以前、こちらのブログで
青柳いづみこが
ジャン=フィリップ・ラモーを
演奏しているCDを
紹介したことがあります。
その際
ピアノによるラモーの演奏について
いろいろと検索している内に
引っかかってきたのが
今回紹介する御喜美江のCDでした。
(BIS Records: BIS-CD-1804、2011)
輸入・販売元は
キングインターナショナル。
写真のタスキ(オビ)にもある通り
日本流通仕様盤の副題は
「御喜美江ヴィルトゥオーゾ・アンコール集」
Amazon での取扱開始日は
2011年3月9日となっています。
メイン・タイトルの
「シル・ヴ・プレ」というのは
フランス語で「どうぞ」という意味です。
ライナーによれば
コンサートのための曲を練習中
それとは関係なしに
「これといった一貫性も理由もなく、
でもなぜか心惹かれる譜面が現れ」
弾きたくなってくる曲を集めたもので
「お好きな曲を選んでお聴きください」
という気持ちで付けたのだとか。
上に書いたような経緯で
検索に引っかかったんですが
あいにく、ラモーの演奏は
1曲しか入っていませんでした。
ただ、先にも書いた通り
御喜美江の名前は知っていましたし
ラモー以外にフィリップ・グラスの曲と
オギンスキのポロネーズが
演奏されていたので
購入した次第です。
曽根麻矢子の
チェンバロ演奏で親しんでいた
オギンスキのポロネーズが
アコーディオンだとどう聴こえるのか
ちょっと興味が湧いたわけです。
ちなみに本盤はオープン価格で
Amazon だと
お手頃価格なのも魅力的。
オギンスキの楽曲の冒頭は
チェンバロで聴くと
♪タ、ターン、タタタータ、タータタン
と鳴るんですけど
アコーディオンで聴くと
最初のタがほとんど聴こえず
♪ターラ、ララ、ターララ
と聴こえる。
これにすごく違和感を覚えて
最初聴いた時は
「うーん……」だったんですけど
今、聴くと
通奏音がいかにもアコーディオン風
という感じもされ
これはこれで
作品の雰囲気に合っているというか
映画『灰とダイヤモンド』の世界に
合っているという感じ。
なお、映画絡みでは
オギンスキの他に
ミシェル・ルグラン作曲の
『シェルブールの雨傘』のテーマも
演奏されています。
フィリップ・グラスの
「モダン・ラブ・ワルツ」は
まあ、おとなしめで
可もなく不可もない感じ。
むしろシューベルトの
「楽興の時」第3番 へ短調の方が
印象的でした。
ピアソラの楽曲も入っており
バンドネオンのために
書かれたものだけあって(たぶん)
さすがにぴったり。
ストラヴィンスキーの「タンゴ」や
ショスタコーヴィチの「別れのワルツ」も
アコーディオンという楽器の雰囲気に
フィットしている感じです。
ところで、このCD、
日本語のライナーが
いちおう付いていますけど
原盤に御喜美江が寄せた文章だけで
日本のCDによく付いている
収録曲やその作曲者についての解説は
いっさいありません。
原盤のライナーにもありません。
だからこっちの知らない作曲家について
自分で調べなくてはならなかったのですが
ネットが普及しているご時世なので
だいたいのところ調べがつくのは
ありがたいことでした。
(あくまでも「だいたい」ですが)
もっとも
「指先もどかし」という曲を書いた
ゼズ・コンフリー(1895−1971)は
聞き覚えがないと思っていたら
検索してみたところ
アメリカの
ラグタイム=ノヴェルティ・ピアノ奏者で
この人が残したピアノ・ロールのCD
確か持ってたような。
だったら検索してまで調べる必要は
なかったわけで。
探してみよう……。f^_^;
また
アンドレ・アスティエ(1923−94)は
フランスのアコーディオニストで
アコーディオン(ミュゼット)の黄金時代に
活躍したとのことですけど
アコーディオンの黄金時代って
いったい、いつなんだ?
という感じだったり。
アスティエと連名の
アンドレ・ロック(1923− )とか
ジョエ・ロッシ(1922−94)なんかも
その界隈の人なんでしょうね。
まだまだ調べ残しがありますけど
それはともかく
それら、知らない作曲家の中では
ヴォルフガング・ヤコビの「セレナード」と
ジョン・ゾーンの「ロードランナー」が
今回、聴き直して
ちょっと印象的に残りました。
だから、やや熱心に調べたところ
以下のようなことが分かりました。
ヤコビ(1894−1972)は
アコーディオンに無限の可能性を見出した
作曲家だそうです。
ベルリンで活動していたのですが
父親がユダヤ人だったため
第2次大戦中に弾圧を受けたそうで
戦後はミュンヘンに移り
1960年代にアコーディオン曲を作って
この世界での第一人者になったのだとか。
ヤコビの曲を検索してみると
「退廃音楽」という表題の
コンピレーションCDに入っていたりして
何だろうと思わせられるのですが
上に書いたような背景を知って
なるほどと腑に落ちた次第。
ジョン・ゾーン(1953− )の
「ロードランナー」は
このCD全体の中で
浮いているんじゃないか
と思わせるくらい
超前衛的な感じの1曲。
ゾーンは
サキソフォーン奏者で
「ロードランナー」という曲は
アニメのBGMを譜面に起こして
そのまま弾いたものなのだとか。
本CDのジャケット右下に
ロードランナーの
アニメ絵が載っているのは
このためですね。
ゾーンがサキソフォーン奏者である
ということは、この曲
サキソフォーンのために書かれたはずで
なるほど、そういわれて聴き直すと
いかにもサキソフォーンのようなフレーズが
頻出しています。
それをアコーディオンで弾いてるわけで
これを知って聴き直すと
感心させられること請け合いです。
もっとも
曲自体をいいと思うかどうかは
また別の話ですけど。
で、そのゾーンについて検索していたら
意外なCDが出ていることが分かり
さっそく買いに走ったのですけど
それについては、また
機会がありましたら、来年にでも。(^^ゞ
こうやって調べた結果
知識や見聞が増えていくのは
いいといえば、いいんですけど
財布が軽くなっていくのが何とも……( ̄▽ ̄)