久しぶりにNHK-FMのオーディオドラマ
「青春アドベンチャー」を聴きました。

前にちょっと書いた通り
昨日から江戸川乱歩原作の
『魔術師』が始まったからです。

脚色は芳崎洋子。

自分が中学ないし高校時代には
NHKのラジオ・ドラマで
乱歩の『黄金仮面』とかやってたのを
聴いた記憶があります。

その後、『怪人二十面相』も
NHKラジオでやった記憶がありますが、
そのころの明智小五郎は
広川太一郎がやってたはずで
とてもカッコよかったです。

今回の明智役は俳優の篠井(ささい)英介。
この方、当年とって53歳。
失礼ながら、明智にしては
ダンディさの点で今イチ、
ちょっと声が老け気味な印象でした。

広川=明智のイメージが
刷り込まれているせいでしょうが(苦笑)


ちなみに今回、劇中で明智が
「四十も近い無一文」と
一人ごちる台詞がありましたが、
てことは三十代後半という設定かあ。

うーんと思って原作を確認すると
「お前はもう四十に近い中年者ではないか。
 それに妙子さんは由緒正しい大資産家の愛嬢だ。
 お前のような素寒貧の浪人者に、
 どう手が届くものか。」
 (『江戸川乱歩全集6』光文社文庫、2004、p.13)
というモノローグがありました。

原作は1930(昭和5)年のお話で
ラジオ・ドラマもその設定でしたが、
最近のように
男性タレントの年の差結婚が流行りだと
明智もこうは思わなかったかもですね(藁

ちなみに光文社文庫版は
戦前の全集版を底本にしているので
「素寒貧の浪人者」となっていますが
戦後、乱歩が手を入れたバージョンでは
「一文なしの浪人もの」と
修正されていますので、
ラジオドラマの方の台詞も
まんざら間違いではありません。


そういうテキスト違いの絡みでいえば
最初の惨劇時に、監視人が
横笛が鳴っているのを聴く場面がありまして、
ラジオでは和笛の音のように聴こえましたが
(少なくとも自分にはそう聴こえました)
戦前版のテキストでは「横笛」に
「フリュート」とふりがなが振ってあることを
指摘しておきましょう。

乱歩が手を入れたバージョンには
ふりがなはありませんので
和笛の音でも構わないのですが、
個人的にはフルートの音を
使ってほしかったなあと思います。

というのも、『魔術師』のこの趣向が
横溝正史の『悪魔が来りて笛を吹く』に
影響を与えているんではないかと
思うからでして。

それにフルートの方が
モダンじゃないですか(藁
1930年当時、探偵小説というのは
モダンなジャンルだったと
思うのですけどね。


話を今回のラジオ・ドラマに戻せば
全体的に説明的なト書きが多すぎる印象。

語り手は冷泉公裕。
これも今イチでしたが、Wiki で調べたら、
『ウルトラセブン』のペロリンガ星人の回に出た
フクシン君でした。びっくり。


まあ、全10回放送ですから
これから印象を新たにしてくれることを
期待しましょう。