『『歌で平和を…。』

(徳間ジャパン、1985.6.30)

 

副題「帰って来たつばめ」

 

発売は徳間コミュニケーションズで

国際青年年の設立を記念した

世界平和シンポジウムの論文公募に

アグネスが中国名で投じて

特別賞を受賞したエッセイを

刊行したものです。

 

奥付の著者表記が

「アグネス・チャン(陳美齢)」と

並記されているのは

そのためで

ここでもそれに合わせました。

 

 

また、カバー背と奥付のタイトルには

『歌で平和を…。』と

二重カギがついています。

 

ですから正確に記すなら

『『歌で平和を…。』』

なんでしょうけど

ちょっとカッコがうるさいので

ブログのタイトルでは

外側のカッコは外しました。

前回の記事でもそうしています)

 

 

本に付いているオビの裏側には

先に紹介したレコード

『帰って来たつばめ』発売の

告知も載っています。

 

でも当時、本は買いましたが

なぜかレコードは

買いませんでした。

 

当時は

レコード・プレーヤーを

持ってなかったし

何より懐が慢性的に寂しかったため

本にお金をかけるだけで

精一杯でしたから。

 

今回ようやく

レコードの方も入手できて

ちょっとホッとしています。

 

 

パラフィンは

新刊で買った時に

自分で付けたものです。

 

付けたまま

読まずに

しまっておいたのですが f^_^;

よい機会なので

今回、目を通してみました。

 

 

1985(昭和60)年の時点で

本の扉には

「その後世界情勢が変化していますが、

 書かれた意図を大切にしたいために、

 修正していません」

という注意書きがありました。

 

情勢の変化って何かといいますと

たぶん、ソビエト連邦の

チェルネンコ書記長が

1985年3月に亡くなったことを

指すのだと思います。

 

アグネスのエッセイには

当時のアメリカ大統領だったレーガンと

チェルネンコの対立について

ふれられているのですね。

 

チェルネンコの死後、

ゴルバチョフが書記長となり

翌年にはペレストロイカが提唱され

ソビエトの制度改革が進むこととなります。

 

 

あと、歴史のお勉強的なことを

もうひとつ書いておくと

この本が出た前年、

アグネスが

国際青年年の

世界平和シンポジウムに

論文を投稿した1984年というのは

イギリスと中国との間で

中英共同声明が出された年でした。

 

これによって

1997年に

中国に香港が返還されることが

決まったわけです。

 

それもあって

香港の人々は

将来的にどうするか

進退を決することが

求められていた時期でした。

 

それがアグネスに

こういうエッセイを書かせる

重要なモチベーションとなったことは

疑い得ないところだと思います。

 

 

当時、自分は

そういう政治情勢には

まったく興味がありませんでした。

 

アグネスが本書の中で書いているような

自分に火の子が及ばなければ

他人のことには

目をつぶる方だったと思います。

 

だからアグネスの

本書以降に顕著となる(らしい)

諸々のボランティア活動も

距離をおいて見ていた気がします。

 

その活動を否定はしませんけど

自分にはできないことだけに

キリスト教精神の人だからと

敬して遠ざけていたという感じ。

 

本書に書かれている考え方に対しては

今でも基本的に

ちょっと距離を置いてしまうところが

なきにしもあらずですけど

今回、この本を読んで

深く考えさせられたところも

多々ありました。

 

 

本書に書かれていることは

当り前のことなんですけど

その当り前のことが

いまだに実現されていない不思議。

 

当り前のこととは何か。

 

ローマ法王が日本を訪れた際

汝の敵を愛せ、といわれるけれども

どうすれば自分の敵を愛せるのか

という若者の質問に答えたのですが

その答をもとにして

アグネスは以下のように考えます。

 

「もし、みんなが本当に他人を理解する努力をしたら、きっと世の中の悲しみや誤解が戦争や憎しみが消えるでしょう。反対に、自分中心にしか物事を考えない人達が増えると、世界の平和も危ない状況におかれるわけですね。

 人と人の理解を深めるためには、コミュニケーションをよくする事が必要です。コミュニケーションをしないと誤解がおきやすく、憎しみも増えてしまいます。結果的にはけんかをする可能性が大きくなってしまいます。よく理解しあう精神がとっても大切ですね。」(p.14)

 

 

1985年当時に比べると

世界情勢も国内情勢も

比べものにならないくらい

変化していますが

この本にこめられいる

このメッセージの重要性は

少しも変っていないと思います。

 

何よりもそれが驚きでした。

 

 

そして、それに驚ける自分にも

ちょっと驚いています。

 

出た当時、すぐに読んだら

斜に構えた感想に

なっていたのではないか

と思えるだけに、なおさらです。

 

今回、初めて読むことに

なったわけですけど

自分にとっては、まさに今が

読みごろだったような気がします。

 

その意味では

買っておいてよかったなあと

つくづく思う次第。

 

 

本エッセイに

難しい言葉は

一言も出てきません。

 

冒頭と最後で

母親とのやりとりが描かれ

自伝的な思い出に即しながら

世界の平和について

自分のできることは何か

平易な言葉で書かれています。

 

論文というより

物語のような印象すら受けます。

 

そういう印象を受けるのは

本が出てから

かなり時間が経っている

ということも

影響していると思いますけど。

 

 

ちなみに

ここに書かれている

自伝的な思い出話を読んで

以前、書店のイベントで歌われた

A Place in the Sun

アグネスにとっては

大事な歌だと分かって

ちょっと感銘を受けています。

 

書店のイベントで

この歌の弾き語りが聴けたのは

ものすごくラッキーだったんだなあと

遅まきながら実感させられました。

 

 

なお、本書には

世界平和シンポジウム

特別賞受賞エッセイの他に

北京の首都体育館で行なわれた

チャリティー・コンサートをふりかえる

「帰来的燕子」というエッセイが

収録されています。

 

前の記事でも書いた

NHK特集の

サブテキスト

ともいえる内容になっており

興味深いですね。

 

 

なんだか

「遅れてきたファンの

遅ればせの感想」

みたいな文章に

なっちゃいました。(^^ゞ

 

昔からのファンなら

皆さんお持ちでしょうけど

普通に考えて

今では入手が難しい本なのに

感想が長くなってしまったこと

深謝です。m(_ _)m

 

 

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