先日ふと思いついて
ネットで公開されている
国会図書館の蔵書検索で
グロリア・ラッソを調べてみたところ
今回ご案内の本がヒットしました。
日本の古本屋で検索してみると
ちょっと高いなあと思いつつ
ラッソについての日本語文献が
ほとんどないことを鑑み
購入した本が昨日、届きました。
(松本工房、1993.7.31)
届いた現物を見てびっくり。
項目数が200名に及ぶ
シャンソン歌手事典で
総ページ数が
日仏両方の索引込みを含め
726ページに及ぶ大冊です。
高いのも道理、本体定価9515円
消費税が3%の頃なので
価格が9800円してました。
64ページもある
カラー図版ページには
レコードのジャケットや公演ポスター、
公演プログラムの表紙が
掲載されている他
本文中にもモノクロで
同種の資料が掲げられています。
こういう作りは
欧米の事典の作りと似ていて
日本で類書を探すなら
(寡聞にしてミステリ関係しか知りませんが)
森英俊の『世界ミステリ作家事典』
全2冊が匹敵するくらいかと思います。
ですから価格が1万近くても
「そらそうでしょ」と思わせる
充実の一冊なのでした。
さっそく
グロリア・ラッソの項目に
目を通してみたのは
いうまでもありません。
歌手として
デビューするまでの経緯が
詳しく書かれており
出世作や代表作、
邦盤タイトルだけでなく
フランスを離れた経緯なども
知ることができました。
イェイェ・ブーム到来のため
という皮相的な理由では
なかったようです。
トリヴィアルな話題だと
デビュー当時は
白いギターを抱えた姿で
ジャケットに写っていたそうですけど
そのギターの師が
アンドレス・セゴビアである
というのには、びっくり。
またジャン・コクトーから
「シャンソン界のワシ」
と評されたことがあるそうで
これにも、びっくりでした。
事典の体裁だけに
円盤ライナーの紹介記事のような
客観的な記事になっていて
(クラシックのライナーに近い印象)
蒲田耕二のような
辛辣な評価を下していません。
まず接するなら
こういう記事の方が
良いだろうと思います。
その上で楽曲を聴いて
自分なりの印象を作り
「蒲田さんは厳しいなあ」
とか思うのが
楽しみ方としては筋だろうと。
個人的に関心のある
ディスコグラフィ関連ですが
残念ながら
邦盤のリリース年までは
記されていません。
ただ
レコード番号は書かれているので
ディスコグラフィ作成や
レコード探索の
参考にはなるかと。
グロリア・ラッソについて
調べるためだけで
大枚はたいて買う必要はあるのか
という疑問もあるでしょうけど
パラパラと索引を見てみたら
フランソワーズ・アルディや
ジョニー・アリディ、
シルヴィ・ヴァルタン(本書ではこの表記)
などの項目もありますし
シャンソン歌手について調べる際
強力なツールになってくれそうです。
それに
パラパラ見ているだけで楽しく
事典的なものそのものが
やっぱり好きなんだろうと
改めて思いました。
ちなみに索引には
ジョルジュ・シムノンや
フレデリック・ダール、
S=A・ステーマンなど
ミステリ作家の名前もちらほら。
彼らの作品を原作とした映画や舞台に
シャンソン歌手が出ているから
言及されているわけですが
ダールの小説を基にした
オペレッタが作られている
という情報にはびっくり。
こういう発見も
異なるジャンルの事典を見る
面白さですね。
「あとがき」には
本書をより完璧なものにするため
取り上げるべきアーティストが
リストアップされており
そこにはフランス・ギャルや
シャンタル・ゴヤ
ジェーン・バーキン
といった名前が見られます。
そういうのを見るにつけても
もう30年近く経ってますし
著者も故人のようですから
(国会図書館のデータだと歿年は1993年!)
続編ないし増補版の実現は
見込めそうにないのが
残念でなりません。