前回ご案内の
ピエール・フルニエが
カール・ミュンヒンガー指揮
シュトゥットガルト室内管弦楽団と
1950年代録音のチェロ協奏曲集ですけど
(英 Testament: SBT-1359、2004)
こちらには、原盤のLPでは
ヴィヴァルディとカップリングだった
フランソワ・クープランや
ルイジ・ボッケリーニの楽曲も
収められています。
いずれも
後世のチェリストの手になる
編曲版なんですけど
調べてみたら
いろいろと興味深いことが
分かりました。
今回はクープランの楽曲について少し。
クープランは
こちらでは以前
クラヴサン曲の全集を
紹介したことがありますが
その他に宗教曲や室内楽曲を
残しています。
フルニエの盤で
クープランの曲として収められているのは
Pièces en concert from Les gouts réunis
ですが、これを訳せば
「《趣味の融合》に基づくコンセールの小品集」
となりましょうか。
Wikipedia を見ると
コンセールというのは
バロック時代のフランスにおいて
管弦楽組曲を指すとあります。
でも、たとえば
バッハの管弦楽組曲と比べると
クープランのそれは
かなり印象が異なります。
クープランの場合、基本的に
通奏低音をともなうソロ楽器が
舞曲をベースとする楽曲や
描写的な標題音楽を集め
組み合わせたものを演奏する
室内合奏曲になりますので
規模がかなり小さいんですね。
クープランは
『王宮のコンセール集』(1722)と
その続編である『《趣味の融合》
あるいは新しいコンセール集』(1724)という
2冊のコンセール集を残しています。
その『新しいコンセール集』の方には
第1集からの連番で
第5番から第14番までが
収録されています。
その内の第6番、第7番、第10番から
楽章を抜き出して
編曲したものを
組み合わせたものが
ここでフルニエが演奏している
「《趣味の融合》に基づくコンセールの小品集」
というわけ。
最初は
『新しいコンセール集』の
第何番かをまるごと編曲したのか
と思っていたんですが
Prélude - Sicilienne - La Tromba
- Plainte - Air de diable
という組み合わせの楽曲はなく
もしかしたらと思い
手許にある
『クープラン室内楽全集』を
引っぱり出してきて
照らし合わせてみたところ
上記したことに気づいたのでした。
編曲者はポール・バズレールという
フランスのチェリストですけど
(ちなみにフルニエの師匠です)
各曲を抜き出して組み合わせたのが
バズレール自身かどうかは不詳です。
各曲の日本語訳と
オリジナルの作品番号は
以下の通り。
01.プレリュード/第10番の第1曲?
02.シシリエンヌ/第7番の第6曲
03.トロンバ/第10番の第4曲
04.嘆き声/第10番の第3曲
05.悪魔のエール/第6番の第4曲
バズレールのプレリュードは
オリジナルの第10番の第1曲と比べると
かなり印象が異なるので
ちょっと自信がないため
「?」としときました。
(正確なところが分かったら
後で訂正します。ご容赦ください)
シシリエンヌは
シチリアーノないし
シチリアーナと同じ。
トロンバというのは
トランペットのことです。
エールは
原題から分かる通りアリアに相当し
特定の舞曲は指しません。
オリジナル版の
メインを務めるソロ楽器は
プレリュードとシシリエンヌ、
トロンバがフラウト・トラヴェルソ
〈悪魔のエール〉がオーボエ
〈嘆き声〉がオーボエとヴァイオリン
となります。
今回、手許にあった
クープランの室内楽全集は
こちら↓のCD7枚組ボックス。
François Couperin:
Chamber Music (COMPLETE).
(蘭 Brilliant Classics: 92178、2004)
演奏は
フラウト・トラヴェルソ奏者の
ジェッド・ウェンツ率いる
(オランダ読み?でイェド・ヴェンツとも)
ムジカ・アド・レーヌムで
録音は2004年4月。
かなり前に
横浜のタワーレコードか
どこかで見かけて
古楽演奏で安かったこともあり
購入しといたもので
これが名盤・定盤というわけでは
ないでしょうけど
買っといて正解でした。
(もっとも、紙ジャケ裏の曲名表記に
誤植が多いのは想定外でしたけどw)
フルニエ盤と
ムジカ・アド・レーヌム盤の
どちらがいいかといえば
やはりオリジナル版の方に
軍配を上げたくなります。
それに
もともと組曲として
まとめられていたものを
バラバラにして組み直す
というのは、どうよ
と思わなくもありません。
もっとも、よくよく考えると
バロック時代には
こういう例はいくらでもあり
(例えばヴィヴァルディの
パスティッチョ・オペラなど)
もしかしたら
目くじら立てることでも
ないのかも知れないんですけどね。
でもまあ、そうはいっても
クープランの原曲もやはり
聴いておきたいですし
贔屓にしたいところです。
たとえば〈嘆き声〉ですけど
この曲は原譜だと
Plainte, pour les violes ou autres instruments à l'unisson: Lentement, et douloureusement - Seconde partie plus légèrement et coulé.
という標題のようです。
これを手許の辞書を引き引き訳してみれば
「嘆き声、
斉奏[ユニゾン]するヴィオール
あるいは他の楽器のための。
ゆっくりと、そして苦しそうに。
第2パートは軽やかに流れるように」
というような意味になるでしょうか。
クープランの原曲だと
オーボエとヴァイオリンの
ユニゾンのバックで
ヴィオラ・ダ・ガンバ(チェロ?)が
波がたゆたうように
定旋律を繰り返しており
それが印象に残る1曲です。
なお、フルニエは
ヴィヴァルディの協奏曲と同様
1960年代になって
ルドルフ・バウムガルトナー指揮
ルツェルン音楽祭弦楽合奏団と
再録音しています。
そちらも