先日、聴きにいった

調布国際音楽祭2019のプログラム

「深大寺に響くオーボエとチェンバロ」

物販で売られていたけれど

すでに購入済みだったため

買わなかった1枚です。

 

水永牧子『ゴルトベルク変奏曲』

(Pooh's Hoop: PCD-1801、2018.10.12)

 

CD本体には

リリース年がマルCで示されているだけで

リリース月日はどこにも書かれていません。

 

上記の日付けは

タワーレコードオンラインのデータに拠ります。

 

 

こちら、少し前に購入しており

コンサートに行く前に予習しておこう

と思っているうちに

当日になってしまったため

聴くのがコンサート後になってしまったんですけど

うーん、やっぱり予習で聴いとくべきだったかも

とか思ったことでした。

 

というのも

当日演奏されたゴルトベルクの各変奏に

水永さんが自分のイメージで付けたという標題は

当日だけのことかと思っていたら

本盤のライナーを見ると

すべての変奏曲に付いていたからでして

当日行けなかった人も本盤を入手すれば

どういう標題を付けたのかを

知ることができるのでした。

 

 

あと、当日の演奏を聴いたとき

声部の進行に揺らぎが感じられたり

旋律が途切れて間が入ったりして

おやっと思ったところがあったのですが

そのときは失礼ながら

ミスかなと思っていたのですけど

それこそ素人の浅はかさ。

 

本盤を通して聴くと

明らかに通常の、というか

他の奏者とは違う演奏をしていて

ライナー掲載された飯田有抄の解説を読んで

意図的なものだということを

教えられたのでした。

 

 

従来の演奏とは異なる中でも

印象的だったのは

最後のアリアの装飾の付け方。

 

そして特筆されるのが

第9変奏と第22変奏の前に

(トラック的には第8変奏と第21変奏の後)

水永さんによるカデンツァ(即興演奏)を

挿入していること。

 

ゴルトベルクでカデンツァは珍しいというか

ロマン派のバッハ受容のように

意図的なアレンジを加えたものではない

バロック奏法に基づく演奏の録音では

本盤くらいでしょう。

 

バッハの楽譜には

書き込まれていないのはもちろん

指示すらないはずで

装飾音などのアレンジは奏者に任されるなど

比較的自由度の高いバロック音楽にあって

新即物主義ほどではないにせよ

基本的には楽譜通りに、という風潮が

いまだ根強いと思われるだけに

珍しいというか、攻めてるなあという感じ。

 

 

ちなみに、ゴルトベルクは

3曲ごとにカノンが現われるので

3曲ごとのまとまりとして

捉えられることが多いのですけど

水永さんはそれにとらわれず

最初のアリアから第4変奏、

第5〜10変奏、第11〜15変奏、第16〜20変奏、

第21変奏から最後のアリア

という5つのブロックに分け

それぞれの塊で聴くと聴きやすいと

ライナーに書いています。

 

これもちょっと珍しいですね。

 

 

全体を五つの塊に分けているのはともかく

(専門的には違うようですが)

ピアノを思わせるような

独特なアーティキュレーションに加え

各変奏が標題付きということもあって

個人的には、シューマンの『子供の情景』や

ショパンの、例えば「小犬のワルツ」などを

連想させられました。

 

これを最初に聴くゴルトベルクに

してほしくないかもなあ

とか思いつつ

バロック音楽に馴染みがなく

クラシックのピアノ曲に馴染みのある人には

かえって本盤の方が親しみやすいかも

とか思ったり。

 

おそらく水永さんも

「親しみやすさ」を意図したのではないか

と思われます。

 

そんなこんなで本盤は

かなりの異色盤だと思います。

 

 

ちなみに使用楽器はタスカン。

 

ケースの装飾などから判断するに

深大寺で弾いていたのと同じ楽器ですね。

 

本盤はホールでの響きを

再現しようと意図した録音なので

残響が強い傾向がありますが

フレンチ・スタイルらしい

きらびやかな響きを聴くことができます。

 

そのため深大寺本堂での響きとは

微妙に違うような印象を受けますけど

個人的には残響が少ない感じのする

本堂の響きの方が好みかな。

 

 
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