『日本女性作曲家の歩み』
(ミッテンヴァルト MTWD-99038、2009.2.10)

昨年末、新宿の
ディスクユニオンに寄った時に
見かけて購入しました。

演奏は
ヴァイオリンが印田千裕、
ピアノが堀江真理子。
録音は2008年9月4~5日。

収録された全曲が
2009年の時点で
世界初録音だったようです。


もともと
日本の古い作曲家の作品には
関心がありまして
(単に古いものが好きなだけかもw)
特に、受容でも演奏でも
クラシック輸入黎明期のものには
興味があることもあり
懐具合と相談して迷いつつも
えいやっ! という感じで
買った次第です。


幸田延(こうだ・のぶ)が作曲した
2曲のヴァイオリン・ソナタが
収録されているというのも
魅力的でした。

幸田延は、有名な明治の文豪
(昭和22年=1947年まで存命でしたが)
幸田露伴(ろはん)の妹です。

ちなみに妹は
ヴァイオリニストの安藤幸(あんどう・こう)。

幸田延は、日本人で初めて
官費で音楽留学を果たした人で
滝廉太郎や三浦環などを育てた人だと
ライナーに書いてありまして
それだけでも関心がそそられますが
何といっても露伴の妹というのが大きい。

とはいえ、明治の洋楽ですから
ほとんど資料的価値しかないだろう
と思っていたら
最初に入っていた
1897(明治30)年作曲の
ヴァイオリン・ソナタ 第2番 ニ短調が
あまりに美しいメロディだったので
びっくりしました。

池辺晋一郎が校訂・補作しているそうで
その点を割り引かなくてはいけないにせよ
この単一楽章で7分半の曲は絶品です。

1897年当時の演奏では
楽器や技術の問題もあり
これほど美しく響かなかったろうな
とも思いますが、それにしてもね。


その他に
松島彜(まつしま・つね)と
(「つね」の字は
 Mac の文字ビューアにはありましたが
 文字化けするんじゃないかなあ。
 「けいがしら(彑)」という部首と
 「にじゅうあし(廾)」という部首の間に
 「粉」という文字が挟まっています)
外山道子、吉田隆子の作品が
収められています。


幸田延の作品は
明治時代のものですが
松島彜の作品は大正時代初演です。

その松島の作品では
1924(大正13)年初演の
「プレリュード」が、いい感じ。

お正月に放送された
『1914 幻の東京』の約10年後には
こういう音楽も初演されていたのだ
と思うと、感慨深いものがあります。


外山道子の作品は
1937(昭和12)年に
日本人女性としては初めて
国際コンクールに入賞した
オーケストラ編成の作品を
戦後になって
ヴァイオリンとピアノの編成に
変えたものが収録されています。

日本の民謡を踏まえた演奏は
そのオリエンタリズムが
今となっては
鼻につく気がしないでもない。

それでも
オリジナル編成の演奏を
聴きたくなりました。


吉田隆子は
橋本國彦の門下生というだけで
橋本の声楽曲好きの自分としては
親近感が湧いてきます。

それにそういうことを知ると
収録されている「お百度詣」にも
橋本のタッチが感じられる
……というのは
こちらの錯覚かもしれませんが(苦笑)

この曲はもともと
歌曲だったそうですから
そちらのヴァージョンで
聴いてみたい気もします。

吉田は
与謝野晶子の
「君死にたまふことなかれ」に
曲を付けているそうなので
それもちょっと聴いてみたいかも。


ともあれ
幸田延の
ヴァイオリン・ソナタ第2番を
聴けただけでも
(その存在を知っただけでも)
お買い得な1枚でした。

在庫はまだあるようです。
興味を持った方は、どぞ。


ペタしてね