前回に引き続き
KADOKAWAグループの本になりますが
読み始めたら止まらなくなり
結局、明け方ごろ読み終えました(^^ゞ

『角川映画 1976-1986』
(KADOKAWA、2014.3.8)

副題は「日本を変えた10年」。

タイトルにある通り
1976年から1986年までに公開された
当時の角川春樹事務所が
制作に関わった映画を紹介していく本です。

著者が「はじめに」で書いている通り
映画作品評論ではなく
映画制作の現場や状況を
資料を踏まえて通史的に見ていく本で
扱う範囲は
著者が「角川映画」を
リアルタイムで観ていた
いわば青春時代ということになるようです。


角川春樹事務所が制作に関わった
角川映画の第一作は
ご存知『犬神家の一族』(1976)で
これが公開された当時
自分も田舎の映画館で観ています。

当時は、今と同様、
ミステリが好きだったので
横溝正史作品が映画化された
ということが興味の中心でした。

したがって、その後は
第2弾の『人間の証明』(1977)
第3弾の『野性の証明』(1978)までは
劇場で観ましたが
以後は、まったく観ていません。

『ねらわれた学園』(1981)と
『時をかける少女』(1983)は
ずっと後になって大林宣彦ファンの友人から
ビデオで見せてもらいました。

あと、観てるのは
おそらくテレビでだと思いますが
『金田一耕助の冒険』(1979)と
『蘇える金狼』(同)くらいかな。

こんな偏った観客ですが
当時テレビでやたらに
角川映画のCMが流れていたのは
よく覚えています。

南佳孝の歌や
薬師丸ひろ子、原田知世の歌も
よく流れてました。

したがって、著者の青春時代は
自分の青春時代とも重なります。
同じ時代の空気を吸っていたというか。

だから、
自分は映画少年ではありませんでしたが
本書の内容はたいへん興味深かったですね。


上にも述べた通り
映画作品評論ではないと書かれていますが
時代背景と制作背景を踏まえて
映画について語っているわけですから
これも立派な評論だと思います。

読んでいて浮び上がってくるのは
角川春樹という青年(当時、30代前半)が
映画業界の古い体質に挑戦していく過程です。

薬師丸ひろ子・原田知世という
二大スターが誕生する瞬間も
もちろん、フィーチャーされています。

ここらへんのカルチャーに詳しい人には
新しい知見はないかもしれませんが
当時は今のように
ネット環境があったわけでなく
情報収集はテレビか
紙の媒体がメインだったので
同時代を生きていたといっても
同じ情報を共有できているとはいえず
自分の知らないこと、
知ろうともしなかったことが書かれていて
興味深かったです。


読み終えた後
ここで紹介されている映画
観直したくなってきました。

ビデオソフトなどが高価だった当時とは違い
今ではそれが簡単に、当時よりは安価に
できてしまう時代なのですねえ。

巻末に付せられた
作品データ(ソフト情報)を観ながら
しみじみと感慨にふけったことでした。


巻末には他に、
キネマ旬報ベスト・テン(1976~86)の
映画評論家によるもの、読者選出のものが
内外映画の興行ベスト・テンと合わせて
掲載されています。

これまた、眺めているだけで
時代の空気や変遷を偲ばせて
興味は尽きないという感じでした。


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