寺師真理子『セイシャス、ラモー&クープラン』

(ライヴノーツ WWCC-7835、2017.4.25)

 

販売はナミ・レコードです。

 

イギリス在住のピアニスト

寺師真理子(てらし・まりこ)が

カルロス・デ・セイシャス、

ジャン=フィリップ・ラモーと

フランソワ・クープランの

チェンバロ曲を演奏したCD。

 

昨日、仕事帰りに立ち寄った

新宿のディスクユニオンで

見つけた1枚です。

 

こんなの出てたんだ、

知らなかった

と思っていたところ

かえってよくよく見たら

今年の4月に出たばかりの

新譜だったので

ちょっとびっくり。

 

 

古楽演奏を愛聴し

特にチェンバロが好きな人間としては

買おうかどうか迷ったのですが

セイシャスを

モダン・ピアノで弾いた演奏は珍しい

(フォルテピアノ演奏盤はあります)

と思い、購入。

 

結果的には買って大正解でした。

 

 

セイシャスは

後期バロックの

ポルトガルの音楽家です。

 

曽根麻矢子の演奏で聴いてから

ちょっとハマりまして

いっとき、CDを見つけては

買っておりました。

 

38歳で亡くなるまでの生涯に

700曲ほどの曲を

残したそうですが

歿後に起きた1755年の

リスボン大地震の際

オリジナル楽譜は

失われてしまいました。

 

現在では

当時の教会関係者による

筆写譜しか

残されていないそうです。

 

それでも

100曲近いチェンバロ曲が

残されているんですけど

本盤にはその中から

4曲が選ばれています。

 

そのうちの

ソナタ第50番ト短調は

曽根麻矢子の演奏で聴いて

感銘を受けた1曲で

これは名曲ですね。

 

モダン・ピアノで聴いても

すばらしく、

感動ものです。

 

 

ラモーは

クラヴサン曲集の

第1〜3集から10曲。

 

その中には

小川洋子の小説

タイトルになっている

「優しい訴え」も

含まれていて

これが絶品でした。

 

「天使の会話」もいいですね。

 

あと

これまで聴いた中では

最もゆっくりした演奏ではないか

と思われる「タンブラン」に

びっくりしたり。

 

こちらのブログで以前

青柳いづみこが

ラモーを弾いた盤

紹介したことがあります。

 

そのとき

ピアノによるラモーの名盤のひとつ

というふうに書きましたが

寺師真理子の本盤も

勝るとも劣りません。

 

 

クープランは6曲。

 

個人的に

クープランの曲は

いまだにピンとこないので

これは! と

思わせられることがないのですけど

「葦」は、ちょっといいかも。

 

クラヴサンを想定して

作曲されたものなのに

ピアノ映えする曲というのが

明らかにありますね。

 

ライナーの演奏者紹介に

「原曲の装飾音や調性を踏まえ、

かつピアノの音色の持つ

暖かさを組み合わせた、

独特の色合いのある表現が

評価されている」と

書かれていますけど

その特徴が最もよく出ているのは

クープランではないか

という気がします

 

だから自分にとって

クープランは

いまだにピンとこないのかもσ(^_^;)

 

 

ライナーの文章は

演奏者の紹介文を除き

奏者自身の執筆ですが

「クラヴサン奏者と知り合って」

という文章を読むと

フランスのクラヴサン奏者

ユゲット・ドレイフュスに

学んだようです。

 

そのドレイフュスが

昨年の3月に亡くなっていたことを

寺師の文章で知り

ドレイフュスのCDも

何枚か持っていることもあって

これには驚かされました。

 

遅ればせながら冥福を祈ります。

 

 

往年のフランスのピアニストが

バロック時代のクラヴサン曲も

弾いていたということは

以前、青柳のCDを紹介した際に

ちょっとふれたとおりです。

 

ピアニストの寺師が

ラモーやクープランを

弾こうと思い立った理由は

よく分かりませんけど

そういう

フランス・ピアニズムの伝統と

関係あるんでしょうか。

 

 

収録作曲家についての

プログラム・ノートは

読みごたえがあり

勉強になります。

 

ただし

「通続低音」や「バッソン」

「カテドラルドラル」など

見馴れない言葉や誤植が

若干、気になりますけどね。

 

これは英語で書かれた原文を

本人ではなくスタッフの手で

日本語に移したからでしょうか。

 

ちなみに

英文の方で確認してみると

バッソンは bassoon でした。

 

日本語なら bassoon は

バスーンかファゴットと

表記されるものでしょう。

 

もっとも

フランスでは

バスーンという言葉が

「低音」という意味の

bas son に由来するそうなので

ここではあえて

「低音楽器」と訳すべきかも。

 

 

まあ、いずれにせよ

これはおすすめの1枚です。

 

 

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