
(ちくまプリマー新書、2014.5.10)
土曜日、塾の会議の後
オフ会に行く前に寄った本屋で
見つけました。
出たばっかりの最新刊で
自分にしては珍しく
(買ってすぐに読むのが珍しいw)
半日で読み終わったという。
ちくまプリマー新書は
ヤングアダルト向けの新書レーベルで
創刊時のラインナップには
内田樹の『先生はえらい』(2005)
という名著が含まれていて
なかなか侮れないません。
とかいいつつ、
あまり買ってませんが
今回のは久々に面白かった。
本好きなので
本のガイドブックが面白いのは
当たり前だと思われそうですが
こちらはタイトルにあるように
主に海外の児童文学に特化した
ガイドブックです。
そこがポイント。
児童文学系のガイドブックは
以前、宮崎駿の『本へのとびら』(2011)
というのを紹介したことがありますが
あちらは基本的に
岩波少年文庫に収録された作品に
限定されていましたけど
こちらはそんなこともなく
様々な出版社から出た本が
紹介されています。
宮崎の本では
岩波少年文庫に入っていれば
日本人の書き手の本も紹介してましたが
赤木の本で紹介されている
日本人が書いた本は一冊だけ、
それもインタビューから再構成した
実話系の本だというのですから
徹底してます。
偶然なのか意図的なのかは
分かりませんが
たまたまだとしても、それだからこそ
大人が読んで面白い児童文学は
海外のものに多いということを
よく示しているように思われます。
以前、自分のお気に入りだといった
イーディス・ネズビット
E・L・カニグズバーグ
フィリパ・ピアスはもとより
以前こちらで紹介した
ルーマー・ゴッデンの『ねずみ女房』も
取り上げられています。
その他にも、自分がかつて
児童文学にハマっていたときに読んだ
(子どもの頃ではありません。念のため)
児童文学の名前があったり
持ってるけど未読の本があったり
持っていないだけでなく
出ていたことすら知らなかった本があったり
とにかく、一気呵成に読み終えました。
単に本の内容を紹介しているだけなら
途中で読むのをやめたかも知れません。
読んでいるうちに
児童文学史の、というと大げさですが
その大まかな
ホントに大まかな流れや
各国の特徴など
ときどきハッとさせられる発見があって
ページをめくる手を
止めさせなかったのです。
『ねずみ女房』についていえば
ある男性児童文学作家が
「これは不倫の話だ!」と言ったらしく
「これはそんな次元の低い物語では
ないのです。
まったくわかっちゃいないよ!
です」(p.71)
と書いてあるのを読んで
ドキドキしながら
自分の以前の記事を読み直しましたが
「不倫」という言葉を出してなくて
ホッとしました(苦笑)
また、オーストラリア児童文学について
あえて一章、設けてあるのが
興味深かったですね。
ドキュメンタリーというか
実話に基づいた児童向けの本を
紹介した章が設けてあるのも珍しい。
あと
「おすすめしにくい本たち」
という章があるのが面白い。
「おすすめしにくい」といっても
つまらないからではなく
少なくとも赤木かん子にとっては
面白い本なのです。
ただ、読書というのが
ある程度の時間を費やすものである以上
おすすめした本がつまらなくて
時間を無駄にさせたと思わせるのは
不本意である、
けれども
そこさえ納得していただけるなら
お薦めしたい本
ということなのですね。
そこにどんな本があげられているのかは
伏せておくことにしましょう。
新刊書店で簡単に確認できることですし。
赤木の本はそれくらい
読む人のことを考え
読まれる本のことを考えた
ガイドブックだと思います。
読まれる本のことを考えている
というのは
お薦めして読んでもらって
つまらないと思われると
本が可哀想、的な発想だと
思ったからです。
読書ガイドの他に
3本ほどコラムが載っていますが
そのコラムのひとつを読んで
最近の人は活版印刷時代の活字を
苦手としていることを知って
びっくりでした。
70歳代の人が図書館で
鋳造活字の文庫本を
新しいのに変えてくれ
というらしい。
70代というと
第2次世界大戦後すぐぐらい
いわゆる全共闘世代、あるいは
いわゆる団塊の世代になるかと思いますが
その世代からしてそうだとは
あっけにとられてしまいました。
ヤングアダルト向けのレーベルですが
内容はまったくの大人向けと
いっても過言ではありません。
大人向けに書かれた本も
紹介されてますし。
タイトルにある
「今こそ」
というのは、明らかに
「大人になった今こそ」
というニュアンスです。
児童文学好きの人にはもちろん
そうでない人でも、本好きなら
お薦めしたい一冊です。
そして
ここに紹介されている本を読んで
(もちろん、本書に書かれているように
図書館で借りて読んで)
児童文学の魅力を知ることができれば
読書のたのしみが広がるのではないか
と思う次第です。
