
(中公新書、1989.3.25)
1920年代の
イギリスのモダニズムについて考える
参考になるかな、と思って
少し前に古本で買っておいた本に
目を通してみました。
ブルームズベリー・グループというのは
ケンブリッジ大学出身者を中心とする
若い知識人たちの集まりで
最初の頃は
ブルームズベリー地区にあった
ヴァージニア・ウルフの生家で
しばしば集まりが持たれたことから
そう名づけられたものです。
日本でよく知られているのは
上に名前を出した
小説家の
ヴァージニア・ウルフと
経済学者の
ジョン・メイナード・ケインズでしょうか。
あと、伝記作家で評論家の
リットン・ストレイチーとか。
(ちなみに
リットン・ストレイチーは
同性愛者だったそうです)
小説家のE・M・フォスターも
グループに含まれるようですが
この本の中には
発言の引用が一箇所あるだけで
詳しくはふれられていません。
ブルームズベリー・グループというのは
要するに
ヴィクトリア朝末期の若者たちが
ヴィクトリア朝の道徳観や価値観に
反旗を翻したムーヴメント
とでも
まとめられそうなもののようです。
男女が同じ住居に同居することを
厭わなかったために
批判的に捉えられることも
あったようです。
同じ住居といっても
複数階のフロアを持つ
アパートのような住居の
各フロアに分かれて同居するわけで
今風にいえば
一軒屋をシェアしているようなもの
ということになるかと。
そうした場所を定めて
知的で自由な空間を作り上げる
というありようは
現在からすればともかく
当時としては
反道徳的なものに
見られたわけでした。
最初に書いた通り
1920年代のイギリス・モダニズムが
分かるといいなあと思って
手にとったのですけど
ブルームズベリー・グループ自体の盛期は
第1次大戦前のようで
その意味では
ややアテが外れた感じ。
グループの面々が
それぞれの著書を出して
話題になったのは
第1次大戦後のようなんですが
その際の同時代の評価などは
あまり詳しくふれられていないのですね。
モダニズムという観点から
グループを位置づける視点がないため
グループの誕生と終焉までの
だいたいの流れは分かっても
それが同時代的状況の中で
どういう意味を持ち
どういう影響を与えたか
ということがよく分からないのが
物足りない感じでした。
ヴァージニア・ウルフの小説の紹介も
やや物足りなさを覚えたのですが
ブルームズベリー・グループについての
だいたいの印象を持つには
ちょうどいい小著というところでしょうか。
ちなみに
フランスの後期印象派の画家たちを
イギリスに紹介したのが
このグループのメンバーだったようで
ちょうど
青柳いづみこの『ドビュッシー』を
読んだあとだっただけに
ちょっと面白く思いました。
それとの関連でいえば
このグループの面々の
音楽の趣味は
どういうものだったのか
ちょっと知りたいところです。
読み終ってから気づいたのですが
著者の橋口稔は
新潮文庫のブラウン神父シリーズを
3冊ほど訳してた人ですね。
本棚を見てみたら
『ブラウン神父の知恵』と
『ブラウン神父の懐疑』を
持ってました。

(右:『知恵』新潮文庫、1960.8.5
左:『懐疑』新潮文庫、1960.10.31)
この外に
『ブラウン神父の秘密』を訳していますが
そちらは、いまだ手に入れていません。
びっくりしたことには
上に掲げた『懐疑』の方に
朱牟田夏雄への署名が
入っていたこと。

といっても
イギリス文学好きでないと
あまりびっくりしないでしょうし
すごいとも思わないでしょうけれど。(^^ゞ
