『ゴジラに捧ぐ』
(KING RECORDS KICS-775、1999.12.23)

先週の日曜日(1月19日)
『題名のない音楽会』で
伊福部昭特集をやっていて
それを観たことは
前に書いたとおりですが
その際に佐渡裕の指揮で
日本フィルハーモニー交響楽団の演奏による
「SF交響ファンタジー 第1番」の
抜粋版が流れました。

「SF交響ファンタジー」は
東宝の怪獣映画を中心とする
劇伴音楽を中心に再構成した作品で
初演は1983年です。

抜粋版とかいわれて気になったのと
「ゴジラ」のタイトルテーマで
ピアノが入っていたのをテレビで観て
ちょっとびっくりさせられて
聴き直したくなったのとで
確か持っていたはずだと思って
探したのですが
なかなか見つからかったところ
(まあ、いつものことです【苦笑】)
昨日、ひょんなことから見つかりましたので
(まあ、いつものことです【苦笑×2】)
久しぶりに聴いてみました。


自分が買ったのは
『ゴジラ 2000 ミレニアム』(1999)が
公開された時に発売されたもので
同じくキング・レコードから出ていた
『伊福部昭の芸術4/宙』(KICC-178)から
SF交響ファンタジーだけ抜き出したて
再プレスしたものです。
(CDの場合、プレスとはいわないか【汗】)

だから演奏は
『伊福部昭の芸術4/宙』と同じく
広上淳一指揮による
日本フィルハーモニー交響楽団のもので
録音は1995年8~9月です。


ライナーの解説は
片山素秀(=片山杜秀)。

その解説によれば、伊福部は
「映画音楽を
 映像と切り離して演奏するのは
 邪道と考えていた」そうですが
コンサート・ホールで聴きたいという
怪獣映画ファンの熱意に負けて
この編作を手がけたらしい。

その真意はどうあれ
最初にこのCDを聴いた時は
曲としてのまとまりは
今イチだと思ったし
似たようなモチーフが多いのも
どうかと思ったものでした。


今回、改めて聴き直しても
ファンの方には申し訳ありませんが
上に書いたのと
あまり印象は変わりません。

「ゴジラ」のタイトルテーマにおける
ピアノは、前もそうでしたが
やっぱり聴き取れないし。


思うに、素人考えですが
劇伴音楽をコラージュ的につなぐよりも
「ゴジラ」のタイトルテーマなら
それだけで変奏曲に仕上げるとかした方が
曲としては、よりまとまったのではないか
という気がするのですが。

もっとも、映画のファンにとっては
このフレーズはあの映画の
あそこで使われてた奴だ
と気づく楽しみがあるかもしれません。

ただ、それは
いわゆるクラシックとしての
楽曲の楽しみ方とは
違うような気がするといいますか
交響詩のような物語性や
交響楽のような
対位法的なモチーフの面白さ、
というのは、やっぱり
物語性だと思いますが
とにかくそういうものとは
違うような気が
何となくするのでした。


とはいえ自分は
クラシックの交響曲については
あまり詳しくないですし
どうしてもメロディーラインを
聴きとる傾向があるので
偉そうなことはいえませんがね。

それに、伊福部は
西洋的なクラシックの文法から
自由になることを
目指していたようですので
上に書いたような
「物語性」を求めること自体
鑑賞のスタンスとしては
勘違いも甚だしいことに
なるのかもしれませんしね。

こういう人(自分のことです)は
なんかすごい解説に接すると
ころっと態度を変えるものなので(苦笑)
おお、実はすごいんだ
と思わせる評論に出会えると
幸いなんですが……


『題名のない音楽会』では
「シンフォニア・タプカーラ」
(1954/改訂版、1979)も
演奏されてましたが
そちらの方も
東宝特撮映画の劇伴音楽のように
聴こえたりしたり。

そういう印象から考えたのは
クラシック作品のモチーフを
リアレンジして使い回したのが
(あるいは劇伴音楽のモチーフを
 クラシック作品に使い回したのが、
 といって悪ければ
 発展的にリアレンジさせたのが)
伊福部音楽の特徴なのではないか
ということでした。

ますますファンの人に怒られそう(汗


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