
ブリュッヘン盤のライナーや
『ヘンデル全集』別冊解説を併せ読めば
曲について知るには充分。
できれば日本流通盤で
欲しいところなんですけど
ヘンデルは人気がないそうなので
今のところ出るとは思えず
解説については、自分的には
上に書いた通りですから
購入した次第です。
イル・ロッシニョーロ盤が特異なのは
真作性が疑われている作品も
すべて収録している点。
古楽演奏では
楽曲についての研究が進み
真作性が疑わしい作品すなわち
偽作だと確定された場合
当該作曲者名の作品集には
基本的に収録されません。
ヘンデルに限らず
古い録音に入っていた曲が
新しい録音だとカットされる
ということは
往々にしてあります。
ですから古楽器演奏で
かつて真作と思われていた曲を
聴こうとするのは
なかなかに難しいのでした。
その意味でも
イル・ロッシニョーロ盤は
画期的であるわけです。
あと、ライナーの巻末に
初版と再版、旧全集版の
対照表が載っていて
これが非常に便利。
自筆譜ないし筆写譜がある場合
それをどこが所蔵されているか
まで記載されており
かゆいところに手が届くようとは
まさにこのことでしょう。
ただし
今回この記事を書くにあたり
改めてチェックしてみたら
オーボエ・ソナタ 作品1の6
HWV.364a(版元移調版)のみが
唯一、未収録でした。
作品1の6のオーボエ版は
手許にあるブリュッヘン盤や
ブリリアント盤も未収録。
上にも書いた通り
イル・ロッシニョーロ盤は
偽作も余さず収録しているだけに
オーボエ・ソナタ 作品1の6のみが未収録
というのは解せないというか
惜しいですね。
ライナー巻末の対照表でも
HWV364a の指定楽器は
ヴァイオリンのみ
という扱いになっています。
その代わりということなのか
ヴィオラ・ダ・ガンバ版である
HWV364b を収録しているのが
珍しいといえば珍しい。
あと
HWV358は楽器が指定されておらず
リコーダーかヴァイオリンのためのもの
と考えられていますけど
イル・ロッシニョーロ盤では
リコーダー版のみの収録。
ブリリアント盤にも
リコーダーでの演奏しか
収録されていません。
ではこの2曲をフォローするには
どうすればいいか
という点については、また改めて。
乱文・長文深謝。m(_ _)m