『江戸川乱歩異人館』13
(集英社ヤングジャンプコミックス、2015.9.23)

『孤島の鬼』を原作とする
「慾男」の残りと
「火縄銃」に基づく
「焔男[ほむらおとこ]」が
収められています。


『孤島の鬼』は長編でもあり
読み返して確認する時間は
なかったのですが
確か原作では
世間への怨みから
奇形を製造していたのでは
なかったかしら。

そう記憶しているのですが
それが「慾男」では
変えられています。

どういうふうに変えられているかは
未読の方の興趣を殺がないためにも
ここでは伏せておきますが
これはやはり
奇形というモチーフを
前面に出すことが
はばかられたからでしょうか。

あと
これも詳しくは書けませんが
助け出された秀ちゃんの運命が
原作と違ってたのも
ちょっと残念。

その代わり
というわけではないでしょうけど
最後に文代が登場して
いつのまに
ということになってます。

文代が登場するというと
勘のいい人は気づくでしょうけど
例の男も登場します。

ここらへん
映画『江戸川乱歩全集/
恐怖奇形人間』
(1969)の設定を
借りているのかなあ
とも思われ。


「焔男」の原作は
乱歩が学生時代に書いた習作で
海外の作品になども使われた
有名なトリックが出てきます。

それもあって
あまり脚光を浴びることのない
マイナーな作品なんですが
それをコミカライズするのは
さすが『乱歩異人館』。

原作では橘という
これ一作きりの探偵が登場しますが
コミカライズの方は
名探偵として名を上げる前の
明智が登場。

「D坂の殺人事件」が解決してから
まだ日も浅い時期に
友人に誘われた乱歩と共に赴いた
避暑地で起きた事件
ということになっています。

そして
これも詳しくはいえませんが
原作には登場しない
コミカライズだけの
オリジナルな殺人犯も
登場します。

原作以上に
今風の謎解きミステリになっていますが
特にこれといったヒネリはなく
端正なくらい端正な
本格ものという印象です。


それより驚いたのは
「焔男」の後編が
目次で「最終話」となっていること。

実は本シリーズ
今回の13巻で完結したのでした。

13は悪魔の1ダースとも
いわれますから
ミステリ系のコミックの
完結巻数としては
ちょうどいいといえばいえますけど
てっきり全作品を
コミカライズするのかと思っていたので
びっくりでした。

もっと続けてほしかったなあ。

山口版の『人間豹』や『盲獣』
『猟奇の果』なんか
読んでみたかった気がします。


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