1月15日(金)20:00から
NHK BSプレミアム
「BS時代劇」枠で放送の
『明治開化 新十郎探偵帖』
第五回「ロッテナム美人術」
オンタイムで視聴しました。
念のため
本17日(日)18:45からの
再放送でも観ております。
以下、犯人の設定に触れます。
未見の方はご注意ください。
今回ベースとなったのは
『明治開化 安吾捕物帖』
同じタイトルの第14話で
ほぼ原作どおりでした。
原作では大伴宗久は
癲狂院に入院させられるんですけど
それはさすがに憚られたのか
普通の病院に変更していたようなのが
ちょっと残念。
原作では
西洋奇術のトリックが
ポイントになるんですけど
それが実写で観られて
ちょっと嬉しかったです。
その一方で
泉山虎之助も言ってましたが
犯人が名探偵を
自分の計画に巻き込もうとする
というのは
ちょっと不自然でしょう。
それもあって
明智小五郎対黒蜥蜴
といった雰囲気も
感じられましたけど
今回の犯人の心理に
黒蜥蜴的なものがあれば
不自然さが少しは
軽減されたかもしれません。
ところで今回のドラマでは
新十郎と梨江と大伴シノブとの間で
男であれ女であれ
誰でも自由に何でもできる時代が
明治の御代であり
これからは日本の女も
(例えば商業に乗り出すくらい)
もっと強くあるべきだ
という話をする場面がありました。
その時は新十郎も
女性たちの考え方に
同意しているようでしたが
これはまあ、新十郎らしいと思います。
その新十郎は
罪もない弱者を犠牲にする犯罪計画に
怒りを覚えたようで
「堕ちるところまで勝手に堕ちるがいい」
と最後に犯人に言い放ってました。
この台詞には
すごく違和感を覚えたというか
新十郎らしくないなあ
と感じた次第です。
「堕ちるところまで勝手に堕ちるがいい」
と言われる前に犯人は
男は戦さで権力を握って勝手なことをする
というようなことを言ってました。
自分は男たちと同じことをしただけだ
と言いたいのかもしれません。
こうした一連のやりとりによって
弱者を挫く権力のありようを
批判するモチーフが前景化し
女性も男性並みに活躍してもいい
というモチーフが後景化した
という印象を受けます。
「堕ちるところまで勝手に堕ちるがいい」
という台詞は感情的すぎて
それだけに
女性はそもそも己の才覚を
自由に発揮できる時代ではないという
状況への認識が
どこかにいってしまった
とでもいうか。
誰でも自由に己の才覚を発揮する
ということは許せても
そのために
弱者を犠牲にすることは許せない。
良い目的であっても
方法が間違っていたらダメだ
というのは分かります。
それでも、女性が男性並みに
犯罪計画という形で
「戦さ」を仕掛けることを
男性権力者に対するのと
同じ論理で糾弾するかのような
「堕ちるところまで勝手に堕ちるがいい」
という新十郎の台詞は
考えすぎる男にしては短絡的すぎると
感じてしまうのです。
梨江から
なぜこんなひどいことを
と言われたシノブは
自分は生まれや育ちが違って
貴女のように恵まれていないからだ
というようなことを
言ってました。
でも
今回のドラマの設定なら
大伴宗久は妻に美顔術の出店を
許したようにも思えてならないだけに
そういう話し合いをすっ飛ばして
(そういう話し合いを劇中で描かず)
いきなり大がかりな犯罪計画を実行する
というのは不自然ではないか
とも思ったりするわけです。
坂口安吾の原作のような
背景ないし動機であったなら
計画が多少大がかりでも
それなりに納得できるんですけどね。
最後に勝海舟が犯人のことを
「明治の怪物」だと言いますけど
なんだか、
野心的な女は怪物だ
と言っているようでもあり
ちょっと残念な気がしました。
海舟の言葉に対し
その「怪物」を作り出したのは誰か
と問いかけるのは
本ドラマにおける新十郎らしい。
梨江は最後に
新十郎の野心は何か
と問うていましたけど
女は野心を持ってはいけない
とお考えですか、と問うても
良かった気がします。
今回の犯人の設定であれば
そういう質問もありでしょう。
梨江の問いに対して
明治の世を最初から作り直したい
という新十郎の答を
弱者が虐げられないような世にしたい
ということかと梨江に解釈させるのは
ドラマ全体を通してモチーフからすると
分からなくはないんですけれど。
なんだか整理がつかないまま
うだうだと書いてしまいました。
乱文深謝です。
そうそう
今回のドラマで、もうひとつ
言葉遣いで気になったのが
「リスク」や「トリック」という言葉を
何の説明もなしに使っていたこと。
梨江やシノブ
大伴宗久はともかく
虎之助が理解しているようだったのは
どうかと思います。
まあ、水戸黄門のような時代劇で
この旅館はサービスが良さそうだと
八兵衛に言わせた場面があった
と仄聞しますから
明治を舞台にしているだけ
まだ許容範囲なのかもしれませんけれど。