今回ご案内のCDも
おととい渋谷で買ってきた1枚です。
(独Genuin Classics: GEN-10189、2010)
タワーレコード・オンラインでは
2011年1月8日発売となっています。
アンドレアス・シュタイアーのCD
『ファンダンゴ』で共演している
クリスティーネ・ショルンスハイムのCDを
タワーレコード・オンラインで検索してみたら
本盤が引っ掛かってきて
面白そうなので注文したんですけど
残念ながら「入荷の見込みがない」とのことで
註文がキャンセルになってしまいました。
じゃあというわけで
Amazon で検索してみたら
渋谷のレコファンが出品していたため
前回のグルックのCDも併せて
いつか買いに行こう
と思っていたのでした。
CDタイトルの
Bach in romantischer Manier は
本ブログ記事のタイトルにある通りの意味で
これはタワーレコード・オンラインに
アップされている邦題です。
「派」と「流」の文字が似ているため
連なると空目してしまいそうなので
自分なら「ロマン派の様式によるバッハ」
あるいはそのままだとしても
「ロマン派の流儀によるバッハ」と
助詞を挿むんですけどね。
まあそれはともかく。
副題に
Bearbeitungen von Mendelssohn,
Schumann, David und Ressel
とある通り
メンデルスゾーン、シューマン
フリードリヒ・ヴィルヘルム・レッセル
フェルディナンド・ダヴィッド
といった人たちによる編曲が
収められています。
(Bearbeitungen は「編曲」という意味)
メンデルスゾーンとシューマン以外の2人ですが
ダヴィッドは Wikipedia に項目があり
それによれば、メンデルスゾーンの
《ヴァイオリン協奏曲 ホ短調》を初演した
ヴァイオリニストにして作曲家として知られ
メンデルスゾーン家と
家族ぐるみの付き合いがあったようです。
レッセルについては調べがつきませんでしたが
Anselm Hartinger 執筆のライナー(の英訳)には
"The Berlin theater musician" とありますから
劇場演奏家というあたりでしょうか。
本盤が
これまで紹介したことのある
ピアノ・トランスクリプションと違うのは
バッハの無伴奏ヴァイオリン曲を
ヴァイオリンとピアノによる二重奏に
仕立てたものを録音している点。
無伴奏の曲に伴奏を付けちゃうという
バッハの意図を無視した
無謀な試みがすごい。
もちろん
学問的な意義はあるとはいえ
基本的にクラシック音楽は
作曲者の意図を重視する傾向が
強いと思われるにも関わらず
それを録音しちゃうんだから
これをマニアックといわずして
何をマニアックといえばいいのか。
有名なシャコンヌは
メンデルスゾーン(with ダヴィット)、
そしてレッセル、さらにはシューマンによる
それぞれの編曲が収められており
三者三様を聴き比べることができます。
昔、磯山雅の『J・S・バッハ』
(講談社現代新書、1990.10.20/1992.6.26. 第4刷)
を読んだ時
「無伴奏ヴァイオリンのための《シャコンヌ》に
メンデルスゾーンとシューマンが
ピアノ伴奏を付けた版」(p.182)
と書いてあるのを読んで
どういうんだろうなあ
と思っていたものを
ようやく耳にできる感激。
メンデルスゾーンとダヴィッドの編曲は
ヴァイオリニストのダヴィッドが
ヴァイオリン・パートを編曲しているためか
ピアノは控え目。
レッセルがピアノ伴奏を付けた編曲版は
それに比べると二重奏的な色彩が
多少は前面に出ているというか
ピアノが伴奏に徹しているわけではなく
主旋律(?)を担うところも見られます。
シューマンの編曲は
メンデルスゾーンとレッセルとの折衷、
メンデルスゾーンよりはピアノが前に出るけど
レッセルほどあざとくはない感じ
とでもいいましょうか。
こういうのを聴いたあとに
ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ
第3番 ホ長調 BWV 1016 の
第3楽章と第4楽章を聴くと
ダヴィッドの編曲バージョンではありますが
至極あたりまえに聴こえてきて
ホッとするから不思議なものです。
あと、メンデルスゾーン自身の
ヴァイオリンとクラヴィーアのためのソナタ
ヘ長調のアレグロも収録されていますが
これなんかも実に美しくて
まともすぎるので
本盤の中ではかえって異色な感じ。
本盤における使用楽器はもちろん
メンデルスゾーンやシューマンの時代のもので
ヴァイオリンを演奏しているのは
日本人の平崎真弓です。
ショルンスハイムのお弟子さんだとか。
CDは製造が終了してしまい
在庫は残っていないようですけど
ダウンロード版なら買えますし
Amazon に出品している海外のショップだと
新品で入手できます。
ライナーには
平崎やショルンスハイムに対する
インタビューも載っているので
こういうものこそ
日本流通仕様で出してほしい
と思わずにはいられないんですけどね。