C・ショルンスハイム『チェンバトとハンマークラヴィーア』

(独Capriccio: 10 424、1993)

 

こちらも

前回のシュタイアーのCD同様

採点済み答案を届けに行った後

痛む足をおして立ち寄った

渋谷のレコファンで

見つけたものです。

 

帰ってから、よく見てみると

シュタイアーと一緒に

ボッケリーニのファンダンゴを

弾いている人でした。

 

5枚で各200円引き

というサービスに釣られて

ほぼ不見転で買ったものでしたから

演奏者の名前、読めないなあ

とか思っていただけに

これにはびっくり。

 

おかげで

演奏者の名前の読み方を

調べる手間が省けました。(^^ゞ

 

 

CDのタイトルにある

ハンマークラヴィーアというのは

ハンマーで叩いて音を出す鍵盤楽器

すなわちピアノのことで

使用楽器の説明に

1780年製のハンマーフリューゲル

とありますから

要はフォルテピアノのこと。

 

ちなみに

フリューゲルは「翼」という意味で

楽器の形状に由来します。

 

 

チェンバロの方は

franko-flämischem Vorbild

(Ruckers, Couchet, Blanchet)

のコピーだと書いてあります。

 

Vorbild はドイツ語で「モデル」のこと。

 

franko-flämischem は難物でしたが

いろいろと検索してみたら

franco-allemand に

「仏独」という意味があるらしく

それからの連想で訳せば

franko-flämischem Vorbild は

フランス=フレーミッシュ・モデル

という意味になるかと。

 

カッコの中は

ルッカース、クーシェ、ブランシェという

チェンバロの製作者ないし工房名で

ルッカースとクーシェが

フランダース(フランドル)の

ブランシェがフランスの工房になります。

 

 

収録されている中で今日もっとも有名なのは

大バッハの次男

カール・フィリップ・エマヌエル・バッハで

他もバッハの息子の世代か、そのあとの

古典派前期の人たちばかり。

 

ヨハン・アドルフ・ハッセや

カール・フリードリヒ・クリスティアン・ファッシュ

(フル・ネームが長い!)

ゲオルク・ベンダあたりは、かろうじて

聞いたことがあるような気がしますけど

他は初めて目に(耳に)しました。

 

自分の興味があるのは

ルネサンス=バロック期で

古典派じゃないから

しょうがないんですけど。

 

 

今回が初見というか初聴となる

カール・ハインリヒ・グラウン

ヨハン・アブラハム・ペーター・シュルツ

といった人たちをネットで検索してみると

いろいろと面白いことが分かりました。

 

カール・ハインリッヒ・グラウンの兄

ヨハン・ゴッドリーブ・グラウン

大バッハの長男

ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハの

ヴァイオリンの先生だっただけでなく

フルードリヒ大王の宮廷楽団員だったそうですから

エマヌエル・バッハの同僚だったことになります。

 

ゲオルク・ベンダの兄フランツ・ベンダ

フリードリヒ大王の室内楽団員だったそうですから

これまたエマヌエル・バッハと縁が深い。

 

これらは Wikipedia の記述で知りましたが

いろんな人物が相互に関係するのって

なんだか山田風太郎の明治ものみたいですね。

 

 

当時はバロック様式への反発から生まれた

ギャラント様式というのが流行していて

本盤に収録されている作曲家は

すべてその様式を体現している人たち

といってもいいかも知れません。

 

鍵盤楽器の方も

チェンバロからフォルテピアノへの移行期で

そういう時代の趣味の変遷を示そうとしたのが

本盤のテーマということになりそうです。

 

 

ただライナーを見ても

どの曲がチェンバロで弾かれており

どの曲がハンマークラヴィーアで弾かれているのか

どこにも書いてなくて

これには参った。

 

聴けば音の違いは一目瞭然ならぬ

一聴瞭然ということかもしれませんが

ハンマークラヴィーアって

ちょっと聴いただけでは

チェンバロを思わせるような

響きの楽器もあったりするので

ぼーっと聴いてると

聴き分けるのに苦労するんですよね。

 

 

実際に通しで聴いてみると

トラック13、14のシュルツの曲は

それまでとは響きが異なってて

どうもハンマークラヴィーアっぽい。

 

トラック15〜21の

エマヌエル・バッハの曲も

シュルツと同じ響きがしますから

ハンマークラヴィーアでしょう。

 

ということは

前半の12曲がチェンバロ

後半の9曲がハンマークラヴィーア

ということになりそうです。

 

 

ちょっと備忘も兼ねて

ゴタゴタと長々しく書きましたが

演奏そのものの感想はどうかといえば

ボッケーリーニのファンダンゴのような

派手派手な演奏ではなく

自分のイメージするバロック後期ないし

古典派前期の演奏そのもの

といった感じかなあ。

 

エマヌエル・バッハの曲には

モーツァルトを思わせるところもあり

そこらへんはなかなか興味深かったです。

 

 

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