
(キングレコード KIBF-990、2012.3.14)
1977年、日本ATG+タツミキカク提携作品
監督:曽根中生
脚本:田中陽造、大和屋竺、曽根中生、荒井晴彦
小学校・高学年か中学生の頃、
この映画と、やっぱりATG
(アート・シアター・ギルド)の
『本陣殺人事件』(1975、監督・高林陽一)と
市川崑監督の『犬神家の一族』(1976)、
『悪魔の手毬唄』(1977)の
4本立てオールナイト(だったと思う)上映に、
父親に連れられてというか、
父親に付き合ってもらって(藁
行った記憶があります。
当時の田舎ですから
小学生ではもちろん、中学生でも
一人でオールナイトには
行けない時代でした(しみじみ)
で、この時の上映作品の内、
『本陣』『犬神家』『手毬唄』は
すべてDVDになっているのに、
『不連続』だけソフト化されず、
長い間、隔靴掻痒の感を抱いておりましたが
とうとう今年になって
初ソフト化されました\(^_^)/
上記4本の上映作は、すべて傑作ですが、
中でも坂口安吾原作の本作品は
原作に忠実に作られた作品として
記憶に残っていました。
同じATGの『本陣殺人事件』が
舞台を現代に移して
ジーパン履いたヒッピー姿の金田一耕助
(演ずるは中尾彬)だったのに対して、
『不連続』は原作と同じ終戦後で撮られていて、
薪バスまで登場します。
今回、DVDで観直す前に
原作を読み直してみましたが、
これほど原作に忠実に作られたミステリ映画は
日本はもとより、海外でも珍しい、かと。
あの『犬神家』ですら、時代背景はともかく
原作にないシーンがあり、
原作にあるシーンをカットしているのに対し、
『不連続』』は、後半駆け足気味で
原作読んでないと分からないだろうと思うくらい、
原作まんまの映像でした。
もちろん『不連続』でも、
原作から省略された要素はあり、
単に「まんま」なわけでもないのですが、
原作を見事に整理していることが
原作を読んでから観ると、よく分かります。
映画としてのオリジナルは
アバン・タイトルでの
モノクロ・シーンくらいかも
と思わせるくらい見事な編集でした。
あの、独特のテーマソングをバックに
役者が歩いていくシーンで
タイトルがテロップで入るカットも
覚えていましたが、
てっきり田村高廣かと思ってたら
瑳川哲朗でした(苦笑)
そう、『ウルトラマンA』(1972~73)で
TAC の隊長を演じた、あの方です。
(人によっては『大江戸捜査網』[70~84]の
井坂十蔵かもw)
瑳川哲朗演じる詩人・歌川一馬の友人で
作家の矢代寸平を演じたのが田村高廣。
その田村は、『本陣』で一柳賢蔵を演じ、
オールナイトで続けて観たときは
違和感を覚えた、のかどうか、
今となっては覚えていませんが(苦笑)
印象には残ってます。
そして歌川一馬夫人あやかを演じた
夏純子は、今観ても美しい。
あやか夫人の元旦那で画家の
ピカ一こと土居光一を演じた内田裕也は
当時も違和感がありましたが、
今回観ても違和感がありました(苦笑)
「ピカ一(ぴかいち)」という原作の表記は、
当時から、あまり好きではなかったのですが……。
そして、今観ると
歌川多門の愛人・下枝を演じた
泉じゅんが、いい感じ。
名探偵・巨勢博士を演じた小坂一也は
まさに原作のイメージ通り、どんぴしゃり。
そして、今回観るまで
覚えてなかったのですが、
矢代の妻・京子を演じていたのが
桜井浩子だったんですねー。
これはびっくり。
とにかく、これは
日本のクラシック・ミステリ・ファン
必見の映画だと思います。
(唯一の難点というか、物足りないのは
エンディングのそっけなさ。
これは高林版、そして市川版の横溝映画に
一歩も二歩も譲っている感じ)
オープニング・テロップにおける
原作クレジットは角川文庫版になってますが、
かつての角川文庫版は映画スチールの表紙でした。
自分もそれで読みましたが、
この表紙がまあ、ひどいのなんの(藁

(角川文庫、1974.6.10/77.1.20、12刷)
よく買ったなー、自分(苦笑)
海老塚医師が諸井看護婦を
拷問にかけるシーンです。
こういう場面はありますが、
こういうカットは本編にありません。
のちに角川文庫でリバイバル復刊した際も
この表紙のまんまでしたが、
これじゃあ、あまりにも
あまりにもですよね(苦笑)
もともとは下のように、
シブい装幀のカバーでした。

(1976.1.30、8刷)
今となっては映画スチール・カバーも
資料として貴重ですが
ちょっとどうかと思うので
先日、旧ヴァージョンを古本屋で見つけ、
初版じゃなかったけど
買い直した次第です。
なお、DVDには公開当時のプレスシートの他、
当時、雑誌『アートシアター』に掲載された解説
(犯人ばらしてあります【苦笑】)の再録と、
今回書き下ろされた、別人による新稿を含む
16ページの解説書も付いてます。
この手のDVDで、これだけ資料を付けるのは
たいへん珍しいのでありまして、
それだけでも買って損はないと思う次第です。