トレヴァー・ピノック指揮

イングリッシュ・コンサートの

『パッヘルベルのカノン

〜バロック管弦楽名曲集』を買ってから

どれくらい経ってからか忘れましたが

しばらくして新譜で見つけたのがこちら。

 

ロンドン・バロック『カノン〜パッヘルベル作品集』

(キングインターナショナル KKCC-323、1995.10.25)

 

原盤のレーベルは

ハルモニア・ムンディ・フランスです。

 

 

パッヘルベルの生前に出版された

『音楽のたのしみ』(1691)を中心に

室内楽曲だけを収めたCDで

有名な「カノンとジーグ」も

収録しているあたり

ポイント高し、といったところ。

 

ピノックのような管弦楽合奏版とは異なり

3つのヴァイオリンと通奏低音

(チェンバロ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、テオルボ)

による小編成の簡素な演奏であるのに加え

導入の旋律がチェンバロから始まるのが

たいへん当方の趣味に合いました。

 

カノンとジーグを

トップに持ってくるのではなく

最後に持ってくるのも

粋な計らいかと。

 

 

『音楽のたのしみ』はパルティータ集

(舞曲に基づく楽章で構成された組曲集)で

哀愁を帯びた美しい旋律も多いし

(特に第2番 ハ短調のグラーヴェや

 第4番 ホ短調のアリアは傑作です)

フーガ風の楽想もたくさん聴けて

さすが「カノン」のパッヘルベル

と思わしむる出来栄え。

 

楽章によっては短かすぎて

物足りなさを感じさせはしますけど

王侯貴族の祝典用音楽としての

ターフェルムジーク(食卓の音楽)としても

また、アマチュア演奏家が合奏を楽しむ

ハウスムジークとして聴いても

耳に心地よい楽曲集です。

 

 

こちらは出た当時

新譜で買ったものですが

上に書いたような理由から

ヘビロテして聴いた1枚。

 

これから初めて、あるいは改めて

古楽器演奏に拠るカノンとジーグを

聴いてみよう、という人に

チョーおススメのディスクです。

 

 

ところで手許には

『音楽の楽しみ』の全曲盤が

もう1枚ありまして

それがこちら。

 

『パッヘルベル:音楽のたのしみ』テイチク盤

(テイチク TECC-28159、1993.9.22)

 

原盤のレーベルは

ドイツのダ・カメラ Da Camera 。

 

 

こちらの演奏は

ヴァイオリン2、チェロ1、チェンバロ1

という編成で

録音は1983年と、やや古い。

 

ロンドン・バロック盤のあとに見つけて

買ったのだと思いますけど

新譜でだったか中古でだったか

ちょっと記憶にありません。

 

カノンとジーグが

含まれていないのは措くとしても

演奏テンポはゆっくりめで

楽器もよく響いている感じがせず

必ずしも演奏の質がいいとは

いえないように思います。

 

それもあって

持ってることを忘れてました。(^^ゞ

 

 

ただ一点、見逃せないのは

ライナーの解説は磯山雅であること。

 

こちらの解説は今でも充分

読みごたえがあるのは流石です。

 

 

蛇足ながら

ロンドン・バロック盤の

タスキ(オビ)の惹句に

「パッヘルベル100%」とありますけど

 

ロンドン・バロック『カノン〜パッヘルベル作品集』タスキ(部分)

 

これは

『カノン100%

 〜パッヘルベルのカノンによる天然果汁の詰合せ』

 

『カノン100%』

(BMGビクター BVCC-7339、1994.10.21)

 

というオムニバス・アルバムが

当時、出ていたのを

踏まえてのことだと思います。

 

 

『カノン100%』は

ジャン=フランソワ・パイヤール指揮

パイヤール室内管弦楽団や

エットーレ・ストラッタ指揮

バロック室内管弦楽団といった

いわゆるクラシック系統の演奏より

編曲ものの方が面白いという

やや困りもののディスク。

 

今、聴き直して

特に面白いと思ったのは

 How, Where, When? という

ヴォーカルとフルートのバージョン。

 

とはいうものの

まあ、1回聴いたら

飽きてしまうようなものですけど

新譜で出た当時、珍しさに釣られてしまい

ついつい買ってしまった1枚です。(^^ゞ

 

 

今回、ライナーを見直してみたら

音楽評論家の横堀朱実が書いてますけど

なんだかエッセイ風の文章で

収録曲の奏者すべてについて

紹介しきれていないのが気になりました。

 

それぞれの演奏を何から採ったのかという

オリジナル盤の情報や

編曲の事情や背景などが

ほとんど書かれていないのも気になります。

 

買った当時も気になったのではなかったかしらん。

 

 

ところで皆川達夫は

『ルネサンス・バロック名曲名盤100』(1992)で

パッヘルベルのカノンについて紹介した際

 

 この曲を一種のムード音楽として

 受けとめようとするならば、

 やはり現代楽器による

 ややロマンチックな演奏がよろしいでしょう。

 (略)

 ただしそれにしても、

 カノンに続くジグも聞いておいてください。

 

と書いてましたけど

『カノン100%』には

ジグ(ジーグ)はいっさい

演奏されておりません。

 

そんなこんなで

珍しくはありますが

おすすめしかねる1枚だったりします。

 

 

Amazon で本盤を検索してみると

類似のオムニバス アルバムが

何枚かヒットしてきて

これにはびっくりしました。

 

おそらくどの盤も

ジーグまで入れてないと

思いますけど、どうでしょう。

 
 
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