『セシールは死んだ』は
前の記事にも書いた通り
第2期メグレ・シリーズの一編
『メグレと死んだセシール』に基づく
1944年のフランス映画です。

以前にも紹介した
『署名ピクピュス』(1943)に引き続き
アルベール・プレジャンが
メグレを演じています。


日本では未公開でしたが
『フィルム・ノワール ベスト・コレクション
 フランス映画篇 DVD-BOX』vol.2の
Disc7として発売されました。

『フィルム・ノワール フランス映画篇2』Disc 5-8
(ブロードウェイ BWDM-1057-2、2015.12.4)

単品でも買えるのは
前の記事で紹介した通りですが
どうせ他のも観たくなるので
昨年末に出た DVD-BOX の方を
買っておきました。

今年に入ってようやく原作を読み
映画の方を観た次第です。(^^ゞ


基本的なプロットは小説と同じですが
途中で首無し死体が出てきて
死体が発見された現場である
ホテルの一室に備え付けられた
洗面台の鏡に湯気を当てると
セシールの名前が浮かび出てくる
という演出があって
その点については
原作とは大きく異なります。

走行中の電車の車窓からホテルの部屋を見て
不審に思ったメグレが調べてみると
死体だったことが判明する
というシークエンスなんですが
なんで電車の車窓から見ただけで
不審に思ったのか。

さすが「直感の王」でございます(苦笑)

その首無し死体が誰かというのは
物語の途中で
いきなり説明されるんですが
被害者のジルベルトという女性は
原作にも出てこないんので
最初誰なのか戸惑いました。

同じ立場の関係者は出てきますけど
原作とは名前が違います。


「直感の王」というのは
『署名ピクピュス』に出てくる台詞ですが
とにかくメグレは見込み捜査中心で
証拠が見つかる前に
容疑者を逮捕していく。

したがって、上と対立することも多い。

拘束した容疑者が
上からの指示で釈放が決まったあと
その容疑者と普通に接し
容疑者の方も居丈高になるわけでなく
拘束されたことなどおくびにも出さずに
拘束される前のように接する
というのが
観ていて違和感あったというか
そういうもんなんでしょうか?


『署名ピクピュス』は
ユーモア描写が印象的でしたが
『死んだセシール』の方も
ユーモラスな台詞回しが
ところどころ挿入されてます。

今回の現場はアパルトマンの6階で
例によって
メグレと部下のリュカとの間で
階段のやりとりがありました。


あと、原作のセシールは
あまり美人のような印象は
受けませんでしたが
映画の方は美人でしたね。

まあ、映画ですからね。( ̄▽ ̄)


監督はモーリス・トゥールヌール。

1920年公開の映画に
『宝島』や『臨海楼綺譚』
『モヒカン族の最後』
というのがあるようですが
日本での知名度は今ひとつのようです。


脚本は
『署名ピクピュス』と同じく
ジャン=ポール・ル・シャノワ。

原作を上手くまとめているとは思いますが
それだけに
首無し死体の事件は余計でしたね。

当時の観客は
面白いミステリだと
思ったのかも知れないけど
首を切る理由なども噴飯ものなので
ちょっと印象が悪い。


原作の事件の冒頭が
映画では30分経ってから
始まるように構成されてますが
それからの展開だけでも
充分面白いミステリになったと
思うんですけどねえ。

原作のまま映像化すると
カットバックを多用することになって
観客にとっては
分かりにくくなったかもしれず
そこらへんが悩ましいところですが。


と、まあ
文句はいいつつも
アルベール・プレジャンはもう一本
メグレを演じている映画があり
そちらもDVD化されることを
期待してますけどね。(^^ゞ


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