(集英社、2019年6月6日発売、通巻36号)
特集「シャーロック・ホームズとコナン・ドイル」
ということで購入しました。
これまで集英社から
こういう雑誌が出ていること自体知らず
普段の自分は小説誌のコーナーしか見ないので
出ていることにも気づかなかったでしょう。
今回は、Amazon だか honto だかの
「この本を買っている人は
こういう本もチェックしています」
というやつで目にして
存在を知ったのでした。
さっそく別の本と一緒に
honto で注文したのですが
いわゆる小説誌とも
グラビア誌とも違うサイズなので
新刊書店に行っても運に恵まれない限り
見つけられなかったような気がします。
ホームズ特集といっても
まあ、たいしたことはあるまいと
高をくくっていたのですが
意外と、といっては失礼ながら
しっかりした特集でした。
総ページ数215ページ中
123ページを使用しており
巻頭の大岡玲の連載2ページも
ホームズ絡みなので、これも含めれば
125ページになります。
珍しい写真も満載ですし
翻訳史や未発表のドイル原稿など
一般的に見れば
かなりハードな内容の原稿が載っているほか
いしいひさいちのパロディまで載せているのには
ちょっと敬服しました。
ドイル財団公認の続編を書いた
アンソニー・ホロヴィッツや
ロンドンのホームズ協会幹事
キャサリン・クックへのインタビューは興味深く
両方ともドイル晩年の
スピリチュアリズムへの傾倒について
最後に質問しているのが
記者の関心の広がりを感じさせ
興味深いですね。
クックのインタビューでは
三谷幸喜の人形劇や
竹内結子がホームズを演じたドラマまで
ホームズ協会で鑑賞したとあって
これにはびっくりでした。
クックのインタビューは他にも
『失われた世界』の雑誌掲載時の演出など
興味深い話がいっぱいです。
個人的に面白く読んだのは
大岡玲「写真を読む8/ロンドン——一八八四年」
石戸諭「シャーロック・ホームズとメディア」
川島昭夫「コナン・ドイルの修学旅行」
日暮雅通「ホームズ翻訳史の変遷と現状」
南條竹則「『緋色の研究』と『爆弾魔』」
中野香織「ホームズの英国的な変人ファッション」
キャサリン・クック「コナン・ドイルが目指したもの」
日暮雅通「未邦訳作品をめぐる冒険」
横山茂雄「闇から光明へ」
(以上、掲載順)といったあたり。
この他に
日暮雅通編の「ホームズ&ドイル年表」は
ドイルが執筆したフィクションの邦題を
すべて掲載しているという
実にありがたい労作。
ないものねだりですが
どこで読めるのか
収録本まで別に示されていると
もっと嬉しかったかも。
本特集のリード文で知ったのですが
今年はドイルの生誕160年だそうです。
そのためかあらぬか
今年に入ってから
すでにホームズ関連の本が
何冊か出ています。
雑誌の特集とはいえ
それらと比べても遜色のない
読み応えのある1冊になっているのは
ドイルに焦点を当てた記事が
多いからかもしれませんね。
単行本並みにお値段は張りますが
おすすめの1冊です。