(1965/笹村光史訳、ハヤカワ・ミステリ文庫、1977.2.28)
ジャン=リュック・ゴダール監督作品
『メイド・イン・USA』(1966)のDVDを
中古で買ったので
原作を読んでみました。
自分は、可能な限り
読んでから観るタチなので。(^^ゞ
数年前に公開された
メル・ギブソン主演の映画
『ペイバック』(1999)を
観ている方、覚えている方なら
あれの原作だといえば
悪党パーカー・シリーズについては
説明不要かと思いますけど
いちおう説明しておきますと
ドナルド・E・ウェストレイク(1933〜2008)
というアメリカ作家が
リチャード・スターク名義で書いている
ケイパー caper を主人公としたシリーズです。
ウェストレイクが
パーカーというキャラクター名の
使用権を許可しなかったため
映画では「パーカー」という名前で
登場しないのですけどね。
『ペイバック』の原作
『悪党パーカー/人狩り』(1962)は
シリーズ第1作で
今回の『死者の遺産』は
シリーズ第5作にあたります。
翻訳は最初
『ミステリマガジン』の
1976年5月号と6月号に分載され
それからハヤカワ・ミステリ文庫に
収められました。
というわけで
本作品は文庫オリジナルであり
文庫で出る以前に
ハヤカワ・ミステリで出ていた
ということはありません。
昔の仲間で
今は引退した老金庫破りから
パーカーのもとに
トラブルに巻き込まれ
救いを求めていることを
匂わす手紙が届きます。
気になったパーカーは
老金庫破りの引退している町へ赴きますが
相手は埋葬されていたばかりでなく
町に着いた途端
パーカーに尾行が付くようになります。
さらには、
信用できないので
それまで仕事を共にしたことのない
錠前破りの男が町を訪れて
パーカーも「あれ」を探しにきたのか
と問いかけてきます。
パーカーは何が何やら分からないまま
事件の背景を探ろうとする
というお話。
ケイパー小説の源流が
どこまで遡れるのかは
調べてみないと分かりませんけど
プロの犯罪者を主人公とするだけでなく
そのシリーズものとなると
アメリカ作家のお家芸
という印象があります。
悪党パーカーは
ケイパーものシリーズの
もしかしたら創始かも知れない
というくらい
かなり早い時期のシリーズではないか
と思います。
自分が読んだのは
シリーズ第1作の『人狩り』と
第4作の『襲撃』(1964)
第20作『殺戮の月』(1974)
あとは80年代にポケミスに訳された
60年代に出て未訳のままだった作品の
訳し残しを何冊か、というくらい。
あまり良い読者ではありませんけど
特に嫌いというわけでも
読んでいて苦痛だというわけでもなく
プロがプロとして行動する話として
むしろ好感をもっているかも知れません。
本作で興味深いのは
老金庫破りが残したとされる遺産の額を
見積もっている人間が
プロの犯罪者ではなく
アマチュアであるために
多く見積もりすぎている
というあたり。
犯罪で大金を稼ぐことを
生業としていない素人だから
大金を持ったことがないだけに
そんなに金を使うということが
(そんなに金が残らないということが)
分からないのだろうという
パーカーのモノローグには
なるほど、という感じでした。
また、パーカーや
彼につきまとう勢力以外に
老金庫破りの遺産を狙っている人間がいて
パーカーに対する攻撃のやり方かたしても
素人だろうと推理するあたりは
このシリーズならではの推理法ですね。
ハードボイルドや犯罪小説に分類される
ウェストレイクですけど
推理する場面を描くときは
それなりに納得できる
筋の通った論理を駆使するので
呆気ないという点を除けば
意外と馬鹿にできなかったりするのです。
今回の作品は
解決は呆気ないのですけど
ケイパーものではないだけに
何が起きているのかという謎ときと
誰がやったのかという謎ときが
際立っている感じがします。
パーカーの
プロの犯罪者としての冷酷さも
きちんと出ていますし
シリーズ番外編みたいなエピソードですが
それだけに、初めて読む人には
普通のハードボイルド・ミステリとして
取っ付きやすいのではないでしょうか。
もっともウェストレイク自身は
パーカーが本当にプロなら
町には出かけて行かないはずだから
という理由で
秘かに失敗作だと思っていると
インタビューで答えているそうですが。
パーカーは何とか決着をつけて
身の周りをクリーンにしたつもりでしたが
老金庫破りの死の真相をつかみ損ねていたため
計画が破綻してしまいます。
ここらへんの
パーカーの手抜かりは
なかなか上手い展開だし
そのミスからいかに逃れるか
というあたりの展開に
ちょっとした諧謔味も感じられ
さすがウェストレイク
といったところ。
わずかな金を手に
逃亡せざるを得なくなったパーカーは
これまでの偽りの身分も変える必要が出てきて
再びケイパー業に手を染めることになる
というのが次作
『汚れた七人』(1966)のようです。
どうなるのか
ものすごく気になるんですけど
他に読まなくてはならない本が
ちょっと溜まっているため
続きはまたの機会に
せざるを得ないのが残念。
『メイド・イン・USA』の方は
読了後に観てみました。
が、まあ、それについては
また明日ということにしましょうか。

