前回の記事で
『題名のない音楽会』に
大竹しのぶがゲストで出演し
エディット・ピアフを歌ったのを聴いて
ピアフのイメージが刷新されたと
書きました。


検索してみると
大竹しのぶのゲスト回は
2015年の5月30日とする記事が
引っかかってきましたけど
30日は土曜日なので
31日ですね。

 

もっとも
30日に公開録画があった
という記事もありますので
5月に公録があって
放送はそれより後かもしれません。

 


それはともかく
番組では
「バラ色の人生」「群衆」
「水に流して」「愛の讃歌」の4曲が
演奏されたようです。

 

その4曲の中で
ことさらに感銘を受けたのが
「群衆」と「愛の讃歌」です。

 

特に「愛の讃歌」は
耳慣れた岩谷時子の訳詞ではなく
後に述べるように
かなりアナーキーな歌詞だったのが
印象に残りました。

 


その時の大竹しのぶの話では
松永祐子さんの訳を使わせてもらった
とのことでしたので
さっそく Amazon で
検索してみたりしたのですが
該当する商品が引っかからない。

 

大竹しのぶの歌うCDや
その舞台を記録したDVDも
なぜか未発売(?)のようでした。

 

で、さらにいろいろと検索してみて
松永祐子がピアフを歌うCDを
出していること、
通販で入手できることを知り
ようやく手に入れたのが
今回紹介する2枚です。

 

『愛の讃歌/yoko ピアフを歌う』全2巻
(ハマナカイユ HC-239/HC-240、2011)

 

こちらはバラ売り2巻ものです。

 

その特徴は
演劇的な唱法とでもいうのか
歌詞をすべて
メロディーに乗せるのではなく
時として語り物のような
歌い方になるところと
鍵盤とパーカス、ベースという
ジャズトリオを思わせる
編成であるところ。

 

クインテット(五重奏)より
さらに少ない編成であるわけです。

 


編成が少ないだけに
演奏がクリアですね。

 

また、単なる伴奏にとどまらず
まさにジャズトリオのように
クールだし

曲間のインストで
聴かせどころがあるのが
実にカッコいいですね。

 

特にピアノがステキ。

 

 

松永のボーカルもクリアで
一部を除き
妙なエコーもかけず
よけいなエフェクトのない演奏に
なっています。

 

それだけに歌詞が聞き取りやすく
演劇的な歌い方も
わざとらしくないというか
うるさく感じないし
ごまかしがないという印象。

 

音楽的に整っているであろう

岸洋子の演奏に比べると
破格な印象を受ける一方で
アピールするものが

大きい気がします。

 

 

聴く人によっては

残響が少なすぎるため
のっぺりした録音のように
感じられるかもしれません。


けど自分は、こういう音、好きです。

 


両盤とも最後のトラックに
「愛の讃歌」が収められています。

 

ただしアレンジは違います。

 

どちらもピアノ伴奏だけですけど
vol.1 の演奏よりも
vol.2 の演奏の方が
やや重みと流麗さで勝っている
といったところでしょうか。

 

ちょっと上手く説明できる語彙が
自分の中にはないのですけど
オーケストラによる演奏より
断然いいのは確かです。

 


この「愛の讃歌」を除けば
ダブりはなく
2枚合わせてピアフの歌が20曲、
しかも「水に流して」以外は
すべて日本語の訳詞で
聴くことができます。

 

20曲中11曲が松永自身の訳詞で
「愛の讃歌」はもちろん
「ばら色の人生」
「ブラボークラウン」など
印象的な歌詞が多いですね。

 

なかでも「ブラボークラウン」は
すごいですよ。

 


前にも書いたように
日本で有名な「愛の讃歌」は
岩谷時子の訳詞ですけど
岩谷の訳詞だと
「恋人のためなら祖国を裏切ってもいい」
というアナーキーさが
捨象されてしまっていて
単なるベタな愛の讃歌になっています。

 

ベタ、というのは当方の主観だし
当方の趣味による印象でしかありませんが
そういうベタさは
自分はあまり好きではありませんで
岩谷版の「愛の讃歌」を聴くたびに
やれやれという想いが拭えませんでした。

 

それだけに
『題名のない音楽会』で
大竹しのぶの歌唱を聴いて
ひっくり返った次第です。

 


あと
大竹しのぶは番組で

自分が会いたくて呼び返したために

飛行機事故で愛人を死なせてしまった
という苦悩の中で歌ったものだ

というようなことを
話してましたが
そういう伝記的な情報を踏まえて聴くと
壮絶さがハンパなかったです。

 

ピアフのイメージが刷新された
というのは
そういうことなのでした。

 


ちなみに
祖国を裏切るというくだりは
岸洋子の歌う永田文夫の歌詞でも
ちゃんと訳されています。

 

だけど訳文から受ける印象としては
松永訳の方が
優れていると思いますね。

 

フランス・ギャルのCDのライナーで
日本のアイドルに対する
皮肉めいた言辞を弄していた
あの永田文夫だと思っているだけに
偏向した感想かもしれませんけど。(^^ゞ

 


ピアフの原曲の
歌詞のすごさを知りたいなら
ピアフのCDを買ってきて
歌詞の翻訳を見れば

こと足りるのですけど
やっぱり馴れ親しんだ言葉が

音になったものを聴くのとでは
説得力が全然違うでしょう。

 

それに
大竹しのぶの歌唱を聴かなければ
ピアフのCDを買おうなんて
思わなかった可能性が高い。

 

そんなこんなで
松永訳のCDを買い
聴く機会を持てたことは
良かったなあと思う次第です。

 


ちなみに
岩谷時子、松永祐子
そして美輪明宏の歌詞を比較した
ブログがありましたので
CDなんか買ってられないよ
という人のために
以下にリンクを張っておきます。

 

http://www.tapthepop.net/song/53881

 

このブログにチラシが掲げられている
大竹しのぶがピアフを演じた

2016年の公演ですが
生協のカタログに載っていたので
注文してみたんですけど
見事、抽選に外れてしまったため
残念ながら観られませんでした。


いまだに口惜しく思っています。

 

 

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