『不死蝶』角川文庫版
(角川文庫、1975.4.30/1978.1.30. 第16版)

ちょっと必要があって読み直しました。

最初に読んだのは
ご他聞に洩れず(だと思いますが)
上に掲げた角川文庫版で
当時、新刊で買いました。

奥付が上記のように
1978年に出た第16刷ですから
中学生の頃に
読んだことになります。

同じ1978年の7月に
テレビドラマ化され
『横溝正史シリーズ II』の第4作として
全3回で放映されましたから
それを観る前に、ということで
読んだのかもしれません。

それ以来の再読です。


最初に読んだ時は
あまり面白いとは思いませんでした。

ブラジルのコーヒー王の養女になった
日本人女性が
信州の田舎町にやってきて
しかもそこには教会があり
外国人神父が絡んでくる
という設定が
バタ臭いというか胡散臭いというか
田舎の中学生だった自分には
現実味が感じられなかった
ということかと思います。

岡山の田舎で連続殺人が起きたり
信州の財閥のお屋敷で殺人事件が起きたり
といったお話は
抵抗感なく読めていたのにね。

『八つ墓村』のように
鍾乳洞での殺人事件が描かれますし
『犬神家の一族』のように
深讐綿々たる人間関係が
問題になるのみならず
『悪魔の手毬唄』のように
過去の事件が現在に因縁を落とす
という話ですから
設定やプロットの類似性に
倦んでいたのかもしれません。

今回、読み直して
相変わらずバタ臭くは感じたものの
犯人当ての本格ものとしては
意外としっかり作られており
そこそこ楽しめました。


ちなみに
上記『横溝正史シリーズ II』で
放映された際
コーヒー王の養女である
美女を演じたのは
竹下景子でした。

竹下景子は
嫌いではありませんでしたけど
(むしろお気に入りだったかも)
原作から受けるイメージと合わず
違和感があったことを
覚えています。

これも観直すと
また印象が変わるでしょうか。

1988年に
2時間ドラマ枠で放映された
『名探偵・金田一耕助シリーズ』版では
有森也実が演じてますが
こちらは観たことがありません。


角川文庫版には
「人面瘡」という
岡山の温泉地を舞台とする短編が
併録されています。

『不死蝶』でも出てきた夢遊病が
「人面瘡」にも出てきて
「金田一耕助は職業柄、
 夢遊病者に関する事件を、
 いままでに扱ったことも
 二、三ある」(p.293)
と書かれていますけど
だからカップリングされたのでしょうか。
(偶然だと思いますけどw)

こちらは
結末の処理が納得いかないというか
残された関係者の
関係の落としどころは
いかがなものか
という気がしましたね。


ところで
『不死蝶』という作品は
もともと『平凡』という雑誌に
連載されたものですが
後に加筆されて
書下ろし長篇として刊行されました。

それが下の
『金田一耕助推理全集』第1巻です。

『金田一耕助推理全集1/不死蝶』
(東京文藝社、1958.3.15)

まあ、納得できるお値段だったので
必要になるかと思って購入。

オビがあれば
ちょっと手が出ない値段だったかも。

とかいいながら
そもそもオビがあるかどうかすら
知らないのですけれど。(^^ゞ


パラフィンは
ちょっとカバーが傷んでいましたので
自分の方で掛けました。

初刊当時に掛かっていたものでは
ありません。念のため。


ところで
さっき表紙を何度か開いたりしていたら
本の背が本体からはがれちゃいました。

はがれた背表紙

がーん。(  ゚ ▽ ゚ ;)

修復用の糊と刷毛を買わなければならぬ……

こういうのを、まさに
安物買いの銭失いと
いうんでしょうねえ( ´(ェ)`)


ペタしてね



●訂正(翌日4:00ごろの)

角川文庫版の初刊行年が
間違っていたので
訂正しました。