$圏外の日乘-『さあ、地獄へ堕ちよう』
(角川書店、2012年9月30日発行)

『デッドマン』と共に
第32回横溝正史ミステリ大賞の
大賞を受賞した作品です。


SMバーでアルバイトをしている女性が主人公。

毎日毎日、生きる意義が見出せず
ほぼ惰性で生きているかのような主人公が
ある日、かつての幼なじみの男性と出会い
「地獄へ堕ちよう」という
奇妙な裏サイトの存在を知ります。

また、久しぶりに出勤してきた
身体を改造することに
生き甲斐を見出している女性と
知り合うのですが
彼女が何者かに殺されてしまう。

ミステリとしては
その犯人探しがメインとなるのですが
調べる過程を通して
インプラントやらスカリフィケーションやら
ボディ・サスペンションといった
身体改造文化や風俗について描かれていくという
かなり特殊な世界を取り上げた作品です。

ですから、話が転がるまでは
主人公もなんか鬱々としているし
勘弁してよお、という感じだったのですが
プロット自体は意外と
ちゃんと謎解きしてます。


オビ裏には
「これが2012年版の横溝正史だ!」
という惹句が載ってますが
そうかなあ、横溝はもう少し
いや、かなり常識的だと思うけどなあ。

もちろん
『獄門島』や『犬神家の一族』の
見立て殺人なんかを
現代の身体改造と重ね合わせれば
上のようにいえなくもないけれど、
横溝のミステリは
そういう見立てをする
ミステリ的な理由付けが
ちゃんとしてたはずですが……。

現代風俗やキャラクターを描くための
装置としての身体改造を
「2012年版の横溝正史」と
いっていいものやら┐( ̄▽ ̄)┌


監禁されたビルから
主人公が脱出する方法は
この小説世界ならではの
鬼畜なトリック(?)で
すごかったけど
ガクゼンとさせられました……( °д°)


最後の最後は、不思議なことに
どこかに突き抜けるような爽やかさすら
感じさせなくもないところがあって
そこらへんは「史上最年少受賞者」らしい
というか、
こんなにいろんなことやった奴等が
こんな爽やかなラストを迎えても
いいんだろうか、と思ったり(苦笑)


たぶん、実際よりはソフトに
描いてるんだと思いますし
実際に身体改造ファッションに
身を費やしている人が読むと
ぬるいと思うかもしれません。

それでも
ボディピアスやら刺青やら
身体に痛いファッション(?)に
生理的な嫌悪感を覚える人には
お勧めできかねます。


装幀は『デッドマン』に比べると
1段も2段も落ちる感じで
これだと買ったり読んだりする気に
ならないんじゃないかなあ。

個人的な印象ですが……。