
(講談社文庫、1977.12.15)
探偵作家クラブ賞
現在の日本推理作家協会賞を
授賞した作品です。
初刊本は
1961(昭和36)年に出ましたが
その後、何度も再刊されている
著者の代表作で
自分は上掲の
講談社文庫版で読みました。
ちょっと必要があって
久しぶりに再読したんですが
もしかしたら
中学生のとき以来かもしれません。
中学生の頃
講談社文庫から
昭和30~40年代の日本のミステリが
推理作家協会賞受賞作を中心に
次々と刊行されたことがあります。
そのうちの1冊が
『細い赤い糸』なわけで
田舎の中学生だった自分は
名のみ知っていた本を書店で見て
喜んで(たぶん)買ったのでした。
『細い赤い糸』は
相互に関係のない被害者4人が
同じ犯人によって撲殺される
というプロットの
長編ミステリです。
いわゆる
ミッシングリンク・テーマの作品ですが
そんな言葉も知らない当時は
カバー裏の内容紹介に
「本格推理長編」と
書かれていたことから
犯人当ての謎解きものを期待して
読みました。
そのためもあり
読了して
失望したような記憶があります。
田舎の素朴な中学生には
社会派っぽい内容が
ちょっと
合わなかったのかも知れません(苦笑)
初刊当時
コーネル・ウールリッチの
『黒衣の花嫁』(1940)との
プロット上の類似が
指摘されたようですが
今回、読み直して思ったのは
仲間由紀恵主演のテレビドラマ
『サキ』(2013)でした。
黒川芽以さんが出るというので
観ていたドラマですが
その時は『細い赤い糸』はもちろん
『黒衣の花嫁』も
まったく連想しませんでした。
誰も問題にしてないようでしたし。
1961年には
プロットの類似が問題になっても
その後、プロットがパターン化して
被害者各人のドラマの違いや
動機の違いで
勝負できるようになったことを
よく示していると思います。
ただし
『サキ』の動機(のパターン)が
『細い赤い糸』のそれと
ほぼ同じだったのには
驚きですけどね。
当時の講談社文庫は
ミステリ系の作品は背表紙が黒で
カバーを外すと
従来の(創刊当時の)デザインが
また踏襲されていたものでした。

後に古本で見て知ったのですが
創刊当時の講談社文庫は
上掲写真の本体と
同じデザインのカバーが
かかっていたのです。
自分が子どもの頃に親しんだためか
中学生の時に出ていた装幀が
いちばん好きです。
もっとも背表紙は黒より
白の方が、もっと好きですけど。
ちなみに、本作品の
いちばん新しい刊本は
双葉文庫の
日本推理作家協会賞受賞作全集版で
1995年に出ています。
そちらも品切れのようですが
講談社文庫版も双葉文庫版も
古本で安く手に入りますので
興味がおありの方は
Amazon のレビューなどを参考にして
読もうかどうか決めてみても
よろしいか、と。
