『にごりえ殺人事件』(1984)から3年後
文明新聞社主・前沢天風が帰ってきます。
1887(明治20)年の年の暮れが越せずに
文明新聞社は一度つぶれ
天風は他の小新聞に移ったのですが
やはり自由に論陣を張りたくなって
明治21年の8月に社を再建。
たった一人の社員だった青年
高見玉嶺に再び声をかけ
こうして社員一名の小新聞社が蘇り
『開化殺人帖』シリーズが
版元も新たに再開されたのでした。

(青樹社 BIG BOOKS、1987.9.30)
新装なったシリーズ第1弾は
身に覚えのない罪で
北海道の監獄に収監されていた男
源治が、仮釈放になって
東京に舞い戻ってきたことから起こる
事件の顛末が描かれています。
カバーと内扉に
「懲役人源治の復讐」という
サブタイトルが付いているのは
そういうためでして。
(奥付には副題が併記されてません)
源治は、1881(明治14)年に起きた
北海道開拓官有物払い下げをめぐっての
政府高官と政商との疑獄事件に絡む
パイプ役を務めていた
政商の番頭が殺された事件の犯人として
無実の罪を着せられていたのでした。
その源治が
執行猶予で釈放されたことを知った
当時の関係者が
源治を狙っていると思われたのですが
ところが当時の関係者である
罪を免れた政商の番頭たちが
次々と命を狙われるに至り
天風は玉嶺とともに事件の謎を追う……。
天風は娘を設けていますが
あとはお馴染みのキャラクターばかり。
こういう明治ものでは
お馴染みの趣向ですが
本作のみのゲスト・キャラとして
ジョルジュ・ビゴーが登場します。
続く第二作『帝都誘拐団』は
事件の規模が大きくなって
帝都で連続する幼女誘拐事件の
真相を追う話で
勝海舟が登場して
天風たちに協力します。

(青樹社 BIG BOOKS、1988.5.30)
この本は残念ながら手許にはなく
友人から借りて読みました。
この第二作以降、
勝海舟はレギュラーとなって
政界人に便宜を図ったり
軍資金を提供したり
というふうにして調査に協力します。
海舟が出てきた時は
おおっと思いましたが
『安吾捕物帖』のように
名推理を披露するわけではありません。
が、海舟がレギュラーとなることで
ますますテレビ・ドラマのような雰囲気が
増したような気がします。
役者が出揃って
あとは自由に動かすだけで
ドラマがころがる感じ
とでもいいますか。
第二作では、誘拐団が
さらった女児を隠す場所に関して
ちょっとした思いつきがあり
そこから子どもたちを救出するために
最後に思いきった手段がとられていて
ちょっと読ませますね。
第三作『異人の首』では
最後の剣豪といわれた
榊原鍵吉友善(さかきばら けんきち ともよし)
が登場して、天風とともに
壮士連の大臣暗殺計画を未然に防ぐ
というお話。

(青樹社 BIG BOOKS、1989.4.30)
外国人の首なし殺人事件も出てきますが
犯人を隠そうとしたり
首を切った理由を
隠そうとしたりする書き方ではなく
純然たる冒険ものという感じです。
第一作にカメオ出演したビゴーは
かろうじて名前くらいは知ってましたが
さすが本作に登場する
榊原鍵吉は知りませんでした。
時代もののファンには
よく知られているのかもしれませんが。
そして、今のところシリーズ最終作である
第四作『死人起こし』は
これまでとはガラッと変わって
水芸人の女を付け狙う怪人をめぐる
サスペンスものです。

(青樹社 BIG BOOKS、1990.3.10)
いったん死んだ怪人が
蘇ったとしか思えないような事件が起こる
前半の展開や
怪人の襲撃に対処しながらその正体を探る
後半の調査行など
その怪人の描写も含めて
ちょっとした怪奇映画のテイストが感じられる
小味な秀作です。
第1、第2作と第3作とでは
装幀(カバー絵)ががらりと変わってますが
作品のテイスト自体は変わってません。

第3作と第4作も別人の手になるようですが
両方とも同じ桜井一のイラストです。
最初から四作で
シリーズを終えるつもりだったのか
版元の都合で中断したのか
どちらなのかは分かりませんが
これらが文庫化もされず
新書で出ただけで品切れになったのは
ちょっと不思議なような気がします。
どれも、歴史に残る必読の名作
というわけでは、ありませんが
今、時代小説がブームなんですから
このシリーズくらいの出来のものなら
簡単に手に取れるような状況であっても
いいと思った次第です。
戦国時代や江戸時代が舞台じゃないからダメ
というわけでもありますまいに。
文明新聞社主・前沢天風が帰ってきます。
1887(明治20)年の年の暮れが越せずに
文明新聞社は一度つぶれ
天風は他の小新聞に移ったのですが
やはり自由に論陣を張りたくなって
明治21年の8月に社を再建。
たった一人の社員だった青年
高見玉嶺に再び声をかけ
こうして社員一名の小新聞社が蘇り
『開化殺人帖』シリーズが
版元も新たに再開されたのでした。

(青樹社 BIG BOOKS、1987.9.30)
新装なったシリーズ第1弾は
身に覚えのない罪で
北海道の監獄に収監されていた男
源治が、仮釈放になって
東京に舞い戻ってきたことから起こる
事件の顛末が描かれています。
カバーと内扉に
「懲役人源治の復讐」という
サブタイトルが付いているのは
そういうためでして。
(奥付には副題が併記されてません)
源治は、1881(明治14)年に起きた
北海道開拓官有物払い下げをめぐっての
政府高官と政商との疑獄事件に絡む
パイプ役を務めていた
政商の番頭が殺された事件の犯人として
無実の罪を着せられていたのでした。
その源治が
執行猶予で釈放されたことを知った
当時の関係者が
源治を狙っていると思われたのですが
ところが当時の関係者である
罪を免れた政商の番頭たちが
次々と命を狙われるに至り
天風は玉嶺とともに事件の謎を追う……。
天風は娘を設けていますが
あとはお馴染みのキャラクターばかり。
こういう明治ものでは
お馴染みの趣向ですが
本作のみのゲスト・キャラとして
ジョルジュ・ビゴーが登場します。
続く第二作『帝都誘拐団』は
事件の規模が大きくなって
帝都で連続する幼女誘拐事件の
真相を追う話で
勝海舟が登場して
天風たちに協力します。

(青樹社 BIG BOOKS、1988.5.30)
この本は残念ながら手許にはなく
友人から借りて読みました。
この第二作以降、
勝海舟はレギュラーとなって
政界人に便宜を図ったり
軍資金を提供したり
というふうにして調査に協力します。
海舟が出てきた時は
おおっと思いましたが
『安吾捕物帖』のように
名推理を披露するわけではありません。
が、海舟がレギュラーとなることで
ますますテレビ・ドラマのような雰囲気が
増したような気がします。
役者が出揃って
あとは自由に動かすだけで
ドラマがころがる感じ
とでもいいますか。
第二作では、誘拐団が
さらった女児を隠す場所に関して
ちょっとした思いつきがあり
そこから子どもたちを救出するために
最後に思いきった手段がとられていて
ちょっと読ませますね。
第三作『異人の首』では
最後の剣豪といわれた
榊原鍵吉友善(さかきばら けんきち ともよし)
が登場して、天風とともに
壮士連の大臣暗殺計画を未然に防ぐ
というお話。

(青樹社 BIG BOOKS、1989.4.30)
外国人の首なし殺人事件も出てきますが
犯人を隠そうとしたり
首を切った理由を
隠そうとしたりする書き方ではなく
純然たる冒険ものという感じです。
第一作にカメオ出演したビゴーは
かろうじて名前くらいは知ってましたが
さすが本作に登場する
榊原鍵吉は知りませんでした。
時代もののファンには
よく知られているのかもしれませんが。
そして、今のところシリーズ最終作である
第四作『死人起こし』は
これまでとはガラッと変わって
水芸人の女を付け狙う怪人をめぐる
サスペンスものです。

(青樹社 BIG BOOKS、1990.3.10)
いったん死んだ怪人が
蘇ったとしか思えないような事件が起こる
前半の展開や
怪人の襲撃に対処しながらその正体を探る
後半の調査行など
その怪人の描写も含めて
ちょっとした怪奇映画のテイストが感じられる
小味な秀作です。
第1、第2作と第3作とでは
装幀(カバー絵)ががらりと変わってますが
作品のテイスト自体は変わってません。

第3作と第4作も別人の手になるようですが
両方とも同じ桜井一のイラストです。
最初から四作で
シリーズを終えるつもりだったのか
版元の都合で中断したのか
どちらなのかは分かりませんが
これらが文庫化もされず
新書で出ただけで品切れになったのは
ちょっと不思議なような気がします。
どれも、歴史に残る必読の名作
というわけでは、ありませんが
今、時代小説がブームなんですから
このシリーズくらいの出来のものなら
簡単に手に取れるような状況であっても
いいと思った次第です。
戦国時代や江戸時代が舞台じゃないからダメ
というわけでもありますまいに。