
(紀伊國屋書店 KKDS-363、2007.2.24)
ちょっと必要があって、
以前、DVDが出たとき買っておいた
フリッツ・ラング監督の
映画『M』(1931)を観ました。
これを買っておいたのは
犯罪映画として有名だからですが
観るのは今回が初めてです。
シュリンク(外装ビニール)に
タスキ(オビ)代わりの
シールが貼ってあり↓

こういうのって、はがすのを
ためらっちゃうタチなので(^^ゞ
なかなか観ようという気に
なれなかったのですが
今回、あるシーンについて
どうしても確認しとかなきゃ
ならなかったもので。
買っといて良かったです。
封入された解説リーフレットは
44ページもあって読み応え充分。
さすが紀伊國屋書店のDVDだけのことはあります。
資料的にも優れているし
勉強になりました。
映画自体は、ドイツの有名な犯罪者
ペーター・キュルテンをモデルとしたもので、
(日本の古い探偵小説のファンなら
牧逸馬の『世界怪奇実話』の一編
「街を陰る死翼」で読み、
ご存知の方もいるかと)
少女連続殺人事件をベースに
警察の捜査と、
連続殺人犯のために厳戒態勢となり
自分たちの仕事がやりにくくなった
犯罪者集団の捜査?と
ヒステリックになっている市民の反応と
追いつめられるシリアル・キラーを描いた話です。
タイトルの『M』はもちろん
殺人者を意味するドイツ語の
頭文字からきていますが、
なるほどこういう使い方をしますか
というようなシーンがあり、
(ジャケ写にその片鱗が写っています)
そこは面白かったです。
それと、9人目の被害者の少女が殺される場面
といっても直接的な描写はないのですが、
草むらから転がり出す手毬と
電線に絡まりながら飛んでいく風船で
暗示しているシーンは、感銘を受けました。
あと、殺人者が吹く口笛は
グリークの『ペールギュント』が使われていて、
これは小学校か中学校の
音楽の授業で聴いた覚えがあることもあり
印象的でした。
主演というか
シリアル・キラーを演じたのは
ペーター・ローレで、
『マルタの鷹』(1941)や
『カサブランカ』(1943)にも出ている
ギョロ目が印象的な役者ですが、
何と、口笛が吹けなかったそうです(藁
解説リーフレットには
監督が代わりに吹いたとありますけど、
特典映像として収められている
当時、この映画の編集に関わった
パウル・ファルケンベルクの証言では
脚本のテア・フォン・ハルボウが吹いた
ということになってます(苦笑)
当時はトーキー映画の黎明期で
この作品もフリッツ・ラング初の
音声映画だったそうですが、
無声映画的なところも残っています。
特典映像に一部収録されているフランス語版だと
違法酒場を警察が襲撃する場面では
警察の車が酒場のある街路に乗りつける時の
自動車の効果音とかが入っているのですが、
ドイツ語版は全くの無音です。
今の感覚だと
フランス語版の方が自然な気がしますが、
効果としてはドイツ語版の方が
何だか面白い感じもします。
日本に公開されたのはドイツ語版ですが
検閲を受けて90分程になっているらしい。
今回のDVDに収録されているのは
2001年に復元された110分版で
(オリジナルは117分だそうです)
さすがに、ちょっと長過ぎるような感じでした。
また、最後の最後で
なんかモヤモヤしたものが残るので、
(これから観る人がいるかもしれないので
伏せておきますが)
誰にもおススメのすごい傑作とは
いえない気もします。
もう一回観ると、印象が変わるかな?
古い映画を観る場合、
どうしてもお勉強という感じに
なってしまいますが、
でもやっぱり
観といて良かったと思います。