2月15日(土)
文藝春秋のラウンジB1で
16:00から開催の
出版社対抗プレゼンバトル
「この華文ミステリがアツい!」に
行ってきました。
どういう趣旨のイベントか
という点については
「通訳翻訳WEB」の案内や
当該イベントの公式サイトに
書いてある通りなので
そちらを参照ください。
華文ミステリというのは
中国(含・香港)や台湾などで
発表されたミステリ作品のことです。
近年では
陳浩基『13・67』や
陸秋槎『元年春之祭』、
『雪が白いとき、かつその時に限り』などが
恒例の年末ベスト10を賑わせていました。
第1回島田荘司推理小説賞受賞作として
寵物先生(ミスター・ペッツ)の
『虚擬街頭漂流記』が刊行され
〈島田荘司選アジア本格リーグ〉
というシリーズが刊行されたころ
(2009〜2010年)
中国大陸を中心とする
アジア系のミステリが
話題になり始めたかと思いますけど
そのころはまだ
「華文ミステリ」という言葉は
ありませんでした。
いつごろから使われ始めたのか
ということを
検証している余裕はありませんけど
上記『13・67』が
ベスト10を賑わした前後に
一般的に目にするようになりました。
そこで
この盛り上がりの波に乗って
陳 浩基作品の版元である文藝春秋
陸 秋槎作品の版元である早川書房
そして昨年、紫金 陳の『知能犯之罠』を出した
行舟文化の各社が集まり
今年刊行する華文ミステリをプレゼンして
さらに盛り上げようというのが
今回のイベントの趣旨となるかと思います。
司会進行は風狂奇談倶楽部のKさんで
プレゼンバトルの審査員は
作家の三津田信三さん。
プレゼンの時間は
会場からの質問時間も含め
各社15分ずつで
プレゼンの順序は最初にジャンケンで決められ
行舟文化→早川書房→文藝春秋
という順番となりました。
バトルの前に
三津田さんがMCからの質問を受けて
陳浩基のデビュー作『世界を売った男』を
いちばん評価していることや
陸秋槎との出会いなど
興味深い話がありました。
そのあと、上記の通り順番が決められ
会場に用意されたモニターに
物語の内容や読みどころを紹介する
レジュメを映し出しながらの
プレゼンが進行していきました。
まずは行舟文化から
陳漸『西遊八十一条 大唐泥犂獄』と
唐隠『大唐懸疑録 蘭亭序コード』
(いずれも仮題)をプレゼン。
『大唐泥犂獄』は
西遊記の三蔵法師が探偵役を務める
シリーズの第1作で
『蘭亭序コード』は
中国文学史上の実在の人物が
実名で登場して物語に絡んでくる
中国版『ダ・ヴィンチ・コード』
といわれている作品だそうです。
ちなみにMCを務めるK氏は
行舟文化の社員(?)でもあるため
モニターの前の席に
行舟文化の社長が座りながらも
プレゼンの場ではK氏が中心となり
MCと自社のプレゼンの一人二役をこなして
場内の笑いを誘ってました。
2番手の早川書房からは
担当編集者のN氏から
周浩暉『死亡通知単』(仮題)と
陸秋槎『文学少女対数学少女』の2冊が
プレゼンされました。
『死亡通知単』は
連続殺人鬼エウメニデスに
刑事・羅飛とそのチームが挑む
ジェフリー・ディーヴァー型のミステリで
『文学少女対数学少女』は
文学少女が書いたミステリ
(作中作)を読んだ数学少女が
文学少女が予想だにしていなかった解決を
導き出すという話を収めた
連作短編集だそうです。
3番手の文藝春秋は
担当編集者のA氏から
陳浩基『網内人』が
プレゼンされました。
学園裏サイトのいじめなど
さまざまな社会的な病理を背景に
激動する香港の“今”を描く作品だそうで
『13・67』と同様
大胆な仕掛けが施されているそうです。
会場には陸秋槎さんも入らしてて
早川書房のプレゼンのあと
MCから指名を受け
コメントしてましたけど
その際、華文ミステリは
3種類の傾向に分けられる
という話をしていたのが
興味深かったです。
ひとつは欧米のミステリのような
サスペンスないし社会派ミステリ。
今ひとつは古代の中国を舞台にした
歴史ないし伝奇ミステリ。
そしてもうひとつが
日本のいわゆる
新本格ミステリの影響を受けた作品
とのことで
この最後のジャンルがいちばん売れない
(世界的なベストセラーにならない)
と話して笑いを誘ってました。
今回のイベントでは
行舟文化が出す作品が
歴史ないし伝奇ミステリで
早川書房が出す作品が
欧米型のサスペンスと
いわゆる新本格ミステリ型の作品
文藝春秋の出す作品が
社会派ミステリというふうに
すべての傾向をフォローしていたのが
偶然ながら興味深いところでした。
ちなみに
陸秋槎作品のオビに推薦文を書いた
青崎有吾さんも会場にいらしてて
陸作品にエールを送ってました。
最終的な講評の前に
来場者に読みたい作品を
挙手で答えてもらったり
各社が今年、あるいは将来
出す予定の華文ミステリの紹介や
ミステリチャンネルで包装される
華文ミステリ原作のドラマ
ミステリチャンネルのスタッフから
紹介されたりしました。
各社のプレゼン後に
MCから三津田さんに感想が聞かれ
各社が複数あげていたため
その度に読みたい作品を
あげていたかっこうでしたが
最終的には華文ミステリでないと
生まれなかったであろう作品として
行舟文化から出る
『西遊八十一案 大唐泥犂獄』に
軍配を上げてました。
メインのバトル イベントが終了したのは
だいたい17:20ごろで
そのあと三津田さんと
来場していた陸秋槎さんのサイン会が
モニター横の机で開かれてました。
当日は資料(?)として
各社のフライヤーが配布されましたが
行舟文化からは
今回プレゼンする作品の冒頭を翻訳した
限定見本誌が配布されたので
ちょっとトクした気分。
個人的に面白そうだったのは
早川書房から出る
陸秋槎『文学少女対数学少女』と
文藝春秋から出る
陳浩基『網内人』といったところかな。
以上、駆け足ですが
当日の雰囲気が伝われば幸いです。
乱文深謝。



