エドマンド・クリスピンの
『消えた玩具屋』(1946)の中で
探偵役の大学教授
ジャーヴァス・フェンが
友人の詩人とともに
礼拝堂の食器戸棚へ
閉じ込められるシーンがあります。
不安と苦痛をまぎらわせるために
詩人の方からやろうと提案したのが
〈読めない本〉のゲームでした。
「いいとも。おれからはじめるぞ
……『ユリシーズ』」
「ラブレェ」
「『トリストラム・シャンディ』」
「『黄金の大杯』」
「『ラセラス』」
「いや、あれはぼくの愛読書だ」
「こいつはおどろいた。
じゃ、『クラリサ』はどうだ」
「よし……『タイタス』……」
「ちょっと待て。だれかが歩いてくる
足音がきこえるような気がする」
(大久保康雄訳。pp.116-117)
以上、引用はこちらの本から。
(ハヤカワ・ミステリ文庫、1978.4.30)
これも傑作で
お気に入りの本なのですが
その内容にについては
またの機会に。
上に引用した
やりとりの中に出てくる本の内
自分が読んでいるのは
『ユリシーズ』ぐらい。
『トリストラム・シャンディ』ぐらいは
若いころに勢いで
読んどくべきでした( ´(ェ)`)
ラブレェというのは作者名で
書名でいうなら
『ガルガンチュアと
パンタグリュエルの物語』ですね。
『黄金の大杯』というのは
『黄金の盃』という邦題の方が
現在では知られているかと思います。
『ラセラス』は
検索して見当がつきましたが
『幸福の探求
アビシニアの王子ラセラスの物語』
でしょう、たぶん。
これだけ他の本に比べ
250ページと短いのですけど
フェンにとっては
よっぽど退屈な本なんでしょうね。( ̄▽ ̄)
『クラリサ』は
クリスピンの本が訳された頃
翻訳はありませんでしたので
日本語では読めなかったんですけど
なんと現在ではウェブ上に
翻訳がアップされていました。
http://yorific.cll.hokudai.ac.jp/
これにはびっくり。
ちなみに、
そちらでは邦題が
『クラリッサ』ですけど
そちらの方が一般的でしょうね。
我こそはと思わん方は
読んでみてはいかがでしょう。(^_^)
最後の『タイタス』というのは
何かのタイトルの言いかけです。
『ゴーメンガースト』三部作の第1巻
『タイタス・グローン』だったらいいな
だったか
『タイタス・グローン』だったら面白い
だったかしらん
そにかく、そういう説を唱えた
誰かのエッセイを
読んだことがあります。
同じエッセイで
だったと思いますけど
『タイタス・アンドロニカス』あたりが
正解じゃないか
と書かれていた記憶があります。
衒学趣味が鼻につく方も
いるかも知れませんけど
これはなかなか汎用性のあるゲームで
古典も含めた日本文学縛りでやると
本好きであれば
楽しい時間が過ごせそうです。(^_^)

