前回
『おジャ魔女どれみ♯』で
山内重保が演出したエピソード
紹介しましたけど
Wikipedia の
「山内重保」の項目には
山内が影響を与えた演出家として
細田守の名前があがっています。

細田守といえば
2006年に公開されたアニメ映画
『時をかける少女』で
よく知られているかと思いますけど
自分的には、今回紹介する
『おジャ魔女どれみドッカ~ン!』の
第40話「どれみと魔女をやめた魔女」で
たいへん印象に残った監督さんでした。

その第40話を観た限りでは
山内の影響を受けているといわれると
なるほどと納得できる気がします。


『おジャ魔女どれみドッカ~ン!』は
本放送当時からリアルタイムで観てました。

その前のシリーズである
『も~っと! おジャ魔女どれみ』から
おジャ魔女シリーズの
熱烈なファンになった人間としては
当然というか、自然な流れでした。

『ドッカ~ン!』のコンセプトは
魔女界の先々代の女王の呪いを解消する
というものでしたが
どれみたちが小学6年生になったこともあり
後半ではそれぞれの未来というか
将来を見据えるようなエピソードも多く
それが作品の奥行きを
深めていたような気がします。


第40話の頃になると
みんな未来の計画や針路が
決まってきています。

あいこの場合は
小説版のように陸上選手になるとか
そういった将来は描かれませんが
直前の第38話で
家族がまとまる方向が見えてきており
家事などで忙しくしていて
日常が充実している感じです。

どれみだけが
未来の針路も何も決まらないまま
放課後、暇をかこつような状況。

そんな中で、MAHO堂に行く途中
ちょっと寄り道した先で出会ったのが
美空町に引っ越してきたばかりの
ガラス工芸家・佐倉未来で
実は彼女は魔女でした。

魔女は年を取らないから
人間で愛した人がいても
ずっと一緒にはいられない。

そんな事情を抱えて
魔法を使わず
世界中を放浪している
魔法を使わない魔女の一人です。

どれみは未来に
ガラス工芸の手ほどきを受け
自分の悩みを話すうちに
未来から、自分と一緒に行かないかと言われ
悩んだ末にある決心を下すのですが……


これは本放送で初めて観た時から
たいへん印象に残った話でした。

アバンタイトルで
二又道の標識を写し
それが何度か繰り返されるあたりは
どれみの迷いというか
人生の岐路を象徴していて
定番といえば定番だと思ったものの
本編全体の印象は悪くはありませんでした。

好きな人がいても
自分が魔女で年を取らないから
ずっと一緒にいることができないから
別れざるを得ないというような
大人な恋愛の話と並行して
将来のヴィジョンもはっきりせず
たった一人
置いてきぼりになった気になっている
少女の感覚が
あの(といったら悪いけどw)
どれみが主役で描かれていて
感心したのを覚えています。

帰宅した時に母親が
ぽっぷにピアノの指導をしているのを
淋しそうな表情で見るシーンが
インサートされたりして
これは、『♯』で描かれた
ピアノの話を観ていると
余計、切ない。


当時、エンディング・テロップで
この佐倉未来の声を演じたのが
原田知世だと知った時は
驚愕しました。

それもあってか
大林宣彦監督の『時をかける少女』を
連想させるようなところもあったり。

未来の住んでいる家が
古風な日本家屋のイメージで
でも家内にはガラス工芸用の暖炉があったり
レトロでおしゃれな感じなのは
その影響もあるのではないでしょうか。

あと、これは確認してませんが
一緒にヴェネチアに来ない
と未来に誘われて悩んでいる時に
授業中、関先生が朗読しているのは
梶井基次郎の「檸檬」ではないかしら。

とにかく第40話は
女児向けアニメなんだけど
対象年齢は幾つなんだというくらい
非情に繊細な話でした。


脚本は大和屋暁。

おおっ、『♯』の第42話と一緒ですかい。
(と、今ごろ驚くw)

佐倉未来の
「あたし、年上好みなの」という
苦悩をユーモアでくるんだ台詞は
絶品ですね。

作画監督は馬越嘉彦。

これは鉄板としかいいようがない。

そして演出が
上にも書いたとおり 
細田守です。

これを観て
細田守はすごいと思った自分ですが
アニメ『時をかける少女』
未だに観てません……( ̄ー ̄;


それにしても
山内重保の演出したのが
「魔法をつかわない魔女」で
それに続いて、おそらく
どれみシリーズでは二人目の
魔法をつかわない魔女を描いたのが
山内の影響を受けた細田守だというのは
不思議な縁のような気がします。


第40話が収録されているDVDはこちら。

『おジャ魔女どれみドッカ~ン!』Vol.10
(ポニーキャニオン販売・製造
 マーベラスエンターテイメント発売
 PCBX-50381、2003.7)

ちなみに
この話が終わった後の
第41話の予告編もすごかった。

姉であるどれみよりも先に
魔女の一級試験に受かる見込みのぽっぷが
これまでずっと
姉の背中を追い続けてきたことに気づき
どうしたらいいのか分からなくなる
というお話。

この時の予告編の
どれみのカットはすごい。

ある意味「世界一の美少女」になってる。

ぽっぷの表情もすごい!

シリーズの勢いや頂点が
作画に見事に反映されている感じです。


ところで
上に書いた第40話の記事のために
あいちゃんの状況を確認しようとして
同じDVDに収録されている第38話
「ついに再婚!? あいこの決意」を
久しぶりに観直したら
滂沱の涙でした。

あいこが健気すぎる
ということもありますが
通天閣上にいる
あいちゃんの心の声が
遠く離れたMAHO堂にいる
どれみの耳に届くという演出に
と胸を衝かれましたですよ。

一回、観てるのになあ……。


脚本は小説版を書いている栗山緑。

さすが、あいちゃん推し(らしい)の
書き手だけあって
ツボを押さえてますね。

とても女児向けアニメとは思えない
介護の問題を絡めた家庭の事情話に
改めて、びっくりさせられました。

ちなみにこちらは
『映画 も~っと! おジャ魔女どれみ
カエル石のひみつ』
で描かれた
あいこの祖父の話を
フォローしたエピソードでもあります。


この当時の『どれみ』は
女児アニメというジャンルを超えた
というか
時として定番のエピソードをはさみながら
女児の鑑賞力の限界に挑戦するかのような
日常性に由来した傑作が
目白押しだった気がします。

これだけは
プリキュアでは描けれない物語世界だと
つくづく思う次第です。


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