1956(昭和31)年から1959年にかけて
東映が制作した
少年探偵団シリーズの全9作が
今年に入ってDVD-BOX化されました。
 
『少年探偵団』DVD-BOX
(ベストフィールド発売、東映・東映ビデオ販売
DSZS-10019、2017.1.11)

前回からいよいよ初ソフト化作品に入り
今回はその続き
第7、8作目にあたる前後編
「透明怪人」(1958.2.25)と
「首なし男」(1958.3.25)を
観てみました。
 
以下、
内容にやや踏み込み気味の感想に
なっていますので
未見の方はご注意ください。
 
 


今回のベース・ストーリーは
いうまでもなく
『透明怪人』です。

乱歩の原作では
本当の透明人間は出てきませんが
映画版では
原子力の放射能によって
透明化する機械を二十面相が発明し
透明化して一ケ月経つと
死んでしまうという設定で
トリックではなく
本当に透明人間を作ってしまう
というあたり
ぶっとんでます。

しかも、還元光線もあって
囚われて透明人間にされた少年たちが
最後に実体を取り戻すという
原作の設定を踏まえたらしきエピソードも
付け加わっていますけど
科学的には無茶苦茶でして(苦笑)

当時、原子力や放射能というものが
何でもありのマジックワードであることを
よく示していますけど
さすがに今観ると
鼻白んでしまう人も
いるかもしれませんね。


ほとんどショッカーの秘密基地のような
二十面相のアジトには
前回のような
快傑ゾロ風の衣装をまとった戦闘員の他
KKKのような衣装をまとった科学班がいて
これまた、改造人間がいないだけで
ほとんどショッカーと変わらない感じ。

もっとも改造人間にあたるのが
透明怪人なのかもしれませんけど。( ̄▽ ̄)


透明人間製造機の
放射能を確保するために
原子炉を有していて
最後の逃亡の際
行きがけの駄賃とばかりに
それを爆破してしまおうとする二十面相。

囚われのマリ子から
通報を受けた警視庁の指示によって
東京都民に避難勧告が出され
自衛隊まで出動するという展開になります。

ほとんど怪獣映画のノリで
よくまあ、ここまで風呂敷を広げたもんだと
アッパレな気持ちになること請け合いです。


それにしても透明人間ものの特撮って
包帯を取ったら何もなかったり
服を着たり脱いだり
食事をしたり
といったカットを撮るのが
お約束みたいになっていますね。

それに、みんな
初めて透明人間と出会ったかのような反応に
終始していて
どうしたら見えるようにできるか
といったことには
考えが及ばないらしい。

たとえば
今回の映画のほぼ10年後に作られる
『ウルトラセブン』(1967−68)の第1話で
クール星人の円盤が透明だと分かったら
特殊噴霧装置を作って見えるようにする
という対処が
すぐに採られていたのとは大違い。


前編「透明怪人」の冒頭では
『透明人間現わる』という映画が
公開されていることになっているのだから
透明人間が現われても
ペンキをかけるなりすれば
見えるんじゃないか
という対処法くらい
思いつきそうなもんです。

それなのに
ウェルズの時代そのままに驚いているだけ
というのでは
名探偵が登場するミステリとして
いかがなものでしょうか。

透明人間ネタを使って
探偵映画を作るなら
そこらへんは
意識してほしかったですね。


そんな想いもあって
前編の「透明怪人」は
隔靴掻痒の感は拭えませんが
後編の「首なし男」は
上に述べたような展開を見せるので
やや楽しめました。

ちなみに『透明人間現わる』というのは
1949年に公開された大映の映画と
同じタイトルですけど
偶然でしょうか。

大映の作品へのリスペクトか
あるいは
それへの挑戦が
意識されていたのかもしれませんね。


今回の2編から
画面が横長レターボックスの
東映スコープになりました。

前回、書影を掲げた
『江戸川乱歩映像読本』(2015)では
埠頭のようなところで
二十面相の部下たちが
マントを広げて明智を襲うシーンに
画面の広さを活かした演出として
評価されています。


「透明怪人」冒頭の
人ごみの中を歩く透明人間を撮ったシーンは
オープンセットなのだとか。

エキストラの通行人が
包帯した顔に驚く演技などがあって
なかなかリアルな感じでした。

同様に「首なし男」で
明智の乗ったバスの運転手が透明人間で
乗客がパニックに陥る
というシーンも
リアルで面白かったです。


明智を演じるのは
前回の「夜光の魔人」二部作に続いて
波島進です。

上記してきたような理由で
知恵の冴えが感じられないのは
ともかく
岡田英次のような
笑みを見せるシーンがないのが
物足りないところです。


助手のマリ子は
「妖怪博士」二部作以来の
中原ひとみです。

人質を取った透明人間に
ローンチェアを投げつけて隙を作ったり
地下アジトから警視庁に
原子炉爆破を通報したりと
大活躍なのがいいですね。

Wikipedia で検索してみたら
中原ひとみは
東映の『三つ首塔』(1955。翌年映画化)で
宮本音祢を演じているようです。

これはぜひ観てみたいなあ。


二十面相を演じるのは
なぜか「特別出演」扱いの
伊藤雄之助。

まあ、今回は透明人間になってるし
ほとんど新聞記者に化け続けであり
その新聞記者は
記者役の役者がやってますから
本人の顔出しは少ないわけで
そのためでもあるんでしょうか。

よく分かりませんけど。

『江戸川乱歩映像読本』でも
ふれていましたけど
二十面相がいきなり
観客に向けて語り出すシーンがあります。

これに当時の観客がどう反応したのか
ちょっと知りたいところです。


少年探偵団員が
靴磨きに変装して張り込む
というあたりに
時代を感じさせられます。

そういうところも見どころのひとつ。

脚本上の不備というか
辻褄の合わなさそうなところが
いろいろありそうですけど
いわゆる透明人間ものの
特撮スリラー映画として
一度は観ておいて損はないかも。
 
 
 
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