だいたい
1950年代から60年代にかけて
だと思いますけど
学習雑誌の付録読物が
全盛を極めた時代がありました。
自分が中高生の時期(1970年代)は
そろそろ下火になった頃ではないか
と思ってますが
それでも何冊か
読んだ記憶があります。
活字だけではなく
中には、まんがもありました。
そうした付録読物には
日本のミステリ作家による
オリジナルが含まれていたりして
ミステリ・マニアの
コレクターズ・アイテムになっています。
と同時に
海外ミステリの既訳作品を
リライトしたものも
たくさん含まれていて
これまた海外ミステリ・マニアの
コレクターズ・アイテムに
なっています。
雑誌の付録ですから
国会図書館なども所蔵しておらず
その全貌をつかむのは
容易なことではありません。
本誌の目次に
題名が載っていればいい方で
現物を見なければ
作者も作品名も分からない
ということも
ざらにあるわけですね。
そのためなのかどうか
古書価もそれなりにする場合が多い。
自分の場合
ほとんど買うことはありません。
というか、高くて買えない。f^_^;
ネット上にはよく出てるようですが
現実の古本屋では
めったに見かけないですしね。
それと、翻訳ものの場合
既訳作品のリライトなので
大人向けに訳された原作を持っていれば
わざわざ買って読む必要もないわけです。
もっとも、中には
大人向けの原作であっても
戦前に訳されたきりだったりして
入手が難しいものが
混ざってたりもするんですけど。
そうした付録読物で
たまたま買えたものの1冊に
E・S・ガードナー原作の
『まぼろしの密輸団』
というのがあります。

(内田庶・文、学習研究社
中学二年コース 4月号 第4付録
中学生ワールド文庫、1962.4.1)
古本屋か古本市かで見つけて
安かったのと
ガードナーにこんな作品あったかいな
と思ったのとで
珍しいと思って買ったのを覚えています。
どこで買ったのかは覚えてませんが。(^^ゞ
で、ずーっと
ほったらかしにしといたのですが
先の記事で取り上げた
『地獄の扉を打ち破れ』(1962)を
読み進んでいって
「二本の脚で立て」にぶつかったとき
もしやと思って確認してみたら
これがドンピシャリでした。
『まぼろしの密輸団』の原作は
ボブ・ラーキンものの
「二本の脚で立て」On Two Feet(1932)です。
先の記事で
ひとつ得したな、と思ったことがある
と書いたのは
このことでした。
「麻薬密貿易の女王」
(これは井上一夫訳の表現)
と呼ばれる
ラ・ラパズエラ(牝ぎつね)の
正体を暴くため
メキシコに入国していた
ボブ・ラーキンは
場末の薄汚い居酒屋で
不意に起きた喧嘩騒ぎに巻き込まれる。
何とか騒動から抜け出して
そこに来合わせたアメリカ人女性と
暴漢に襲われていた男とともに
国境を越えようとしたとき
男がボブを密輸犯だと告発。
逆に男を伸したボブは
謎の女とともに国境を越えて
ホテルに落ち着く。
そこへ国境警備隊の隊長
ダイクマン少佐が現われて
女を訊問すると言うが
女はいつのまにか姿を消していた。
ホテルは少佐の部下が取り囲んでいて
猫の子一匹這い出る隙もない
という状況で
この、いわば密室からの消失トリックは
本格ミステリのトリックほど
トリッキーなものではありませんし
ボブがすぐに解いちゃうんですけど
ちょっとしたアイデアでした。
その後、再び国境を越え
メキシコに戻ったボブは
麻薬密輸組織を潰滅させる
というお話です。
アクションが中心のストーリーですけど
上にも書いた通り、
ちょっとした密室の謎が出てきたり
謎の女の正体をめぐって
ミスディレクションが仕掛けられていたりと
ミステリ的なプロットがしっかりしていて
そこそこ読ませます。
タイトルの
「二本の脚で立て」というのは
「自分の脚だけを頼りに仕事をする」
というボブのスタンスを示しています。
リライト版では
ボブ・ラーキンは
「もとは、有名な少年奇術師」
と紹介されており
作中に登場する謎の女が
ボブと共にホテルに落ち着く際
宿帳への記載が
原作では
ボブの妻となっていたのが
リライト版では
ボブの妹に変えられています。
だから、物語のラストは
微妙に違った印象を残しますが
ジュブナイルではよくあることです。
巻末にはリライト者の
内田庶による解説が付けられています。
短いものですが
ガードナー作品の特徴について
簡にして要を得た説明がなされており
中学2年生だけでなく
大人が読んでも勉強になります。
これを読んで
海外ミステリ・ファンになった人が
どれだけいたかは
見当もつきませんけど
昔は、中学生ぐらいから
海外ミステリにふれるきっかけが
こんなふうな形で
多かったということですね。
長文深謝。

1950年代から60年代にかけて
だと思いますけど
学習雑誌の付録読物が
全盛を極めた時代がありました。
自分が中高生の時期(1970年代)は
そろそろ下火になった頃ではないか
と思ってますが
それでも何冊か
読んだ記憶があります。
活字だけではなく
中には、まんがもありました。
そうした付録読物には
日本のミステリ作家による
オリジナルが含まれていたりして
ミステリ・マニアの
コレクターズ・アイテムになっています。
と同時に
海外ミステリの既訳作品を
リライトしたものも
たくさん含まれていて
これまた海外ミステリ・マニアの
コレクターズ・アイテムに
なっています。
雑誌の付録ですから
国会図書館なども所蔵しておらず
その全貌をつかむのは
容易なことではありません。
本誌の目次に
題名が載っていればいい方で
現物を見なければ
作者も作品名も分からない
ということも
ざらにあるわけですね。
そのためなのかどうか
古書価もそれなりにする場合が多い。
自分の場合
ほとんど買うことはありません。
というか、高くて買えない。f^_^;
ネット上にはよく出てるようですが
現実の古本屋では
めったに見かけないですしね。
それと、翻訳ものの場合
既訳作品のリライトなので
大人向けに訳された原作を持っていれば
わざわざ買って読む必要もないわけです。
もっとも、中には
大人向けの原作であっても
戦前に訳されたきりだったりして
入手が難しいものが
混ざってたりもするんですけど。
そうした付録読物で
たまたま買えたものの1冊に
E・S・ガードナー原作の
『まぼろしの密輸団』
というのがあります。

(内田庶・文、学習研究社
中学二年コース 4月号 第4付録
中学生ワールド文庫、1962.4.1)
古本屋か古本市かで見つけて
安かったのと
ガードナーにこんな作品あったかいな
と思ったのとで
珍しいと思って買ったのを覚えています。
どこで買ったのかは覚えてませんが。(^^ゞ
で、ずーっと
ほったらかしにしといたのですが
先の記事で取り上げた
『地獄の扉を打ち破れ』(1962)を
読み進んでいって
「二本の脚で立て」にぶつかったとき
もしやと思って確認してみたら
これがドンピシャリでした。
『まぼろしの密輸団』の原作は
ボブ・ラーキンものの
「二本の脚で立て」On Two Feet(1932)です。
先の記事で
ひとつ得したな、と思ったことがある
と書いたのは
このことでした。
「麻薬密貿易の女王」
(これは井上一夫訳の表現)
と呼ばれる
ラ・ラパズエラ(牝ぎつね)の
正体を暴くため
メキシコに入国していた
ボブ・ラーキンは
場末の薄汚い居酒屋で
不意に起きた喧嘩騒ぎに巻き込まれる。
何とか騒動から抜け出して
そこに来合わせたアメリカ人女性と
暴漢に襲われていた男とともに
国境を越えようとしたとき
男がボブを密輸犯だと告発。
逆に男を伸したボブは
謎の女とともに国境を越えて
ホテルに落ち着く。
そこへ国境警備隊の隊長
ダイクマン少佐が現われて
女を訊問すると言うが
女はいつのまにか姿を消していた。
ホテルは少佐の部下が取り囲んでいて
猫の子一匹這い出る隙もない
という状況で
この、いわば密室からの消失トリックは
本格ミステリのトリックほど
トリッキーなものではありませんし
ボブがすぐに解いちゃうんですけど
ちょっとしたアイデアでした。
その後、再び国境を越え
メキシコに戻ったボブは
麻薬密輸組織を潰滅させる
というお話です。
アクションが中心のストーリーですけど
上にも書いた通り、
ちょっとした密室の謎が出てきたり
謎の女の正体をめぐって
ミスディレクションが仕掛けられていたりと
ミステリ的なプロットがしっかりしていて
そこそこ読ませます。
タイトルの
「二本の脚で立て」というのは
「自分の脚だけを頼りに仕事をする」
というボブのスタンスを示しています。
リライト版では
ボブ・ラーキンは
「もとは、有名な少年奇術師」
と紹介されており
作中に登場する謎の女が
ボブと共にホテルに落ち着く際
宿帳への記載が
原作では
ボブの妻となっていたのが
リライト版では
ボブの妹に変えられています。
だから、物語のラストは
微妙に違った印象を残しますが
ジュブナイルではよくあることです。
巻末にはリライト者の
内田庶による解説が付けられています。
短いものですが
ガードナー作品の特徴について
簡にして要を得た説明がなされており
中学2年生だけでなく
大人が読んでも勉強になります。
これを読んで
海外ミステリ・ファンになった人が
どれだけいたかは
見当もつきませんけど
昔は、中学生ぐらいから
海外ミステリにふれるきっかけが
こんなふうな形で
多かったということですね。
長文深謝。
