$圏外の日乘-『アイ・コレクター』
(2010/小津薫訳、ハヤカワ・ミステリ、2012.4.15)

ドイツのジェフリー・ディーヴァー
ともいわれることがある(確か、記憶ではw)
セバスチャン・フィツェック、
ポケミス初登場です。

これまでに他社から4冊ほど出てますが
実はこの作者の本を読むのは
初めてだったりします。
(買ってはありましたが……【^^;ゞ)


母親を殺害して子どもを誘拐し
どこかに幽閉して
母親の死体に握らせた
ストップ・ウォッチが示す残り時間までに
子どもを救出できるかどうか
というゲームを行なう連続殺人犯。

救出できなかった子どもは殺され
片目をえぐり取られて発見されます。
そこで付いたコードネームが〈目の収集人〉。
邦題はそこから取られたものでしょう。

その事件を追っていた新聞記者が
犯人の罠にはまり
警察から疑われる身になります。

身を隠そうとする彼のもとを訪れたのが
盲目の物理療法士。
彼女は、仕事先で
〈目の収集人〉に遭遇したと言う。

目が見えないのに
〈目の収集人〉だと分かったのは
彼女が特殊な能力の持ち主だったから
なんですが……

そういう特異なキャラクターを
出してくるのみならず、
オビにも書かれている通り
エピローグから始まっていて
ページも普通の本とは違い
逆行して打たれているという、
とにかくケレン味あふれる作品です。


誘拐された子どもを捜す途上で
新聞記者は
ある被害者に遭遇するのですが
その被害者の殺され方は
想像を絶するというか
よくこんなこと思いつくなあ
というくらい
残虐でグロテスク。

ここらへんの残虐さは
逆さになっても真似できない感じ。

さすがフリッツ・ハールマンを生んだ
お国柄だけのことはあります。
(ちょっと偏見入ってます【苦笑】)


ページが逆行するという
趣向に仕組まれた仕掛けは
なるほどという感じでしたが
あざとい、という気がしないでもない。

そんなこんなで
全体的にギスギスしている
という印象が拭えませんし
(エッジが利いていると
 いえなくはないけれども……)
400ページほどの作品ですけど
少々読みにくい。

どんでん返しの連打
というところを除けば
ディーヴァーとはかなり違う
という感じです。


だから、万人にお勧め
というわけにはいかないのですが
活字でなら、ちょっとくらい
残虐でも陰惨でも大丈夫、
普通とは違う変わった小説が読みたい、
結末で驚かされたい、という人になら
お勧めでしょうかね。


ただし、
盲目の女性物理療法士のキャラクターは
なかなか良かったです。

執筆前にリサーチしたら
盲人に対する偏見にとらわれないでくれ
という要請が沢山あったようで
(作者あとがきに詳しく紹介されています)
その要請を踏まえて書かれているので
社会的弱者というだけに留まらない魅力が
出ているのだと思います。

そこは、読みどころかもしれません。