$圏外の日乘-『消失グラデーション』
(角川書店、2011.9.30)

第31回横溝正史ミステリ大賞の
大賞受賞作です。

読み始めて最初のうちは
自意識過剰、でも小心者男子
(エヴァの碇シンジとか、
 『ギルティクラウン』の
 桜満集みたいなやつねw)
を語り手(視点人物)とする
青春ミステリかと思って
読み進めていたのですが、
最後にどんでん返し、食らいました~。

ある瞬間、また、このネタか~い、と思いつつ
見事に騙されてしまいました(苦笑)

「また、このネタ」を
二つ(読みようによっては三つ)
重ねたのも、すごいところでして。

と、詳しく書かなくても
ヘタしたらネタバレしそうな話なんで
詳しく書けませんが
とにかく、やられました~(^^ゞ


学校全体が密室状況だったり
屋上が密室状況だったり、
そういう状況からの
人間消失をテーマとした
本格ミステリ・テイストの物語です。

学園もののアニメやラノベを思わせる
キャラクターが登場し、
いずれ劣らぬ切れもの優れもの女子が
た~くさん登場する話なのでして、
それなりに楽しく読んでいたのですが
そこがそれ、罠でして(苦笑)


ここでちょっとダメ出し(藁

学園の外側の住人である
久住祐人という便利なキャラがいなければ
(冒頭から出てくるので秘しませんが)
成立しないようなトリックなのは
やや気になりました。

あと、ある人物がある行動をするにあたり、
その人物が自分の家族のことを
まったく顧みないように読めてしまうのも
やや気になりました。

まあ、それを除けば、
思春期の甘ずっぱさ全開の、
その思春期テイストが気にならないなら、
実にいい感じの青春ミステリでした。


同じく学園を舞台とした
『眼鏡屋は消えた』は、
語り手の造形に
オヤジ・テイストが感じられたものですが、
(個人の印象ですw)
『消失グラデーション』は
まだ若者らしさがあるというか、
若者の持つ繊細さをよく捉えて
描いているように思いました。

もちろん、それもある意味
図式通りなのかもしれませんし、
読む人によっては
語り手の自意識過剰ぶりが
鼻につくかもしれません。

ただ、
どんでん返しを仕掛けようとする姿勢に
設定や語り口に溺れていない
作者の計算や相対化の視点があると思われ、
学園ものとして比べるなら、
個人的には長沢作品の方が
数段上だと思うし、好みです。

素直におススメできる作品かな。