
(アップリンク ULD-105、2003.3.26)
元題は『夢野久作の少女地獄』といい、
日活の配給で1977年の8月に公開されました。
いわゆる日活ロマンポルノの1本です。
監督は小沼勝。脚本は、いどあきお。
上に書いたように
公開時のタイトル(そしてビデオ版のタイトル)は
『夢野久作の少女地獄』ですが、
原作の『少女地獄』(1936)自体は
「何んでも無い」「殺人リレー」「火星の女」
の三短編からなっており、
映画の原作は、DVD版のタイトル通り
「火星の女」のみです。
九州の女子校を舞台に、
クリスチャンである校長の
上辺とは違う乱倫な生活を
校長に犯された女生徒が暴く、という
ストーリーだけ書くと
いかにもロマンポルノな内容ですが、
原作小説の方は
女生徒の手記という体裁をとっているので
実に軽快な、悲壮な中にもユーモアを感じさせ
それがペーソスをも醸し出している秀作です。
単なるドロドロな話と見るのは皮相的なのでして
文体の力というものを感じさせる小説になってます。
原作は、女学校の古い納屋から
黒こげ死体が発見され、
その後のスキャンダラスな騒動を報じる
新聞記事がまず掲げられ、
その裏の事情が女生徒の手記で明かされる
という構成になっています。
ところが映画の方は
最初から女生徒の同性愛的関係がメインとなり
黒こげ死体が発見されるのは映画の途中ですし、
しかも原作と違う処理が施されています。
当時、原作を読んでから観た人は
びっくりしたかもしれません。
今回、映像の方を先に観て
こんな話だったっけ?! と思い
原作の方を読み返してみたら、
黒こげ死体の真相を除き
比較的忠実にストーリーを拾われていて
ちょっとびっくりしました。
後半の殿宮アイ子による復讐は
まるで怪談映画のような展開で
さすがにこれは原作にないだろう
と思った描写が、原作にもあり、驚きました。
原作にない描写も、もちろんあります。
だいたい、原作では
校長に復讐する主体は殿宮アイ子ではなく、
終始、甘川歌江ですし。
あと、これはしょうがないけれども、
原作にあった軽みが映画にはなく
それこそドロドロした
アクドい話になっているのが
残念といえば残念。
こちらもカルト映画として有名ですが
観たのは今回が初めてです。
今回のDVDは
テレビの画面サイズにシネスコを映し出す
いわゆるレターボックス
(4:3 レターボックス)になってますので
パソコンで観ると画像が小さい……。
ワイド画面テレビで観ると、また違うのかなあ。
それにフィルムの状態もあまり良くありません。
内容も内容ですが、それは措くとしても
DVDという商品としては、
あまりお勧めできない感じで。
どうしても観てみたい、という人は
もし機会があれば
劇場で観るようお勧めしたいところです。
とはいえ、これもやっぱり
良い子は観ちゃダメ!(藁