
(白泉社 HC SPECIAL、2015.11.10)
本日、池袋で塾の会議がありまして
それを終えた帰り道
ジュンク堂に寄って
コミックス売場に降りていったら
今月の新刊コーナーにありました。
『やっぱり やにゃかさんぽ』以来だから
ほぼ1年ぶりの新刊となります。
わかつきめぐみには
『ソコツネ・ポルカ』(2002)と
『シシ12か月』(2007)という
二つの作品集があります。

(左右とも白泉社文庫で2012年7月18日刊)
その2冊に出てくる
口の悪い土地神と
そのお付きの物の怪たちが
久しぶりに顔を見せる
連作長編です。
蛇の物の怪の巳之介とハマグリが
河童に別世界に引きずり込まれて
(後にはシシが飛び込んでいき)
しばらくその世界を経巡る話がメイン。
タネマキという
「誰よりも一番古いもの」が
いろんなところで種を植えているんですが
だんだん住めない場所が増えていく
というヴィジョンが
3.11 以降の御時世だけに
何やら強烈な
強烈なんだけど静謐な
寂しいイメージを
もたらします。
暗いというわけじゃないけど
何となく寂しい。
新キャラ? として
河童が登場します。
河童はタネマキと共にいるもの
みたいな設定のようですね。
種を捲いても捲いても
だんだん住める場所が減っていく
世界が狭くなっていく。
そういうことに耐えられなくて
土地神と物の怪たちのいる世界に
屏風を通してやってくるんだけれど
土地神から、ある言葉をかけられて
戻っていく。
タネマキがしているのは
どういう意味があるのか。
河童はどういう役割を果たしているのか。
明確な説明は何にもないのですが
その説明のなさがいい
というか
明晰に言語化してなくても
何かを感じさせるという語り口が絶妙で
そこらへんが、オビの惹句にあるように
「和風ファンタジー」と称される
ゆえんでしょうか。
例によって「あとがき」が(も)面白い。
今回、河童を出したのは
『鏡花短篇集』に
「貝の穴に河童のいる事」を
読んだからで
同じ短篇集に入っている
「二、三羽——十二、三羽」を読んで
『鏡花随筆集』が読みたくなって
……というふうに書いてあるのを見ると
なんか無性に口惜しくなってきます。
岩波文庫の
『鏡花短篇集』(1987)も
『鏡花随筆集』(2013)も
買ってあるんだけどなあ。

いまだに積ん読状態で
お恥ずかしいかぎり。
