
(Ici, d'ailleurs / Labels 7243 8454032 6、1998)
『カスカード通り』Rue des cascades は
ティルセンの2枚目のアルバムで
最初、1996年にリリースされました。
これも何らかのコンセプトの下に
まとめられているのかもしれませんが
CDのライナーには
詩のようなものと
(これについては後述)
各曲の楽器編成、
献辞くらいしか
書いてないんですよね。
カスカードというのは
英語読みするとカスケード。
「滝」という意味ですが
実際にフランスのどこかに
そういう通りがあるのかどうかも
分からない。
Wikipedia で調べてみても
コンセプトについては
特に何も書かれていませんでした。
表題曲は
ヴォーカルを伴っています。
作詞はヤン・ティルセンですが
その歌詞はライナーのどこにもないと
最初思っていたんですが
曲名で検索かけてみると
歌詞がアップされているページを
見つけました。
http://musique.ados.fr/Yann-Tiersen/Rue-Des-Cascades-t4021.html
下のページでは
フランス語と対照されています。
http://www.lacoccinelle.net/270946.html
フランス語だと思っていたら
英語の歌詞で
ライナーの冒頭に掲げられている詩を
試訳した内容と同じでした。
詩のようなものは
まさに歌詞だったわけです(苦笑)
英語であっても
まあ、詩ですから
内容の意味は分かりませんけどね。
Rue des cascades を歌っているのは
クレア・ピケットという
フランス人のソロ・シンガーで
この曲は
エリック・ゾンカ監督の映画
『天使が見た夢』(1998、仏)の
エンディングに
採用されているそうです。
クレア・ピケットは、この他
トラック10の
Naomi という曲も歌っています。
この Naomi は
アレン・ギンズバーグが
精神病院で狂死した母親をうたった
「カディッシュ」Kaddish という
詩に基づくもので
カディッシュ自体は
近親者が服喪中に
毎日教会で、死者のために唱える
ユダヤ教の祈祷のことだそうです。
とまあ、検索すると
上記のようなことが分かるわけですが
ギンズバーグの名前はかろうじて知っていても
その詩を読んだことのない自分にとっては
ふーん、という言葉くらいしか
浮かばないのですけれども。
トラック8の Mouvement introductif は
無伴奏ヴァイオリン曲のような旋律が
印象に残る1曲で
バッハ好きな人間としては
おおっという感じ。
ヴァイオリンを弾いているのは
それを6歳から始めたという
ヤン・ティルセン自身です。
トラック20(これが最後の曲)
La vie quotidienne(私の日常生活)の前半も
まるで無伴奏ヴァイオリン曲のような
印象を受けますが
後半は、瞑想的というか
夢幻的な旋律で
いかにも現代音楽だなあ
という感じになってしまうんですけど。
実はこのアルバムからは
以前紹介した
Minimal Piano Collection にも
6曲、採られています。
ですから、
ミニマリズムっぽい曲が多いのかと思って
『アメリ』のサントラ以外で
まず購入したのが
このアルバムだったりするのでした。
そしたら
いきなり『アメリ』の曲が流れたり
(トラック1の「初めての場所」)
ヴォーカル曲も入ったりして
びっくりしたわけですが
結局ピアノ・ソロは
Minimal Piano Collection に採られた
6曲のみでした。
なぜ『カスカード通り』に注目したのか
ライナーにも明示されていないので
よく分かりません。
映画『アメリ』には
このアルバムから
「初めての場所」J'y suis jamais allé
「そんなに楽じゃない」Pas si simple
「祭りの夜」Soir de fête
の3曲が採られています。
「初めての場所」は
タイトルが出るまでの
(アメリが生まれるまでの)
オープニングで流れている曲です。
「そんなに楽じゃない」は
母親が死んだ後に父親が
庭園にミニチュアの霊廟を作り始め
それから月日が流れ
アメリが家を出て
カフェ・ドゥ・ムーランに勤めている
現在時までのシーンのバックに
流れている曲です。
「祭りの夜」は
意地悪な八百屋の店主が
店員のリュシアンをいじめているとき
「あなたの心は野菜以下ね
野菜には芯があるもの」
というシーンのバックに流れていました。
今、仕事が圧してて
これ以外のシーンで流れていたかどうか
ちょっと確認してる時間が
ないんですけど
他にもあったらごめんなさい。m(_ _)m
ところで
「初めての場所」の旋律は
トラック17の La fenêtre(窓)にも
引用されているというか
再登場していて
だから余計に
あるコンセプトに基づいている
アルバムかとも思うんですが
はっきりしないのが
何とももどかしい感じで。
上でふれたヴァイオリン・ソロの
Mouvement introductif も
コンセプト(文脈)が分からないので
しっくりくる日本語訳が
思い浮かばないのでした。
英語に直すと
Introduction Movement
なんですけれども
さて?
