
(集英社ヤングジャンプコミックス、2013.8.24)
『黒蜥蜴』を原作とした
「虯女(ほらおんな)」の続きと
掌編「指」を原作とした
「蠢男(しゅんおとこ))」を収録。
以下、原作との比較するために
ちょっと内容にふれますので
未読の方はご注意ください。
「虯女」は、ほぼ原作通りですが
マイナーチェンジしている箇所も
ちらほらありました。
早苗が自宅から誘拐されるエピソードは
原作では早苗の部屋に忽然として
酔っぱらいが現われるわけですが
本書では、早苗のドッペルゲンガーが現われる
というふうに、アレンジされています。
これはアレンジとしては
なかなか良いというか
いきなり浮浪者が現われるよりは
自然な感じがします。
その前に、会社を馘になった桜山葉子が
謎の紳士にスカウトされるシーンがあるので
あれれと思わされました。
原作を知っている読者の方が
一瞬、惑わされるかもしれません。
黒蜥蜴のアジトへ向かう船の中での
明智殺害の場面は
原作では、例のモノを紐で縛って
海上に放棄するという流れでしたが
本書では、ピストルによる殺害に
変わってます。
これは読んでいて違和感がありました。
というのも、撃ち殺した後で
いちおう死体を確認するのが
自然な流れではないかと思うからです。
原作の場合、死体を確認しない流れが
自然に出来ていたわけで
この点では原作に軍配を上げたい気がします。
そして最後の最後、
明智が黒蜥蜴に接吻するシーンですが
本書での処理は、賛否両論ありましょうけど
これはこれで、黒蜥蜴側の
ひとつの愛の形としては
ありかと思った次第です。
ちなみに、明智の変装は
あまりにも変幻自在すぎるような気が……
「蠢男」の方は
原作がショートショートなので
こういうアレンジもありかと思いますが
ネタが割れやすいので
意外性が感じられないのが難点。
指を切り落とされたピアニストの恋人が
江川蘭子という名前なのは
おっという感じでしたが。
それにしても「しゅんおとこ」って……
乱歩には『闇に蠢く』という
作品もあるんですが
それをコミカライズする時は
どんなタイトルになるんですかね。
原作のネタがネタだけに
コミカライズされないかもしれないけど
ちょっと期待(笑)