いつのころからか
「イヤミス」という言葉が
使われるようになりました。
「イヤミス」というのは
「ダ・ヴィンチ電子ナビ」の記事
(「イヤミス 意味」でググったら
トップに出てきました【苦笑】)
によれば
「『後味が悪い』『イヤな気分になる』
ミステリー作品を指す言葉」
だそうですが
さしずめ田南透(たみな・とおる)の本書なんかも
題名とは裏腹の「イヤミス」と
いえるかもしれません。

(東京創元社、2012年1月30日発行)
九州の大学に通う小杉景太は
同じゼミの石元陽菜に
密かに想いを寄せていましたが
ある日、彼女に頼まれて
医学部のイケメン学生に
プレゼントの橋渡しをする羽目になります。
石元陽菜は、愛らしい外見で
ゼミの男子学生にも人気がある存在でしたが
本性は、男を手玉に取り
いい男を見つけて社会的地位の安定を望む
専業主婦的上昇志向の強い俗物。
小杉景太はその本性に気づかず
陽菜が別の男を好きなことに気づいて
自らの思いを告白せず
陽菜を傷つけないようにしようと心がける
いわゆる好青年の役回り。
その陽菜を付け狙うストーカーがいて
どうやら景太や陽菜と同じゼミの学生らしい。
そのストーカーが陽菜の本性を知り
彼女に殺意を抱き
ゼミの調査旅行中に殺害する計画を立てます。
そしてゼミの調査旅行先である
小笠原諸島の一小島に台風が通過した夜
ついに陽菜と、そしてもう一人の人物が
殺されてしまう……。
カバー袖の内容紹介だと
孤島もの、ないし
クローズド・サークルもののような
印象を受けますが
アガサ・クリスティーや
綾辻行人の作品のような
外界から閉ざされた孤島で起きる殺人
というわけではありません。
台風一過後、警察が到着し
捜査が行なわれます。
そして犯人不明のままゼミ生たちは
地元に戻ります。
景太は真相を探ろうとし
一方で警察による捜査も描かれます。
とにかくゼミ生がみんなイヤな奴で
こんなにイヤな奴ばかりで
人には言えない秘密を抱えた
人間ばかりが集まったゼミも
珍しいのではないかしら(苦笑)
彼等の中には、殺人事件を通して
精神的に壊れる者も出てきます。
「好青年」の立ち位置にいるはずの景太自身
トラウマとなるような秘密を抱えていて
それが最後の最後における
イヤ~な結末につながっていきます。
それもあって
「直球の〈犯人当て小説〉」
(カバー裏の作者紹介文からの引用)
という感じがしないのですね。
それにこの犯人、推理すれば当たる
というようなものかしらん。
ストーカーの正体はそれなりに意外でしたが
それは推理して当てられるものとは思えないし
ストーカーの正体を当てればそれでいい
というプロットでも、ないんですよね。
捜査を担当する東京の刑事は
男女のコンビですが
その女性刑事の方が
思いつきでペラペラ推理を述べる。
それがいかにも思いつきという感じで
(それもイヤな感じに寄与しているかもw)
捜査のとっかかりとしては
いいのかもしれませんが
論理を駆使する推理の面白さは
あまり感じられませんし。
だから出来が悪いというのではなく
「犯人当て小説」として読ませるのは
無理があるだろうと思うわけでして。
どんでん返しのあるイヤミスが
それこそ、イヤではない人なら
読んでみてもいいかもしれません。
自分的には
陽菜の性格を始めとして
ゼミ生たちのイヤさが
図式的すぎる気はしました。
最後の最後に限っては
図式にとどまらない
ほんとにイヤ~な感じでしたけど
人によっては
インパクトがあると
感じることもあるようです。
いずれにせよ
「イヤ」かどうかというのは
読み手に左右されるものでしょうけど。
「イヤミスの女王」という言い回しのように
ほとんどの人がイヤだと思うという
そういう評言が流行るのも
変な時代だなあという気がするのは
自分だけでしょうか。
「イヤミス」という言葉が
使われるようになりました。
「イヤミス」というのは
「ダ・ヴィンチ電子ナビ」の記事
(「イヤミス 意味」でググったら
トップに出てきました【苦笑】)
によれば
「『後味が悪い』『イヤな気分になる』
ミステリー作品を指す言葉」
だそうですが
さしずめ田南透(たみな・とおる)の本書なんかも
題名とは裏腹の「イヤミス」と
いえるかもしれません。

(東京創元社、2012年1月30日発行)
九州の大学に通う小杉景太は
同じゼミの石元陽菜に
密かに想いを寄せていましたが
ある日、彼女に頼まれて
医学部のイケメン学生に
プレゼントの橋渡しをする羽目になります。
石元陽菜は、愛らしい外見で
ゼミの男子学生にも人気がある存在でしたが
本性は、男を手玉に取り
いい男を見つけて社会的地位の安定を望む
専業主婦的上昇志向の強い俗物。
小杉景太はその本性に気づかず
陽菜が別の男を好きなことに気づいて
自らの思いを告白せず
陽菜を傷つけないようにしようと心がける
いわゆる好青年の役回り。
その陽菜を付け狙うストーカーがいて
どうやら景太や陽菜と同じゼミの学生らしい。
そのストーカーが陽菜の本性を知り
彼女に殺意を抱き
ゼミの調査旅行中に殺害する計画を立てます。
そしてゼミの調査旅行先である
小笠原諸島の一小島に台風が通過した夜
ついに陽菜と、そしてもう一人の人物が
殺されてしまう……。
カバー袖の内容紹介だと
孤島もの、ないし
クローズド・サークルもののような
印象を受けますが
アガサ・クリスティーや
綾辻行人の作品のような
外界から閉ざされた孤島で起きる殺人
というわけではありません。
台風一過後、警察が到着し
捜査が行なわれます。
そして犯人不明のままゼミ生たちは
地元に戻ります。
景太は真相を探ろうとし
一方で警察による捜査も描かれます。
とにかくゼミ生がみんなイヤな奴で
こんなにイヤな奴ばかりで
人には言えない秘密を抱えた
人間ばかりが集まったゼミも
珍しいのではないかしら(苦笑)
彼等の中には、殺人事件を通して
精神的に壊れる者も出てきます。
「好青年」の立ち位置にいるはずの景太自身
トラウマとなるような秘密を抱えていて
それが最後の最後における
イヤ~な結末につながっていきます。
それもあって
「直球の〈犯人当て小説〉」
(カバー裏の作者紹介文からの引用)
という感じがしないのですね。
それにこの犯人、推理すれば当たる
というようなものかしらん。
ストーカーの正体はそれなりに意外でしたが
それは推理して当てられるものとは思えないし
ストーカーの正体を当てればそれでいい
というプロットでも、ないんですよね。
捜査を担当する東京の刑事は
男女のコンビですが
その女性刑事の方が
思いつきでペラペラ推理を述べる。
それがいかにも思いつきという感じで
(それもイヤな感じに寄与しているかもw)
捜査のとっかかりとしては
いいのかもしれませんが
論理を駆使する推理の面白さは
あまり感じられませんし。
だから出来が悪いというのではなく
「犯人当て小説」として読ませるのは
無理があるだろうと思うわけでして。
どんでん返しのあるイヤミスが
それこそ、イヤではない人なら
読んでみてもいいかもしれません。
自分的には
陽菜の性格を始めとして
ゼミ生たちのイヤさが
図式的すぎる気はしました。
最後の最後に限っては
図式にとどまらない
ほんとにイヤ~な感じでしたけど
人によっては
インパクトがあると
感じることもあるようです。
いずれにせよ
「イヤ」かどうかというのは
読み手に左右されるものでしょうけど。
「イヤミスの女王」という言い回しのように
ほとんどの人がイヤだと思うという
そういう評言が流行るのも
変な時代だなあという気がするのは
自分だけでしょうか。