(テイチクエンタテインメント
TECN-25635、2000.5.24)
1983年にリリースした
『アブラカダブラ』と
1984年にリリースした
『ガラスの植物園』を
カップリングしたアルバムです。
何がきっかけだったか
ちょっと失念したのですけど
藤 真利子が
フランス・ギャルをカバーした曲を
収めているアルバムを出している
と知り、購入したのでした。
最初は
『アブラカダブラ』収録の
「うわきなパラダイス急行」が
フランス・ギャルのカバーだと
知ったのだと思います。
ところが
つらつら調べているうちに
『ガラスの植物園』に入っている
「アブナイ彼」という曲名が目に入り
こちらも欲しいと思い始めたところ
2枚をカップリングした
CDが出ているということを知って
これは買わないわけにはいかないでしょ
という気分になりまして。(^^ゞ
というのも
「アブナイ彼」という曲を
大西結花が歌うバージョンで聴いており
フランス・ギャルの
「涙のシャンソン日記」のカバーだと
分かっていたからでした。
てっきり
大西結花のオリジナルかと
思っていたので
これは確認しなければ!
というわけでして。
そしたら
『ガラスの植物園』の方には
フランス・ギャルのカバーが
「アブナイ彼」の他に
2曲も入っていて
びっくりさせられたという。( ̄▽ ̄)
「うわきなパラダイス急行」の原曲は
「娘たちにかまわないで」(1964)。
自分の知るかぎり
日本語でのカバーは
このバージョンだけです。
セレクトがシブ過ぎる。
「アブナイ彼」は
上にも書いた通り
「涙のシャンソン日記」(1965)で
これも名曲。
というか
大西結花以外にも
何人かがカバーして歌っており
それを聴いているうちに
「夢みるシャンソン日記」より
いいんじゃないかと
思うようになっていた次第で。(^^ゞ
「涙のシャンソン日記」の
他のカバーについては
その内に紹介できればと思いますけど
それはそれとして
今回の藤 真利子版が
大西結花版の元版だと
分かったのが嬉しい。
そして
両バージョンを
聴き比べできるのも
嬉しかったりします。
「BIG FAT MAMMA」は
フランス・ギャルの同名曲のカバー。
先日こちらで取り上げたアルバム
『新しい愛のはじまり』(1976)に
入っている曲だったので
タイミングの良さにびっくり。
もちろん
日本語カバーはこれっきり
かと思います。
「娘たちにかまわないで」以上に
セレクトがシブい……。
「謎のボーイフレンド」は
「ジャズ・ア・ゴーゴー」(1964)のカバー。
原曲がスキャット主体の曲だけに
自由闊達ともいうべき日本語詞には
ただただびっくり。
「アブナイ彼」もそうですけど
正確に訳するというより
思いきって
まったく違う日本語を充て填る
という手法が面白いし
興味深い。
60年代の洋楽受容期に
漣 健児や岩谷時子らがやっていたことも
いってみれば、同じことであり
そういう伝統を復活させたともいえるし
何より曲としては
そちらの方が聴いてて楽しいのです。
「ジャズ・ア・ゴーゴー」は
椎名林檎などもカバーしており
そちらはまだ聴いていないのですけど
聴き比べるのが楽しみになってきました。
訳詞というか
日本語の歌詞はすべて
藤 真利子が微美杏里の筆名で
こなしています。
ビビアン・リーのもじりなのだとか。
藤 真利子の声は
これは地声なのかどうか分かりませんが
コケティッシュというのか
ぶりっ子アイドル風な声質でして
ロリータ・アイドルな雰囲気を
全開させています。
『アブラカダブラ』の方は
カバーではない
オリジナル曲の歌詞も
すべて微美杏里が書いてます。
『ガラスの植物園』の方は
全曲フレンチ系のカバーで
日本語詞も微美杏里が担当。
ヴェロニク・サンソンや
フランソワーズ・アルディ、
ジェーン・バーキンといった
フレンチ系ガールズ・ポップ好きには
たまらない1枚になっているか、と。
そういえば
『アブラカダブラ』のトラック2は
フランソワーズ・アルディの
「さよならを教えて」(1969)を
彷彿させるメロディーでした。
ライナーの解説を
サエキけんぞうが書いているのも
さもありなん、という感じ。
もうひとり
丸山隆宏という人が
解説を書いていて
『アブラカダブラ』の試みにふれ
「“早すぎた渋谷系”という呼び方さえ
可能かも」と評しているのには
これまた、さもありなん
という感じでした。
ライナーには
藤 真利子のディスコグラフィも
ジャケ写とともに載っていて
資料的にありがたかったです。
ムーンライダーズが
全面的にバックアップしている
ということで
近年、注目されているっぽい
『アブラカダブラ』ですけど
個人的には
『ガラスの植物園』の方が好み。
もっとも、両方とも
甲乙つけ難い出来ばえであることは
文句なく認めますけど。
なお
『ガラスの植物園』の原曲や
創唱者に付いては
以下の記事が詳しいです。
http://www5d.biglobe.ne.jp/~ktabloid/FujiMariko.htm
ご参考までに。