
(2005/酒寄進一訳、東京創元社、2013.10.30)
イザベル・アベディは
ドイツのヤングアダルト作家だそうですが
日本に紹介されるのは
今回の『日記は囁く』が
初めてのようです。
主人公は
映画女優の娘ノア。
彼女が母親と、そのゲイの友人と共に
ひと夏を過ごすために
ある村にやってきます。
ひと夏過ごすために借りた古い家で
ある夜、交霊会が開かれ
そのときコンタクトした霊から
自分が何者かに殺された
と知らされたノアは
村で知り合った青年と共に
真相を突き止める、というのが
物語のアウトラインです。
ヤングアダルト作品だということは
巻末の訳者あとがきを読むまで
知らずに読んだのですが
そういわれてみれば
なるほどそういう感じのする作品でした。
各章の始めに
後に、ノアが滞在する家に
かつて滞在していたことが分かる
少女の日記が掲げられています。
物語が進むにつれて
日記の内容が少しずつ
示されていくのですが
かなり終わりの方になるまで
全体の構図が見えてきません。
残り30ページほどになって
ようやく日記の全貌が明かされ
何が起きたのかも分かるのですが
残り30ページしかないのに
辻褄の合う結末を付けられるのか
と、ドキドキものでしたけど
見事に結末を付けてました。
過去の事件の謎解きも
現在の事件の謎解きも
きちんと伏線が拾われていて
ミステリとしては
思いのほかちゃんとしてます。
ただ、あんまり綺麗に解かれるので
かえって物足りない気もしましたが
ヤングアダルト向けの作品といわれれば
なるほどと納得できる次第です。
あと、村の不良の描写なんかも
類型的なような気がしましたが
それもヤングアダルト作品だといわれれば
そんなもんか、という感じで。
別にヤングアダルト小説を
バカにしているわけではないですよ、
念のため。
古い屋敷で起きた悲劇の真相を
超自然的な要素は絡んできても
リアリティのレベルで
きちんと決着を付けているのですから
自分がこの本に漠然と求めていたものは
そこそこ満たされているわけです。
ただ、作りが端正なだけに
やや古風な印象を受けるだけでして
個人的には
もう少し突出したものが
欲しかった気がしてるだけなんです。
少女まんがの原作に
ちょうどいい感じ
とか書くと
悪口と思われちゃうかなあ( ̄▽ ̄)
訳者あとがきには
ドイツのヤングアダルト系ミステリの
略史が書かれていて
これはちょっと勉強になりました。
