$圏外の日乘-『ナミヤ雑貨店の奇蹟』
(角川書店、2012年3月30日発行)

東野圭吾の出来たてほやほやの新刊です。

正確には、雑誌『小説 野性時代』の
2011年4月号から12月号まで、
隔月で連載されたものを
まとめたものですが、第四章に
「昨年の震災以来、
 日本中のすべての場所で
 節電が強いられている」
という記述がありますから、
連載分をそのまままとめただけではなく
それなりに手が入れられていると思われます。

たぶん本が出て次の日ぐらいに
奈央ちゃんがブログにアップしているのを見て
買ってきて、たまたま時間があったので
読み終えた次第です。

まっさらな状態で読みたい人は、
以下の感想は読まない方が無難だと
いちおうお断りしておきます。




最初は、お悩み相談ものの
ミステリかと思ってたんですが、
(前に紹介した蒼井上鷹の小説みたいなね)
第一章を読んでみると
これがなんとSFというか
ファンタジーでした。

過去と現在がある空間を通してつながるのですが、
その空間を通して悩み相談のやりとりがなされ、
何らかの結末を迎えるという連作ですが、
最後までくると
全体がひとつの長編としても読める
というタイプの作品ですね。

基本的に悪人は一人も出てこないので
読後感も悪くなく、
また、相談と回答というやりとりの
同じパターンが続くわけではなく、
各章とも展開に工夫をこらしており、
さすがは今をときめく人気作家の職人仕事として
上々の部類ではないかと思います。

ハートフルでいい話だとは思いますが、
個人的には、もう少し歯ごたえのある話の方が
好みかな(^^ゞ


読み終わったあと、どこか懐かしい、
ちょうど、かつてNHKで放送されていた
少年ドラマ・シリーズを彷彿させるような
味わいが感じられたことでした。

今、流行っている
日本の近過去に対する
ノスタルジックな想いというのが
よく出ているとでもいいましょうか。

もともと東野作品には多かれ少なかれ
近過去的なものをベースとする傾向が
あった気がしますけどね。


ちなみに第二章は、ミュージシャン
今でいうアーティストを目指しているけれど
芽が出ない青年の話ですが、
このオチは……ちょっと意地悪かも( ̄▽ ̄)

インディーズで演奏活動を続けている人に
感想を聞いてみたくなりました。