『グッディ』
(KADOKAWA ビームコミックス、2014.12.5)

ビームコミックスはもともと
エンターブレイン発行ですが
例の
KADOKAWA とドワンゴの
統合によって
KADOKAWA からの発行と
なりました。

企画・編集が
「エンターブレイン
コミックビーム編集部」
となってます。


ま、それはともかく
『新 仮面ライダーSPIRITS』
第10巻
を買う際に
他になんか出てるかな~
と思って棚を眺め回していて
見つけました。

須藤真澄は以前
こちらで紹介した

最近の作品集は玉石混淆で
そろそろ長編か連作長編が読みたい
と書きましたが
今回の『グッデイ』は
久しぶりの連作長編ものでした。


24時間以内に亡くなる人の姿が
まんまるに見えるという現象を
「玉迎え」という。

その人を見ることができるのは
世界に一人だけ。ただし
「玉薬」を飲んでなければ
見ることはできない。

満15歳になると
玉薬を飲む権利が得られる。

飲むのに親の承認もいらない。
自己責任で飲むことができる。

もし、まんまるな人に出会えたら
その人の最後の一日を
より良いものに
してあげられるかもしれない。

そういう基本設定の世界で
まんまるな人を見た人と
まんまるな人とが織りなすドラマを
ユーモアたっぷり
時にはしんみりさせるタッチで
描いたのが
『グッデイ』です。


これは、まあ、
いってみればSFですね。

ハードSFじゃなく
それこそフレドリック・ブラウンか
星新一系の。

第6話で
クールな女子高生に
まんまるな姿を見られた男の
吹出しの外のモノローグに
「きみ ほんとに
 死神っぽいな
   星新一系の」
と手書き文字で書いてあるのを見て
大ウケしちゃいました。

須藤真澄の作風は
いってみればファンタジー系ですが
どこか懐かしい
昭和SFみたいなところがあって
それが上のモノローグで
ああ、昭和SFの人なんだあ
と改めて腑に落ちた感じでした。


『月刊コミックビーム』に連載した9話に
書き下ろしと思しい1話を加えて
全10話収録されてますが
これがまた、どれも傑作。

それは、人の死を扱っているからなのか
自分がまんまるになる方に近いせいか(苦笑)
どれもこれも「玉薬」の設定のままに
より良い最後の一日を描いた作品に
仕上がってます。

こういう最後なら
死ぬ方も見送る方もいいかなあ
という感じで。

もちろん、この世界にも
玉々詐欺なんていう
振り込め詐欺みたいのも
あるようですし
必ずしも善意ばかりでは
ないでしょうけど
描かれているのは善意の人々ばかり。

だからこそ、昭和喜劇のような
ほのぼのとした感じが
出てくるわけでして。

これはツボにハマりました。


最後に収められた書き下ろしの1編は
第1話を、逝く人の視点から
描き直したものです。

こういう
別の視点からのサイド・ストーリー
というのも、好みなのだなあ。

世界が重層的になる
というのもありますが
何かアクションを起こしたことが
相手にも分かっていて
その相手もそれを受け入れるから
お互いに幸せになる
何も言わなくても分かってくれてる
分かってもらえてる、という
人のつながり具合が、いいです。

こういうと
やった分、返ってくる
みたいな
自己中というか
経済合理主義的な感じで
イヤな感じを受ける人が
いるかもしれませんけど。

説明が下手ですみません。f^_^;


須藤真澄の作風とテーマとが
ぴったりと合った
久しぶりの傑作。

とか思って
巻末のリスト見てたら
庭先塩梅シリーズの4冊目
『火輪花の丘』ってのを
買ってなかった気がしてきました。

パッと見、ウチの本棚にも
見当たらないし。

買っとかなきゃなあ。

何だかんだいってもやっぱりファン
ということですかな(苦笑)


ペタしてね




●訂正(翌日、3:50ごろの)

つらつらコミックスの表紙を眺めていたら
「グッディ」ではなく
「グッデイ」だと気づいたので
タイトルを直しておきました。

「デイ」か「ディ」か
人によって違うから悩ましい……