$圏外の日乘-『刑事コロンボ』Vol.22
(ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
 USJD-01033、2002)

ついに、以前買っておいた
DVD完全版シリーズの最終巻まで来ました。

トールボックス2枚組かと思ってたら、
3話収録の Vol.22 には
ディスクが2枚入ってました。

おやおや(苦笑)

その1枚目の最初が第43話の
「秒読みの殺人」です。


これも観直すのは久しぶりなのですが
エレベーターの中で
凶器を回収しようと焦るシーンは
鮮明に覚えてました。

あと、ラストの
ロケ先の調整室での
モニターのシークエンス・シーンも
よく覚えてましたが、
別の作品と勘違いしてたという(^^;ゞ

あのシーン、実にいいです。


コロンボが最初に
状況から容疑者を絞り込んだ時に犯人と
「面白いでしょう? こんなちょっとしたことでも
 気をつけるとひっかかりになるんですよ。
 まるでかすかな声が耳元で
 ホシの名前を 教えたがってる感じでしてね」
「それをじっとお聞きになるわけね」
「まさにその通りですよ。
 それしか手がないんですから。
 よく見、よく聞く。それだけです」
というやりとりをするシーンは、
すっかり忘れていましたが、
謎解きミステリの精神そのものを
聞かされているようでした。


今回の話は、たとえば
『刑事コロンボ完全事件ファイル』

$圏外の日乘-『刑事コロンボ 完全事件ファイル』
(宝島社 別冊宝島、2004.3.3)

とかでは、
あまりよい評価を得られてません。

確かにあんなトリックだと、
トリックがバレた時点で犯人まで一直線なわけで、
コロンボにはその手の設定が多いにしても、
犯行計画としては今イチといわざるをえない。

ただ、観直すと、テレビ業界における
いわゆるガラスの天井的な空気が
よく感じられて、
ある種の感銘を受けました。

あるPAが、コロンボの話に応じて、
テレビ業界でいちばん始末に負えないのは、
調整装置の技術とかを全部分かってる女性だ
と言うシーンは、
NHKで放送された時には
カットされてたシーンのようですが、
男性関係者の本音(?)が感じられて
すこぶる面白かったです。

そのあとの、コロンボが
調整室のモニターに
テスト・パターンを映し出して遊ぶシーンは
無駄といえば無駄かも(苦笑)


下層からのし上がって
アシスタント・ディレクターにまでなって
野心満々だった女性が、
親友の女性ダンサーのふがいなさでポカやって、
馘を言い渡されて、
そのすぐあとにコロンボに追い詰められる
というシークエンスは、
観ていて切なくなりました。

ダメな親友を番組で抜擢しようとした
判断力の悪さは、
責められるべきかもしれないけど、
女はそうやって情に流されるからダメなんだ
というイデオロギーが透けて見える作りが
何ともはやな感じで、
ミステリの出来とは別のところで
すごいなあと思った次第です。

そういう犯人を指して、
しょせん二流の人物にしか見えない
とか書いちゃう『完全事件ファイル』の解説は
どうかなあと思います。

だって、しょせん女、しょせん二流、
と見えるように作られてるんだもの(苦笑)


要するにこれは、
作り手が意識しているかどうかは知りませんが、
ミソジニー misogyny(女嫌い)全開の
映像作品だったわけですね。

びっくりでした。