『古楽再入門』
(春秋社、2015年9月25日発行)

副題は「思想と実践を知る徹底ガイド」


今月の8日に
池袋へ採点済み答案を届けた帰りに寄った
新宿のタワーレコードで見つけて
12日に読了しました。

古楽の本が出るのも買うのも
久し振りな気がしますので
ここで買わなきゃ
古楽ファンの名がすたると思って
迷わず購入。

いや、ほんとは少し迷ったんですが (^^ゞ
見たとき買わないと
忘れちゃうし
二度と出会わないということも
ありえないことでもないんですよね。


全体は6部構成になっていて
第1部は古楽復興の立役者
キーパーソンを8人紹介しています。

ほとんど器楽奏者や指揮者なんですが
8人の中の一人に
メンデルスゾーンを入れているのが
ちょっと珍しい。

メンデルスゾーンは
バッハの『マタイ受難曲』の蘇演をしてて
そのメンデルスゾーンのアレンジに基づくCDも
輸入盤のみですが、出ています。

ちなみに持ってます。(^_^)v


8人のうちには
自分がリスペクトしている
グスタフ・レオンハルトも
もちろんいます。

著者は新聞記者時代に
文化部に所属していることを活かして
レオンハルトに
直接インタビューしたようで
いいなあ、羨ましい。

ちょっと気になったのは
初期のレオンハルトの録音
例えばヴァンガードから出ていた
『ゴルトベルク変奏曲』
『フーガの技法』などは
モダン・チェンバロによることに
触れていないことでしょうか。


第2部は
各国別に古楽復興の流れを見ていて
この切り口はちょっと珍しい。

各国に当てられたページが少ないのですが
アウトラインを知るには便利。


第3部は
古楽器を個別に取り上げています。

モノクロとはいえ
写真も掲げられていて便利。

ただし
バロック・ヴァイオリンと
モダン・ヴァイオリンの奏法の差は
自分で楽器をやっていないこともあり
一読してもよく分かりませんでした。f^_^;


第4部は
バロック・ピッチとか
アーティキュレーションとか
古楽にまつわる用語を
個別に取り上げて解説しています。

やっぱり楽器をやっていないせいか
ピッチというのは
今まで、よく分らなかったのですが
今回の本を読んで
ようやく腑に落ちました(たぶんw)


第5部は
バッハやモーツァルトなど
作曲者個別の演奏史で
紙幅が限られているのであれですけど
メンデルスゾーンやブラームスまで
あがっているのが珍しい。

古楽の演奏実践が
どんどん時代を下っていることに
対応したものでしょう。


バッハの項目では
合唱は1パート1人というリフキン方式
今では(昔から?)
OVPP(One Voice Per Part)と
略していうらしいことを知って
これはちょっとトクした感じ。

トン・コープマンなんかは
OVPPはナンセンスだと
言っているそうですが
自分は
切り詰めた音が聴ける演奏が
好きなので
OVPPことリフキン方式が
すたれずに続いているのは
嬉しいことです。


そして第6部が
古楽の現状と今後を考える章で
時代はどこまで下るのか
地域はどこまで広がるのか
奏法に対する考え方はどうなるのか
というようなことが
考察の対象になっています。


各部の最後に
参考資料が紹介されており
CDだけでなく
DVDや書籍の紹介にまで及んでいるのが
今までにない特徴ですね。

これでまた欲しいものが
増えてしまうという
問題点(?)はありますけど(苦笑)
紹介されている資料の中には
自分がこれまでに買ってきたものあって
「お、なかなかやるじゃん、自分」
と嬉しくなったりしました。


あえていえば
CDやDVDのジャケット写真や
本の書影も掲げてほしかった。

CDはジャケのデザインを覚えていて
店頭で見かけた時に
「ああ、これか」と気づいて
買うことが自分の場合は多く
文字情報だけの場合よりも
助かるものですから。


あと、古楽CDの
名盤ガイドブックの類い
例えば皆川達夫の
『ルネサンス・バロック名曲名盤100』
といった類いの本も
参考資料として
取り上げてほしかった気がします。

どこの章であげるかというのは
難しいところでしょうけど。
(第2部か第6部かな)

その手の本が
古楽のファンを増やしてきたわけだし
『古楽再入門』のような本がない時代に
断片的にとはいえ
古楽についての情報を
教えてくれたわけですから。


とはいえ
350ページに充たない長さで
情報を詰め込めるだけ詰め込んだ
という印象を受け
読みでがありますし
最近、類書が出てなかったこともあり
改めて啓発されることもあったりして
楽しめました。

ただ、先にもちょっと書いたように
こういうのを読むと
聴いてみたいCDが出てきて
懐が寂しくなるのが
玉に瑕といったところでしょうか(笑)


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